表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

#7 「ギャグセンスが寒すぎる件について。」

 318プロ 事務所_


「えー、というわけで…本日付で、この事務所に呼音テル君が加わることとなった。はい、皆拍手。」


 先輩の紹介に続いて、同僚や事務員からまばらな拍手が送られる

 俺は勿論、一人盛大な拍手で迎えた


「あの…一つ質問いいですか?」


 テルがおどおどしながら、先輩に尋ねる


「なんだ?」


「私、まだ採用されてなかったんですか?この前、宣伝用の映像撮ったり…厳しいダンスレッスンした気が…。」


「あー、あれは…そう、夢、夢だ。」


「夢!?」


 テルが昭和のバラエティのように驚き飛び上がる


「で、でもでも、私確かに…。」


「勘のいいガキは嫌いだ。それに、いちいちそんなことにツッコんでいては、この世界では身が持たんぞ。」


「は、はあ…。とりあえず気にしたら負けだと思っておくことにします…。」


 テルが弱々しく引っ込んでいった


「とりあえず、呼音君には宣材写真の撮影をしてきてもらう。」


 そう言いながら、先輩は何枚かの写真を取り出す


「これはうちに所属しているアイドルたちの宣材写真だ。参考にしつつ、同じ事務所で活躍する仲間たちの顔と名前を覚えておくこと。裏に名前書いといたからな。」


 写真の裏を見ると、それぞれ写真のアイドルに対応した名前が書いてあった


「…ありがとうございます!」


 先輩…否定的だったくせに、優しいな…

 思わず笑みがこぼれてしまう


「どうした、公…ニヤけて、気持ち悪いぞ。」


「なっ!?」


「公は呼音君に付いて行動してくれ。撮影場所はスタジオだ、分かるな?」


「は、はい!」


 久々のちゃんとした指示に、ドキッとしてしまう

 なんだろう…急に緊張が…


「よろしくお願いします、プロデューサーさん!」


 テルの元気な声で我に返る

 そうだ、俺がちゃんとサポートして、引っ張っていってやらないと…


「…ああ、任せてくれ!」


「ふっ…大丈夫そうだな。」


「え?先輩、なんか言いました?」


「…なんでもない、とっとと行け。」


 先輩が照れていた理由はわからなかったが、俺はテルと一緒にスタジオへ向かうことにした


 _____


 撮影スタジオ_


「き、今日はよろしくお願いします!」


「はい、よろしくねー。」


 既に待機していたカメラマンと、緊張混じりの挨拶を交わす

 …こんなに緊張していては、良い笑顔が撮れないのではないだろうか

 ここはひとつ笑わせて上げた方がいいだろうか

 俺は衣装セットの中から、ハゲヅラの被り物を手にとり、こう言った


「テル。」


「はい?」


「…()()()ます、なんつって…。」


 …辺りに、氷河期かと思わせる程の冷たい空気が流れた

 カメラマンも我慢大会でもやっているかのように固まっている

 ご想像の通り、大失敗だ

 学生時代、いつも教室の隅っこでラノベを呼んでいたのが仇となったか

 もっと人を笑わせる術を学んでおけば…


「ぷっ…あはは!プロデューサーさんったら、心配性なんですから。」


「うぅ…すまん。」


 思わず涙目になってしまう


「大丈夫ですよ、私ばっちり楽しんできますから。きっといい写真も撮れます!」


 そう言うと、テルは元気に撮影へと向かっていった

 …俺が心配するまでもなかったな

 心配なのは、むしろ自分の方か…

 ホッとしながらも、フェスの時先輩に言われた言葉を思い出していた


(納得がいっていないのはこの世界の仕組みにか?それとも未だにアイツのことを…。)


 あの時は勢いで違うと返事してしまったが、本心はどうだろうか

 俺は…未だにアイツのことを…

 そんなことは無いと、自分に言い聞かせたかったが、今は仕事中だと一時的に不安を紛らわすことしかできなかった

《キャラクター紹介》

【呼音テルの趣味】

アニメが大好きで、商店街のライブのほとんどはアニソンを歌っていた。ジャンルは幅広く、推せるものはとことん推す主義。アニメの見過ぎで、少し目が悪い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ