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今年初めてのアイス。

 君とつくる夏が好き。


「あっつ~」

 校門を出て早々、涼平がぼやく。理科室に入ってから部活中もずっとそればっかだったので、思わず苦笑してしまう。

「なぁ、アイス買って帰ろうぜ、桜ァ」

 高校生になってから、寄り道と買い食いを同じ科学部の涼平に教わった。去年の今頃は、通学路からそれて位置するコンビニに行かないかと誘われただけでびっくりした。至って真面目に家から学校へ、学校から家への往復が当たり前の日々だったから。しかし二年目の今年はむしろそれが当然で、「いーよ」と二つ返事で応じた。

 コンビニへの道すがら、次期部長は誰だと思う? と話をふられた。この夏を境に先輩は引退し代替わりとなる。

「涼平じゃない?」

 特に悩むこともなく答える。

 すると「俺は桜だと思うんだけどなー」と謎に押され困惑する。

「なんで?」

「なんでって、ふつーに実力的に」

 確かに科学の知識量で勝負すればこちらの方に軍配が上がるだろうけど、こういうのは上に立つより真ん中に立つのが得意な涼平が適任だ。

 思わず早口で伝える。

「いやなにホメる体でさりげに自分が上って言ってんだよ」

「あ、バレた?」

 無事ボケとツッコミまで済んで、コンビニに入店する。「涼しー」と来店を歓迎してくれる冷房の風にお互い気持ちよさそうに声を出し、まっすぐアイスのケースへ。

「俺コレ」

 涼平が迷いなく手を伸ばしたのはスイカを模したアイス。対して自分はケース内を一通り見回して、コーンのチョコアイスを選んだ。店から出てれば直射日光の洗礼を再び浴びる。今年初アイス~と節をつけるように言いながら、涼平はすぐに開封した。ごみはごみ箱に。

「うんま~。やっぱスイカバーは最高だな。安いし」

「涼平、ほんとそればっかだよね」

「そう? ちゃんと他のも食ってるっしょ」

 そうだよ、だって去年最初に食べたアイスもそれだった。同じように変な歌を歌いながら。……とはさすがに気持ち悪がられだろうと口には出さなかった。そうか、もう一年経ったのか。まだ、一緒にいるのか。

「何ニヤニヤしてんの?」

「いや、別にィ?」

 涼平と今年も一緒に初アイス食べれて、うれしいなって。

 

 アイスを食べ終わる頃には岐路に着いた。別れれば、涼平と違ってこちらはすぐ家に到着する。ただいまを告げ、二階の自分の部屋へ直行しようと階段に足をかけたところで母親に呼び止められた。

「ちょっと賢司、回覧板回してきてくんない?」

私の今年の初アイスはスーパーカップ(チョコミント)でした。


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