[漫才] さばの味噌煮
ボケ:私事なんですけれども
ツッコミ:なんでしょう
ボ:新しいレンタルショップをオープンさせようと思ってるんですよ
ツ:オープンって…,オーナーってことですか?
ボ:オーナー兼社長ですね
ツ:すごいじゃないですか!? なんのレンタル?
ボ:さばの味噌煮
ツ:え?
ボ:さばの味噌煮です
ツ:さばの味噌煮って…あの?
ボ:サバを味噌で煮込んだやつです
ツ:貸し出すんですか?
ボ:新しいでしょ?
ツ:「新しい」とか「古い」とか,そういう次元を超えてる気がしますけどねぇ
ボ:ついにあのさばの味噌煮が,レンタル開始ですよ!
ツ:「待望のあの新作が,ついに入荷しますよ!」みたいに言ってますけど…
ボ:待望のさばの味噌煮ですよねぇ
ツ:誰も待っていなかったというか…,誰も「借りよう」などと思ったことのないジャンルですよ
ボ:日本人がみんな大好きな「さばの味噌煮」のビジネスで,失敗する姿は想像できないですからね
ツ:無駄にポジティブですけど…,借りたさばの味噌煮は,食べていいんですか?
ボ:あたりまえじゃないですか。食べていただかないと,貸した意味がないですからね
ツ:そうなんですけど…,食べたとしてね,どうやって返せばいいんですか?
ボ:そんなの,自分の家でさばの味噌煮を作って,返していただければ…
ツ:だったら借りる必要ないでしょ
ボ:急にさばの味噌煮が必要になることもあるでしょ〜
ツ:そんなことあります?
ボ:だいたい急に言いますからね。「さばの味噌煮が食べたい」って
ツ:誰が?
ボ:おじいちゃんが
ツ:おじいちゃん?
ボ:おじいちゃんはほんと急に言うんですよ。「さばの味噌煮が食べたい」って
ツ:そういう日もあるかもしれないけど,急に言うのは5年か10年に一回くらいじゃないですか?
ボ:事前に「さばの味噌煮が食べたい」っていうそぶりを見せてくれれば,材料そろえておけますけど…
ツ:「さばの味噌煮が食べたい」っていうそぶりってなんだよ
ボ:急にサバを読むとか
ツ:サバを読む?おじいちゃんが?
ボ:「わしゃまだ23歳じゃよ」って言うとかさ
ツ:おじいちゃんが急に?「わしゃ23歳じゃ」って?
ボ:「昨日のトライアスロンのせいで,ちょっと筋肉痛じゃ」って言うとか
ツ:おじいちゃんの日常生活の何をどうサバ読んだら「トライアスロンした」ってことになるんだよ
ボ:自転車に乗って出かけたら,池に落ちて自転車壊れちゃって,体が濡れて寒すぎて小走りで家に帰って来ることもあるじゃないですか
ツ:それはもうほぼトライアスロンですね
ボ:こういうふうに事前にサバを読んでくれたら,「あ〜おじいちゃんそろそろさばの味噌煮を食べたい時期なんだな〜」って分かりますけど…
ツ:そんなサバの読み方をするおじいちゃんいないでしょ
ボ:急にサバサバした態度をとるという手もありますよ
ツ:どういうことですか?
ボ:育毛剤を一気に全部使っちゃうとか
ツ:「昨日まであんなにチビチビ使ってたのにどうした急に!?」みたいな?
ボ:これまで何十年もかけて集めた切手を,全部貼って出しちゃうとかね
ツ:なんでそこまでして「さばの味噌煮食べたいアピール」しなくちゃいけないだよ。「さばの味噌煮を食べたい」って一言言えばいいだけの話だろ
ボ:「さばの味噌煮を食べたい」なんて…,口に出して言うのは野暮だろ?
ツ:野暮!?
ボ:「さばの味噌煮を食べたい」というこのほのかな想いは…
ツ:ほのかな想い!?
ボ:仕草やそぶりで伝える。それが「和の心」ってやつだ
ツ:それじゃあうまく伝わらないから,おじいちゃんは直前になって急に「さばの味噌煮が食べたい」って言い出すことになるんでしょうが!
ボ:だから「そこにビジネスチャンスがある」って言ってるんでしょうが!
ツ:どういうことだよ
ボ:急に言われてスーパーに買いに行ってもサバは売り切れ。それなら「今日はさばの味噌煮をレンタルしよう」って話になるでしょ?
ツ:ならないだろ。いいかげんにしろ
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