ゴンザレスとエストリア④
国を救ってくれってなんぞや!?
いつから国は詐欺師が、救うようになったのでしょう?
足元すくわれるよ?
「はあ?」
俺は敢えて、そう返事をすると、ケーリー侯爵は皮肉げに笑う。
「そうだろうな。貴殿にしてみれば、今更何を、と言ったところか。」
ケーリーは立ち上がり、部屋を無駄に歩き出す。
のそりとしたその動きは、可愛くないパンダの動きである。
「この事態を引き起こしたのは、かつてレイド皇国を滅ぼし、禁忌なる勇者召喚を起こしたエストリア国。
自業自得だと言いたいのだろう?」
俺は首を横に振る。
全く違います。
「、、、ふっ、人同士で争っている場合では無い、貴殿が帝国に対して送ったメッセージは、私にも届いたよ、、、。
権力に溺れ、贅沢に溺れたこの私にさえ。」
皇帝陛下もそうだったが、誰から交信を受けているのでしょう?
ツツーツー。
ワレワレハ詐欺師ダ。
エルフ女に目で訴える。
『このオッサン、何言ってんの?』
そうすると隣のメリッサに、太ももをつねられる。
可愛く頬まで膨らませるおまけ付き。
うん、超可愛い。
オッサン後ろ向いてて、こちらに気付かず。
だから、メリッサに目で聞いてみる。
『このオッサン何言ってるの?』
メリッサはパチンとウィンク。
うん、可愛いね?
伝わってないかな?
太ももに文字書かれた。
くすぐったい!
(わかってますよ?)
メリッサはオッサンを見て、首を一回横に振り、俺の両手を手に取り、口パクで。
『ファイト!』
その後、ガッツポーズで応援付き。
可愛いけど、要するにエストリア国の総司令官になれと。
なれるかーーー!!!
今度はエルフ女が俺の足をバシバシと叩く。
いてーよ。
オッサンは気付かない。
『じゃあ、どうすんのよ?』
俺は一瞬考え、すぐに答えを出す。
『逃げよう。』
立ち上がる。
そのタイミングで、オッサン振り向く。
「やはり、立ち上がってくれますか。
それでこそカストロ公爵、、、いや!世界最強No.0だ。」
ガシッと握手されました。
ケーリー侯爵との面談を終え、本日の宿として与えられた部屋で、俺は頭を抱える。
「どうせこうなると思ってましたので。
ですから、ファイト!とお伝えしました。」
クールな雰囲気なメリッサがまたガッツポーズ。
うん、ガッツポーズの時、可愛かったから、もうそれは良いよ。
「アタシよく分かんないんだけど、こいつが詐欺師かどうかは別にして、全軍の指揮ってそんな簡単に、任せて良いものなの?」
そうだー!無理だぞー!
俺はぐったりして身体を横になると、メリッサが動いて、膝枕をしてくれる。
あー、なんかとりあえず、俺もう色々ダメだ。
今ならなんでも言うこと聞かされそう。
ほら、見ろ!S級やっぱり恐ろしいぞ!こうやって、何でもしてしまいそうになる。
今なら壺10個ぐらい買うね!
、、、金出すのメリッサだけど。
エルフ女が俺をジト目で見つめる中、メリッサは気にもせず答える。
「、、、通常は有り得ないでしょう。
しかしながら、ご主人様のお気持ちはどうあれ、エストリア国で多数居る将軍や司令官の中で、1番の指揮官が誰かと問われれば、間違いなくご主人様の名前が候補に上がることでしょう。
帝国がその覇道を辞めた理由は、決して伊達ではありません。」
俺の名前が、俺の知らない間に急浮上。
それは別人ですよ?
お名前をもう一度確認して連絡して下さい。
まあ、エストリア国にも名将や猛将もいっぱい居るし、その戦記が本にもなってるぐらいだから、実際に戦いになれば、相手にならんよ?
その内の誰かが、ケーリー侯爵側に付いてれば、さっさとそいつに押し付ける所存だ。
そんな皮算用をして、その日はさっさとベッドでお休みなさい。
「はぁ?」
ちょっと眠たい中、ケーリー侯爵から情報を聞いて俺は愕然とする。
肝心要の有名どころの将軍たちは、誰もケーリー侯爵側に付いていないだと。
誰かー!今なら全軍の指揮官になれますよー!!
泥舟だから、乗りませんよね?
俺も乗らない、乗らないぞ!
乗せるなよ!!
これは結局のところ、怪物宰相グローリーの政治力の力である。
ケーリー侯爵は副宰相になれるかも?というほど勢力を伸ばしてはいたが、それは文官派閥に対して。
反対にグローリー宰相の派閥は、軍部側に偏っていた。
それにしたって、王家に付く軍部側が少なすぎると思ったが、背景にナンバーズ優遇の背景があった。
王家は、その国家の武威として、ナンバーズ、つまり殺されたNo.5とNo.6、更には勇者を優先し、ある種、有能な将軍たちを蔑ろにした。
これまたそうなる背景があった。
かつてレイド皇国との戦いは、王家として行いたいものではなかった。
それを王家はずっと苦々しく思っていた。
しかし、それを軍部が主導し、挙句には、完勝してしまった。
そのため、エストリア国磐石なり、と帝国や周辺国に対し、隙を与えなかった。
それが皮肉な事にレイド皇国を滅ぼして以来、大きな大戦が起こる余地をなくしてしまった。
つまり、軍部の活躍の場を自ら奪ってしまったのだ。
その事は今回のことに、更に悪影響を及ぼした。
王家としては、レイド皇国との戦いの際に蔑ろにされた恨みもあり、軍部にやり返す機会を狙っていた。
それと同時に大戦が無い故に、王家が将軍たち軍部要らなくね?と勘違いしたことも致命的だった。
また、軍部が待ち望んでいたコルラン国との戦いは、始まりと共に、カストロ公爵により、終焉を迎えた。
これにより、軍部と王家の亀裂は更に大きくなった。
そこに今回の邪神の件である。
世界の叡智の塔からの邪神の思念により、彼らの憎悪や欲望が刺激され、遂には事に至ってしまった。
そんな国の一大事を、何故か聞かされる詐欺師ゴンザレス。
俺はとりあえず思った。
逃げて良いよな?
「ダメでしょうね。」
「なんで!?」