タンクトップはまだ早い。
タンクトップが着たい! でも着れない!
筋トレを始めてから最初の夏、それがオレの悩みだった。
鏡に映るのは鍛えてきたとはいえまだまだ貧弱な体。もしこのままタンクトップを着ても、街ですれ違った同志に後ろ指をさされるに決まっている。
タンクトップ。それは、筋肉という研鑽の果て纏える下着をワンランクアップさせて魅せる正装なのだ。
「来年、来年こそは……!」
オレは固く決意した。
一年後。
記録的長雨と冷夏のダブルパンチが襲来。とてもじゃないが薄着一枚では過ごせない。
「HAHAHA、オレにタンクトップはまだ早いということだな!」
二年後。
近所で通行人が謎の液体をかけられる事件が多発していて、酷いケースだとヤケドをした人もいるらしい。炎天下ながら長袖での自衛が求められた。
「いい感じに焼けたこの肌を傷つけるわけにはいかない、やむを得ん」
三年後。
「本日も紫外線警報が発表されました。殺人的な紫外線が降り注いでいます。お出かけの際はなるべく肌の出ない服装で……」
サングラスに長袖と完全防御形態のお天気お姉さんが注意を促す。
「オレは……オレは……タンクトップを着たいだけなんだーー!!」
ちょっと文字数をかけたものが続いたので、久しぶりにこれくらい簡単なノリのものが書けてよかったです。
筋トレマッチョ視点は自分に無かったので、タンクトップをこういう風に考える人もいるんだと新鮮でした。
いいねありがとうございます。
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