帝国とゴンザレス③
恐れ慄く俺。
何故か、詐欺師に頭を下げる皇帝陛下!
果たして、この帝国に未来はあるのか!?
俺はあまりの事態に、ついにメメに尋ねた。
「な、なあ、メメちゃん?」
「なんでしょう?ご主人様。」
そのご主人様呼びも聞き慣れた気がするけど、超S級美女がチンケな詐欺師に、ご主人様呼びをする異常事態も何も解明されていない。
とりあえず、目を逸らすけど。
「な、なんで、皇帝陛下は、頭を下げてらっしゃるのですかね?
見えない誰かいらっしゃるのでしょうか?」
むしろ、見えない誰かが居ると言ってくれ、、、。
「ご主人様に対して謝罪されているかと。」
「なんで!?」
「ご主人様が帝国を『見捨てる』とおっしゃられたので。」
ブンブンと首を横に振る。
言ってない言ってない!
なんでそうなる!!
「アレス様。」
帝国皇女様が俺に呼びかける。
「どういうこと?」
俺は思わず問いかける。
あとあのね?帝国皇女様?
俺、貴女様に様付けされる御身分じゃないのよ?分かって?
何が致命的になるかさっぱり分からないので、迂闊に口には出せない、というか今の状況がさっぱりだ!
誰か!俺に常識を取り戻させろ!
帝国皇女様が恭しく頭を下げる。
「神託があったのです。」
「神託?」
「はい。ある人物に従え、と。その人物とは。」
「人物とは、、、?」
我知らずごくりと息を飲んでしまった。
「蒼き衣を纏いて、赤い絨毯に降り立つ。」
蒼き衣、、、。
俺の着せられた豪華な服を見る。
、、、蒼い。
足元。
赤い絨毯。
、、、神託、こじつけじゃね?
帝国皇女様を見る。
「てへ♡」
チクショー、可愛い。
メメが、いつの間にか隣に来てジト目をする。
この娘意外と嫉妬深いわね?
というか、なんでそんなに俺に執着してんの?
貴女S級よ?執着する人、間違えているわよ?
それを帝国皇女様は笑って流す。
「うそうそ。
本当は『世界最強に従え』よ。」
、、、それって世界ランクNo.1だよね?
当たり前だけど、俺じゃないよ?
「神託で陛下が頭下げるって、流石に、、、。」
俺は思わず、そう口にしてしまう。
「そんなことはないぞ!」
ガバッと顔を起こし、皇帝陛下が詰め寄ってくる。
荘厳な赤い絨毯を降りて来る立派な体躯の男の接近に、俺は思わず一歩引く。
「あの国難の折、神託ゆえにお主に帝国は救われたのだ。
『帝国の滅びを食い止めたければ、銀の奇跡に頼れ。』
それはあの魔獣の襲来の時を予言しておった。
銀それは即ち、お主に頼れという信託なのだ。」
来たよ。
これだよ、神託とかいい加減なのは。
銀って何を指してるか曖昧だしさ〜。
俺の髪色がたまたま銀なだけだし。
それにさあ、じゃあ、それ以外で帝国は滅びないのかってやつよ。
それに今回、世界最強に従えって従わなければどうなんだ?としか思えない。
詐欺師並みに、そういう胡散臭いのに引っ掛かたらダメだぞ!奴らは心の隙間を狙ってます。
あー、つまりメメが俺のところに頼みに来たのも、その神託もあったってことね。
ほ〜ら、見事に騙されてるじゃないか!
俺のことご主人様とか言ってるし。
、、、何でそう言ってるんだろ?
でも、何かあって俺のせいにされても困るから、予防策。
「世界最強なら世界ランクNo.1で良くない?」
世界ランクNo.1を誘導しておこう。
見事、帝国皇女様のハートを世界ランクNo.1が射止めたら、コルランに戻れなくなるだろうな。
そうなったら、パーミットちゃんを貰いに行こう、ウッシッシ。
、、、冗談だから、メメちゃん睨まないで?俺、口に出してないから。
「ご主人様が分かりやすいのですよ。」
可愛くプンっと言われた。
そ、そう?そういう割には、No.0って分かってないよね?口には出せないけど。
「分かってますよ。」
、、、、、、。
こぇええええーーーーーーーー!!!
口に出してないのに、会話が成立してる!?
俺は明らかに動揺して、顔に出ていたらしい。その反応の心の隙を突いたのだろう。
恐るべしS級美女メメ、いやメリッサ・レイド!
と、と、とにかく、この危機を脱するのが、先だ。
何かこの状況を抜け出す手は、、、。
メメにジーっと睨まれたまま。
、、、打つ手無し!
よし!見なかったことにしよう。
振り返ると、いつの間にか俺の目の前まで来て、メメと俺のやり取りを見て、涙ぐむ皇帝陛下。
これも、こぇええよ!!
「メリッサちゃん?大丈夫?コレ、ダメ男の類いよ?
流石にワシ、レイド皇王に墓前でなんて言えば良いか、、、。」
「、、、大丈夫。」
メメは苦々しい顔をしながら、そう答える。
何が大丈夫なんだろう?
そして、間に挟まれる俺は、なんと言えば良い?
こういう時は、第三者に仲介してもらおうと帝国皇女様の方を向くと、彼女もいつの間にかすぐそばに!?
流石は世界ランクNo.2!
世界最強にもっとも近い女。
並じゃねぇ!!
その彼女は俺の服の袖をそっと掴んでいる。
い、いつの間に!
「お父様。私もコレが良いかもしれないわ。」
「きっさまーーー!!やっぱりメリッサちゃんだけでなく、カレンちゃんまでー!!!」
激昂するオッサン皇帝陛下。
火に油を注ぎやがったーーーー!!!
なんで帝国皇女様までーーー!?
騙される前に騙されるなぁぁああ!!
お前らもっとしっかりしやがれ!!