#EX1 「クローズアップ現在」
『アイドル』
それは女の子たちの永遠の憧れ
誰もが夢見る『トップスター』
だが、その頂点に建てるのは、ほんの一握り…
そんな非情かつサバイバルな世界に、彼女は足を踏み入れた
【AM 07:32_】
都心から少し離れた、半分田舎のような無人駅に彼女は居た
遅刻しないようにと、少し早めに駅についた彼女は、いつものように仕事の資料に目を通し始める
…と思いきや、今日は仕事がないのかアイドル雑誌をじっくりと読み込んでいた
きっと『アイドルの在り方』について、思考を巡らせているのだろう
我々取材班は、彼女に今日の予定を尋ねることにした
「呼音さん、おはようございます。」
「…あの、何やってるんですか?プロデューサーさん。」
「宣伝用の映像を作ろうと思って…。」
「な、なるほど?」
「というわけで、今日の俺はただの取材記者、カメラマンだ。そのつもりで頼む。」
「わかりました、プロデューサーさ…カメラマンさん。」
…我々取材班は、彼女に今日の予定を尋ねることにした
「呼音さん、おはようございます。」
「えっと、おはようございます。…寒いですね。」
「そうですね。…今日の予定はどんな感じですか?」
「予定…は…特に無いです…。」
「…。」
今日の彼女は珍しくオフのようだ
それでも熱心に事務所へ向かう姿は、まさにアイドルそのものであった
今の世の中、これほど直向きなアイドルは他にいるだろうか、いやいない
我々は彼女のレッスンの様子も取材することにした
【AM 10:00_】
事務所に着き、朝礼を済ませ、プロデューサーとの打ち合わせを終えた後は、レッスンの時間となる
事務所には専属のボイストレーナー、ダンストレーナーがついており、所属しているアイドルたちをこれでもかと鍛え上げる
「ストップ!呼音、そこのステップはもっとキレ良く!あと、全体的に動きがトロい!もっとビシバシ動いて!」
「はい!もう一度お願いします!」
彼女はダンスが苦手だそうだ
けれど、誰よりも真剣だ
ダンスが苦手でも、必死に食らいつく姿には、どこか心打たれるものがある
こういった日々のレッスンが、普段我々が見る最高のパフォーマンスへと繋がるというわけだ
「あの…主人さん?」
「…はい?」
「そこに居られると…私も呼音も集中できないのですが…。」
「…すみませんでした。」
彼女のレッスンを邪魔するわけにはいかない
我々は一度撤収することにした
【PM 02:41_】
我々は、レッスンと昼休憩を終えた彼女に取材を申し込んだ
「取材…ですか。勿論、大丈夫です!」
本人から快諾を受け、事務所の待合室を借りることができた
「まず、アイドルを目指そうと思ったきっかけを教えて下さい。」
「はい!私は、幼い頃に一度だけ『神音姫ナル』さんのライブを見に行かせてもらったことがありまして。そこで周りの人達と一緒に輝いているのを見て、私も同じ舞台に立てたらと思ったのがきっかけです。」
「なるほど…神音姫さんがお好きなんですね。」
「はい!私の憧れであり、目標なんです。」
彼女の目は輝きに満ち溢れていた
その熱意は、まさにこちらまで届きそうなほどの強さだった
「…では、ご自身のアピールポイントを教えて下さい。」
「アピールポイント…何でもポジティブに楽しめることですかね。」
そう言った彼女の顔は、少し苦笑い気味だった
「いいじゃないですか、大切なことです。この前の事件も、プレッシャーに物怖じせず、楽しめたことが勝因でしたよね。」
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいです。」
彼女は少し照れつつも、嬉しそうにしていた
先日起きた『ライブ会場乗っ取り事件』
あの時、犯人であったミラクル仮面を退け、見事観客たちを救ったのは、他でもない彼女だ
もしあの時、彼女の気が動転していたら、事件は最悪の結末を迎えていただろう
我々は最後にこんな質問を投げかけてみた
「では最後に…あなたにとってアイドルとはなんですか?」
「希望です!…私にとっても、私を見てくれる皆さんにとっても。」
即答だった
少しは答えるのに苦戦するかと思っていたが、彼女は既に心の中で答えを決めていたようだ
やはり彼女には、他とは違う何かがある
我々は改めて痛感することとなった
「…なるほど。以上です、本日はありがとうございました。」
「ありがとうございました!」
これからも我々は、彼女をクローズアップしていこうと思う
…以上
《キャラクター紹介》
【主人公の趣味】
言わずもがなアイドル。加えてアニメや漫画、ゲーム。特に熱血モノが好きで、語り始めると止まらない。中学生の頃、アニメの影響で中二病を患っていたが、現在はあまり思い出したくない記憶となっている。