日焼けどめ対策忘れないで。
「りっこ焼けた~」
「もー、笑わんといて~」
一週間ぶりの登校で顔を合わせたクラスメイトは、随分様変わりしていた。
水泳部の彼女はゴールデンウィーク中朝から晩まで屋外のプールで練習漬けだったようだ。目の周り以外すっかり黒く焼けていて、初対面の人でも習い事を当てられるだろう。
「今年もすっかり逆パンダだよ」
本人もつられて笑っている。なるほど、ゴーグルで覆われた部分以外日焼けするのを「逆パンダ」と言うのか。
他の部員もよく見れば、おそろいの逆パンダだった。
学校から帰る途中でドラッグストアに寄った。日焼けどめを買うためだ。コーナーにまっすぐ向かえば今が売り時といわんばかりの種類が並んでいる。その多さに、おこづかいに響かない範囲でそれが一番効果的かなとパッケージに記された効能を見比べ悩む。
「すーちゃん?」
呼ばれて振り向けば、りっこが立っていた。近くの私学の制服を着ているから、私と同じ帰り道の途中なんだろう。私の学校もここから近いが、こうやって再会したのは中学卒業以来初めてだ。
「えーっりっこじゃん久しぶり!」
わけもなく手を取り合って偶然を喜びはしゃぐ。連絡し合う仲ではないけど、それでもかつての級友と会えればやっぱり嬉しいものだ。
「りっこはやっぱりアレ? 水泳部なの?」
制服似合ってるー、〇〇ちゃんとは別のクラスだよー、部活は何?
そんな話の流れだった。
「今はチア部。水泳は才能ないから辞めちゃった」
あっけらかんとしているりっことは反対に、私は「そうなんだ」と言い返すので精一杯だった。二言目がなぜかショックで。
まだ他に買うもののあるりっことは化粧品コーナーで別れ、レジに並ぶ。
チア部。お金持ちの私立らしい、華やかな部活だ。自分の学校にはないから漠然としたイメージしかわかないが、室内で練習するんだろう。
そういえば昔聞いたな。「どうせ泳げば落ちちゃうから、日焼けどめは塗るの諦めた」って。
逆パンダのりっことゲラゲラ笑う季節がもう二度とこないのが、なんだかさびしかった。
りっこは実在します。
なんというか、才能の有無が継続の判断材料になる、というのに虚を衝かれる思いでした。
いいねありがとうございます。
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