ゴンザレスとエストリア⑤
ケーリー侯爵から聞けるだけ聞いて、またお部屋。
食事はお部屋にまで持ってきてもらい、3人で作戦会議。
ケーリー侯爵と打ち合わせの間で、ベッドメイキングは完璧。
この屋敷の使用人たちは優秀なようだ。
「今すぐ逃げれば良くないか!?」
「どう考えても、カストロ公爵領が狙われてますので。
逆によくケーリー侯爵側が、宰相側に迎合しなかったものです。」
メリッサが首を傾げるが、それには逆に俺がすぐ答える。
「そりゃケーリー侯爵はしないだろ?ていうか出来ないだろ?」
エルフ女が首を傾げる。
「何でよ?」
「一言で言えば、嫌いだからだろ?
宰相もケーリー侯爵もお互いが。」
「はぁ!?」
「いや、そんなもんだろ?
戦局的にも宰相側が有利そうだし、ケーリー侯爵も宰相側に入ったところで、勇者召喚の罪とか押し付けられるのが分かりきっているから、混ざりたくても混ざれない。
だから、カストロ公爵を確実に引き込みたい訳だし。
あわよくば、帝国からの援軍も期待しているだろうしな。」
「流石はご主人様です。その通りなのでしょうね。」
メリッサもなるほどと同意する。
エルフ女は最近、ずっと俺にジト目だが、またしてもジト目で言ってくる。
「ていうか、アンタよく分かってんじゃん。なら、逃げるのが無理なことも気付いてるでしょ?」
いや、だって、、、。
「俺一人なら別に逃げられるし、、、。」
「クズが!アンタがカストロ公爵なんだから、アンタが1番逃げちゃダメな人でしょ!」
えー?
「とりあえず、ケーリー侯爵にいくつか頼み事したら、カストロ公爵領行って、持つ物持って逃げるように教えてあげるしかないかな。」
「逃げるの前提なんだ、、、?」
そりゃ、エストリア国なんてどうでも良いしな。
もっと言えば、カストロ公爵領もどうでも良い。
「、、、こうなれば仕方ない、か。
メリッサ、帝国諜報部動かして。
やってもらいたい事がある。」
俺は諦め半分でメリッサに頼む。
ソーニャファンクラブのメンバー優秀だしね、動いてもらえれば、宰相派の牽制は出来る。
「御意。」
メリッサは丁寧に礼をする。
「、、、アンタ。何する気?」
「ん?まあ、嫌がらせ、かなぁ?
俺は戦争とか怠くてしたくないから、そうなる前に自滅してくれると1番有難い。」
難しいだろうなぁ。
上手くいくかどうか、、、。
まあ、色々旅した時に聞いたアレやこれやあるし、なんとかなるかな?
あれ?これ偉い人の仕事じゃね?
メリッサも何も言わずに従うし、危うく騙されるところだった。
詐欺注意!
い、今更かなぁ、、、?ちょっと身震い。
、、、ところで、自分で言っておいてなんだけど、俺って帝国諜報部動かす権限あるの?
怖いから聞けなかった。
ケーリー侯爵に何故か御武運を!と見送られながら、カストロ公爵領へ出発。
御武運も何も、どうやって軍を集めるかなんて知らないよ?
あのオッサン、どうする気なんだ?
上質な酒を飲みながら、ツマミのスモークチキン。
エルフ女と無意味に乾杯。
豪遊じゃー!
でも、これって貴族からしたら、贅沢なんだろうか?
まあ、俺からしたら十分贅沢だからいいか。
そんな感じで、馬車が進む事6日ほど。
休憩の際におトイレに行こうとしたら、メリッサが付いてこようとするのを制ししながら、なんとか森の中でおトイレ。
森の奥で、あるものを見たので、クルッと馬車に戻ろうと、、、。
「アンタ、何か見たわね?」
い、いつの間に背後にエルフ女!
きゃー!のぞきよ〜!!
逃げなきゃ!
ガシッと首根っこを掴まれる。
「何を見たのかしら?」
言いながら、俺ごと目標物に近づく。
「は、離せ!俺は見てない!王女とか何も見てないぞ!!」
エルフ女は俺の涙の訴えを無視して、俺を引きづりながら、奥へ入り。
「あ!!」
そこに居たのは、草むらに隠れるように、気絶しているぼろぼろの白いドレス姿の美少女。
柔らかそうな金髪で、片手だけ白い手袋。
薄汚れているのに、地肌は白く貴族のお嬢様なのがよく分かる。
ううう、、、絶対厄介ごとだ。
だから無視して行こうと思ったのに、、、。
「うう〜ん、、、。」
ギャー!タイミング良く起きやがった!!
寝てろ!俺が逃げ切るまで、寝てろ!
「、、、あ、貴方がたは?」
綺麗なソプラノに、吸い込まれそうな鮮やかな青い目。
S級美少女である。
そして、、、王族の紋章付きの腕輪。
「、、、アンタ。また王女拾ったわね?」
拾ったのはエルフ女、お前だぁああ!!!