Wan Naito Bar
自由に演じて下さって大丈夫です。
タイトル:Wan Naito Bar
作:銀狼
声劇台本 ♂ 1:♀ 1
20~25分
・女性:年上既婚
・男性:年下独身
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・女性:
・男性:
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薄暗い路地にあるBar─
◇男性:カウンター席に座り、酒を飲んでいる
男性「こんな所にBarがあるの知らなかったなぁ…」
女性「あの、もし良ければお隣いい?」
男性「あ、はい。どうぞ」
女性「マスター、モヒートをお願い」
男性「…」
女性「見ない顔ね。初めて?」
男性「あ、そうですね」
女性「ふーん」
男性「良く来るんですか?」
女性「そうね。週1で来てるかな」
男性「そうなんですね」
女性「いい所でしょ、ここ」
男性「そうですね。雰囲気も良くって、とても素敵な所です」
女性「今日は落ち着いてるけど、色々な人が来るから楽しいのよ」
男性「へぇー」
女性「ねぇ、今なに飲んでるの?」
男性「ハイボールです」
◇モヒートが置かれる
女性「どうも」
男性「珍しいですね」
女性「なにが?」
男性「モヒートは好き嫌いが分かれるから、飲む人がいないって聞いてたので」
女性「まぁ、確かにミントが強いからねぇ」
男性「そうなんですね」
女性「ねぇ、カクテル言葉って知ってる?」
男性「カクテル言葉ですか?」
女性「そう。花言葉と一緒でカクテルにも言葉があってね、ハイボールは『誕生』っていう言葉があるのよ」
男性「知らなかったです!じゃぁ、今飲まれてるモヒートは?」
女性「うーん。秘密」
男性「何でですか」
女性「ミステリアスな人って魅力的じゃない?」
男性「カクテル言葉はミステリアスとは違いませんか?」
女性「バレちゃった…?お家に帰ったら調べてみて」
男性「分かりました」
女性「ねぇ、君はこの辺に住んでるの?」
男性「秘密です」
女性「あら、ケチなのね」
男性「ミステリアスな人は魅力的なんじゃないんですか?」
女性「折角の出会いですもの。君の事知りたいじゃない?」
男性「なんだか、ずるい人ですね」
女性「そう?」
男性「近いと言えるかは分かりませんけど、歩いて来れる距離ですね」
女性「そうなんだ」
男性「逆に近くに住んでるんですか?」
女性「うーん。約一時間位の所かな」
男性「職場が近くとかなんですか?」
女性「ううん。純粋のこのBarが好きで通ってるの」
男性「通って長いんですか?」
女性「うーん。初めて来たのは半年前かな」
男性「へぇ。長い方じゃないですか?」
女性「かなぁ?」
男性「だと思いますよ」
女性「けど、長い人は一年以上通ってる人もいるのよ」
男性「凄いですね」
女性「ねぇ、君今いくつなの?」
男性「え、あ…いくつだと思いますか?」
女性「えぇー。24とか?」
男性「じゃぁ、24歳です」
女性「じゃぁって違うって事でしょー」
男性「そこら辺ですよ」
女性「そっかぁ」
男性「逆においくつなんですか?」
女性「いくつだと思う?」
男性「25歳とかですかね」
女性「あら、嬉しいわね」
男性「お若く見えるので」
女性「じゃ、私も25歳という事で」
男性「そういうと思いました」
女性「その方が平等じゃない?」
男性「そうですね」
女性「マスター、コロネーションをお願い」
男性「あ、僕もハイボールお願いします」
女性「ハイボールが好きなの?」
男性「そうですね。けど、そもそもお酒の種類を知らないので、何を頼んだら良いのか分からないんですよね」
女性「なるほどね。だったら、マスターにおすすめとか聞いたりすると良いわよ」
男性「おすすめですか?」
女性「うん。その時の気分に合わせて、おすすめのお酒を作ってくれたりするのよ」
男性「へぇ。知らなかったです」
女性「Barって思ってるよりも気軽な所なのよ」
男性「なんか、意外です」
◇ハイボールが置かれる
女性「でしょ?ちょっと緊張してるようだったから、少しは解けた?」
男性「気付いてたんですね」
女性「うん。Bar慣れしてないんだろうなって、見てて分かったわ」
男性「恥かしいですね…」
女性「最初は誰だってそうよ」
男性「貴女もそうだったんですか?」
女性「そうよ。私も、初めてBarに来た時に、同じ事言われたの」
男性「同じ事?」
女性「うん。お酒はマスターに聞くといいって」
男性「そうだったんですね」
女性「そう思うと、なんだか懐かしいわねぇ」
男性「良いですね」
女性「その分、歳を感じるわね」
男性「まだ若いですよ」
女性「ありきたりなお世辞、どうもありがとう」
男性「本当に若いと思いますよ?綺麗ですし…」
女性「ふふ。嬉しい」
◇コロネーションが置かれる
女性「どうも」
男性「コロネ…でしたっけ?」
女性「コロネーションよ」
男性「初めて聞くカクテルです」
女性「一口飲んでみる?」
男性「…良いんですか?」
女性「いいよ。けど、その前に…」
◇女性:カクテルを一口飲み、口を付けたふちを男性に向ける
女性「どうぞ」
男性「……頂きます」
男性「飲んだことない味です…その、すっきりしてますね。そんで」
女性「間接キスだね」
男性「…っ」
女性「ねぇ、飲み終えたら…二人っきりになれる所に行かない?」
男性「えっと…それはつまり…」
女性「ホテル、とか」
男性「けど…指輪、してますよね」
女性「既婚者はダメかしら?」
男性「不倫になるじゃないですか」
女性「…ねぇ、この店に入った理由は?」
男性「え、たまたま見つけて…」
女性「あぁ…外れかぁ」
男性「外れ…?」
女性「残念」
男性「えっと、どういう意味でしょうか」
女性「んー?知りたいの?」
男性「はい」
女性「けど、君はどうかなぁ」
男性「何がですか?」
女性「…ここはBarでありながら、そうじゃない裏の顔があるの」
男性「裏の顔?」
女性「そう。ほとんどのお客が噂を聞きつけて、ここに一夜限りの関係を求めにくる場所よ。言わば、出会いの場ね」
男性「え、えっと」
女性「たまに、こんな分かりにくい所に、ただのお客が紛れ込むのよね」
男性「一夜限りの関係って…そういうことですよね…」
女性「ず っ こ ん ば っ こ ん」
男性「今いる人達全員?」
女性「そうね。私も含めみんな、今日の夜の相手を求めて来てるのよ」
男性「けど、結婚してるんですよね?」
女性「不倫は良くないとか、そういうの聞きたくないから」
男性「…週一で来てるんですよね?」
女性「そうよ。週一で来て、毎週違う男と寝てるわ。だから?」
男性「…」
女性「参考程度に、ここはそういう人達が多いわよ。私と同じ既婚者とか、恋人がいるとか」
男性「なんか、異世界に飛ばされた気分です。凄い場違い感が…」
女性「(笑う)そうね。やっぱり、君には刺激が強すぎたかしら?ほら、良い子はさっさと帰りなさい」
男性「…まだ、居ても良いですか」
女性「私はただの客だから。何も言わないわよ」
男性「ありがとうございます」
女性「それとも、何?私と寝たくなったの?」
男性「結婚してる人とは出来ないですよ」
女性「結婚してなかったら?」
男性「…えっと…付き合ってない人とは…」
女性「(笑う)ふーん」
男性「あの…こんな事聞いて良いのか分からないんですけど…なんで、その、浮気を?」
女性「正直、これを浮気だと思ってないの。だって、ただ欲求を満たしたいだけだから」
男性「旦那さんとは?」
女性「性欲が合わないのよ」
男性「合わないってのは…旦那さんの性欲が無いってことですか?」
女性「そ。性欲が無くてねぇ。けど、私は性欲が強いから、出来ない事にストレス溜まって、喧嘩ばっかしてね」
男性「でも、それを分かった上で結婚したんじゃないんですか?」
女性「そうねぇ。そこが難しい所よ」
男性「はい」
女性「旦那とは恋愛観も価値観も合って、一緒にいて凄く幸せなのよ。だから、結婚して後悔はしてないわ。だから、よ」
男性「だから、寝るんですか?」
女性「そ。ただ、それだけなの。けど、それってとっても大事な事なのよ。日常生活で禁欲を強いられるのわ」
男性「そうなんですね」
女性「性欲が強い人を舐めちゃ駄目よ。いくら愛があるとはいえ、人間の三大欲求を我慢する事なんて出来ないのよ」
男性「僕には分からないですね…」
女性「人それぞれですもん。簡単に言えば、断食状態で目の前に美味しそうなご飯が置かれてる気分かしら?手に届く距離にあるのに、食べたら駄目だと言われるそんな気分よ」
男性「そんなレベルなんですか…」
女性「私が愛する人はただ一人。それは変わらないわ。けど、自分の為に、彼との関係の為に、発散しにきてるのよ」
男性「なるほど」
女性「悪いとか悪くないとかは、人によって考え方は違うから。どう思おうが勝手にして頂戴」
男性「悪い事をしてる気持ちとかにならないんですか?」
女性「ならないわね。だって、一夜限りの関係だから。ここに来る人達はみんな、その後なんて求めてないのよ」
男性「みんなそうなんですね」
女性「みんなとは言え、ここに来る理由は人それぞれよ?」
男性「そうなんですね」
女性「彼のモノでは満足出来ないからとか、恋人は作りたくないけど、セフレという関係性ですら面倒くさいっていう人だったり。色々よ」
男性「セフレと何が違うんですか?」
女性「セフレと違ってお互いに全くもって干渉はしないし、ここは【一夜限りの】関係を求める場所だから、何度同じ人と寝ても、その人とはずっと【初めて】になるの」
男性「僕には分らない世界です」
女性「分からない人には分からないでしょうね」
男性「なんか、ここは浮気を肯定してる場所みたいです」
女性「浮気って何を浮気っていうの?」
男性「…浮気は…」
女性「浮ついた気持ちと書いて、浮気と言うわ」
男性「これは、浮気じゃないって事ですか?」
女性「さぁ?人によってどこから浮気っていうかは様々だから」
男性「僕は…恋人とか奥さんが他の男性と二人っきりで出かけたり、気持ちが無くても寝るのは…嫌です」
女性「それが普通よ」
男性「そうですね。ここは頭おかしいです」
女性「言ってくれるわねぇ」
男性「どんな理由であれ、やっぱり理解も受け入れも出来ません」
女性「けど、私と間接キスをしたわよね?その時には、この指輪に気付いてたんじゃないの?」
男性「それは…」
女性「それって、浮気に加担したのと一緒じゃないの?」
男性「全然、そんなつもりは無かった」
女性「つい流されちゃう子、嫌いじゃないわよ?」
男性「一口貰っただけです」
女性「けど、私がわざと口付けた所を向けたのに、そのまま同じ所に口付けて飲んだわよね?」
男性「気のせいです」
女性「そんなもんよ。駄目だと分かっていながら、時には流されちゃう。人間らしくて良いんじゃないの」
男性「良くないです」
女性「じゃぁ、君は悪い子ね」
男性「…そうですね」
女性「ねぇ、改めて、これは浮気だって言う?」
男性「言いますよ。…僕が下心を一瞬でも持ってたんで」
女性「下心持ってたのねぇ。えっち」
男性「一瞬です」
女性「恋人はいるの?」
男性「居ませんよ」
女性「そっかぁ。寂しい男なのね」
男性「寂しいと決めつけないで下さい」
女性「じゃなきゃ、指輪してる女性と間接キスなんてしないんじゃないの?」
男性「指輪してるからと言って、結婚してるとか恋人がいるとは限らないじゃないですか」
女性「そうね。たまに、男除けだったりするもんねぇ」
男性「…(ため息)かっこ悪いですね」
女性「良いんじゃない?」
男性「けど、浮気はやっぱり駄目だと思います」
女性「マスター、ウイスキー・トゥディをお願い。君も何か飲む?」
男性「あ…ハイボールで」
女性「マスター、ハイボールもお願い」
男性「貴女は…旦那さんが同じ事をしていたら、許せるんですか?」
女性「当たり前じゃない。それに、そうさせてしまった自分を責めるわね」
男性「自分をですか?」
女性「うん。浮気だったら浮気で、浮気しようと思わせてしまった自分が悪いじゃない?」
男性「浮気する人が悪くないですか?」
女性「全部が全部そうとは言えないわ。浮気される方に原因がある事もあるのよ」
男性「別れれば良いじゃないですか」
女性「(笑う)確かにそうねぇ」
男性「思ってないですよね?」
女性「思ってるわよ?けど、愛してたり、恋人という存在に甘えてる人だったり…色々あるのよ」
男性「…全然分からないです」
◇ウイスキー・トゥディとハイボールが置かれる
女性「どうも」
男性「…けど、浮気をされたことないし、浮気もしたことないんで…」
女性「うん」
男性「けど、指輪をしている人から、口を付けた方を向けられたのを分かってて…分からないとか言って…そういう事なんでしょうね」
女性「それもあるんじゃない?君の場合、浮気ってより、浮気相手の気持ちになるけどねぇ」
男性「これは浮気になりますか?」
女性「私は浮気だと思ってないけど。考え方次第よ」
男性「そうですか」
女性「浮気だと思うのも、浮気にはならないって思うのも、自由よ」
男性「…なるほど」
女性「で?君はどう思うの?どうするの?」
男性「何も思ってませんし、なにもしませんよ」
女性「えー?」
男性「しいて言うなら、指輪してなかったらなぁーって」
女性「(笑う)」
◇女性:指輪を外しポケットに入れる
女性「ほら、指輪してないわよ?」
男性「出会う前からやり直さないとですね」
女性「あらあら。急に乗り気?」
男性「冗談ですよ。指輪してください」
女性「もう、ポケットに入れたから、やーだ」
男性「僕はもう帰りますよ?」
女性「帰るの?」
男性「良い子はさっさと帰ります」
女性「良い子じゃないのに?」
男性「良い子じゃないですけど、やっぱ駄目なもんは駄目だと思ったので」
女性「そっかぁ。残念」
男性「けど、また来ます」
女性「なんで?」
男性「知らないことがあるから理解が出来ないのかなって思ったので」
女性「ふーん」
男性「なので、またお会い出来たら」
女性「連絡先教えとこうか?」
男性「それは」
女性「よき友達として、ね?」
男性「…分かりました。LINEで良いですか?」
女性「うん。えーっと…はい、QRコード読み込んで」
男性「…出来ました」
女性「スタンプ送っておいてね」
男性「分かりました」
女性「マスターお会計お願い。ここ二人分一緒で」
男性「一緒だと、自分の会計がどれ位なのか」
女性「今日は私の奢りよ」
男性「え、でも」
女性「良いのよ。こういう時は年上に甘えなさい」
男性「…ありがとうございます」
女性「どういたしまして」
男性「けど、まだ居なくていいんですか?」
女性「ちょっと酔っちゃったみたいで。良かったら駅まで送ってくれない?」
男性「分かりました」
女性「ありがとう」
◇女性:お会計を済ませる
女性「マスターまた来るわね」
男性「また来ます」
女性「ちょっとふらつくから、腕組んでも良いかしら?」
男性「僕も酔ってるんで、支えれないと思いますよ」
女性「良いの良いの」
◇女性:男性と腕組む
男性「…足元気を付けて下さいね」
女性「ふふ。ありがとう」
SE:ドアについてる鐘の音 カランカラン─
─END─
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また、浮気を肯定する内容ではないです。