ゴンザレスとコルラン①
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵様だとか、転生者とか、生まれながらの救世主だとか、魔王を指先一つで討伐したとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
それが、世界最強ランクNo.0
どうも、アレスです。
王女を逃す口実で、戦場から逃げました。
今回はメリッサの了解済みだぞ!
だが、メリッサは帝国兵に指示や連絡のやり取りをしないといけないので、今回はついて来ていない。
代わりに護衛として、No.9ツバメがついて来ている。
S級美女との3人旅である。
、、、手を出しそうだ。
これ、メリッサ絶対こうなること、気付いてた。
なんかため息ついて、ホイホイですしねぇ、仕方ないか、とか言ってた。
手を出しそうだけど、手を出さないよ!?
我慢するよ!
我慢出来ないよ!?
S級美女2人よ?
しかもカモーンな感じで来られて。
片方は内乱真っ只中の逃亡王女様です。
手を出したら、国ゲット!?
わー、いっらなーい!!
、、、とりあえずカストロ公爵領に押し付けよう。
、、、違うだろ?
何をナチュラルにカストロ公爵領に、行こうとしているんだ?
俺は誰だ?
No.0?
カストロ公爵?
教祖?
全て否!
俺は!俺はーーー!!
ただの詐欺師だーーーーーーーー!!!
あっぶねぇ!洗脳されるところだった。
邪神?
知らんがな、そんなの。
丁度都合よく、ここに居るのは、世間知らず2人。
売るも良し、騙すも良し、撒くも良しの2人だ。
、、、売るのは無いな。
世界ランクナンバーズ相手に無謀過ぎる。
逃げ切るのも難しいか?
いやいや今回は足手まといも、、、ツバメは俺を優先しそうだからやめておこう。
ならば、選択肢は騙す一択か。
では早速。
「ツバメよ。目的変更だ。コルランに入る。」
「はい、わっかりました〜。」
馬車の手綱を引き、ツバメはすぐに馬車の行き先を変えた。
、、、、、、あれ?
あ、あれ?何も聞かないの?
「ツバメ、コルランに行くよ?」
「はい。あ、道違いますか?」
いや、うん、合ってるよ。
「いいの?」
「はい?いいんじゃないんですか?」
ツバメは首を傾げる。
この娘、会った時からそういえば、純粋な娘だったわ。
「それにメリッサさんからも、アレスさんが行く場所について行ってくれと言われてますから!」
あ、そうなんだ。
俺はメリッサの手のひらの上でした。
流石S級美女、すげぇや。
「私、コルランって初めてです!」
目をキラキラして王女様が言う。
そういえば、この王女様どうしよう?
何処かに捨てられないかなぁ?
コルランに行ってから考えよう。
そうして、俺は色々考えるのをやめた。
辿り着いたコルラン首都は、何やらオドロオドロシイ雰囲気に包まれていた。
外から見たら、なんともなかったのに、街の中に入ると突然、雰囲気が変わった。
バグ博士の研究所兼屋敷は東の外れにある。
襲いくる目が虚ろになった人々を、ツバメがぶっ飛ばしながら、研究所に辿り着いた。
研究所の入り口前に机やら椅子やらタンスやらが積まれ、入り口を封鎖している。
「こんちは〜。バグ博士居ますか〜。」
「ア、アレスさん!?カストロ公爵様がどうしてこんなところに!?
正気ですか!?
正気じゃなかったら、帰って下さい!」
奥からいつものモッサいバージョンのパーミットちゃんが、隙間から顔を覗かせた。
正気ではないなら、どうやって帰るのだろう?
「多分、正気。」
「本当ですね!信じますよ!信じますからね!」
「信じて信じて。」
信じる者はすくわれる、足元を。
信じようと信じまいと関係なく入るけど。
ツバメが建物前のバリケードをどけて、全員中に入る。
そしてツバメがまたバリケードを積む。
中には沢山人が居た。
街の東区の住人だとか。
避難所になっているようだ。
コルラン首都は五つの行政区に分かれており、東西南北、そして世界の叡智の塔のある中央だ。
話を聞くとこうだ。
邪神の件から、しばらくは何事もなかったが、ある日突然、街がオドロオドロシイ雰囲気に包まれて、虚ろな目をした人々が襲いかかって来た。
虚ろな人に噛まれた人は、さらに虚ろな人になってしまう。
さらに街に入ることは出来るが、出る事は出来ない。
「ハムウェイは?」
No.1が居たら、こんなことになってないんじゃない?
「それが、、、。」
パーミットちゃんが言うことには、こんな事態になる前の日に、いつものように研究所に来ていたが、パーミットちゃんが見合いする相手と結婚することを告げると、突然、虚ろな目をして去って行った。
そして、次の日、街はこうなった、と。
お前が原因やないかい。
「えーっ!?だって、お見合い予定のその人は、大らかで結婚後も研究を続けても良いと言ってるらしくて、それなら結婚しちゃいますよね!?」
「らしいってもしかして?」
「はい、会ったことありません。」
パーミットちゃんは、これからお見合いなんですから、当然ですよ?と可愛く首を傾げる。
「ふざけんなー!責任とれー!俺の悠々自適な逃亡生活を返せー!」
コルランでエストリアの内乱が、終わるまでのんびりしようと思ったのに!
「何がですかー!私の研究生活を優先するのは、当然じゃないですかー!」
研究どころじゃなくなってるじゃねーか!!
「どうすんだよ!
No.1って世界最強だぞ!
抑えられるやつなんか、誰も居ないじゃないか!」
そこに可愛い女性の声が響く。
「足止めだけなら、なんとかなるわよ?」
俺たちの研究室の奥のソファーで、誰かが寝転んでいた。
目深に被ったフードを、布団代わりに丸まっていたようだ。
俺のS級レーダーが反応する。
丸まった人物は俺たち、、、俺の後ろで不思議そうにする王女様を見つつ、赤く色っぽい口を開く。
「あら〜、やっぱりホイホイねえ?私ももうすぐ、かな?」
艶やかに笑うS級美女カレン・シュトナイダー、、、帝国皇女様。
なんで居るの?
「私も閉じ込められちゃってぇ、てへ♡」
てへ♡、じゃねぇぇだろぉぉおおお!!
他国の帝国皇女様が閉じ込められるって、どんな事態だよ!!!