春の運動会ってちょっと暑くない?
なーんて言えてた頃が懐かしい。
私が子供の時代、スポーツの秋という言葉がありつつも運動会は春のイベントだった。それまで秋開催だったのが、ある年シレっと前倒しされた。どうも、秋には修学旅行や文化祭もあって忙しさが過密状態だから、というのが親だか友達だかから聞いた推測だった。台風も避けられるし、学校側からすれば都合が良いのだろう。
私の子供の時代、運動会は冬のイベントになりつつある。地球温暖化のせいだ。
九月に入っても残暑と言えない暑さががいつまでも長引き、秋に「さわやかな」「過ごしやすい」などの枕詞がつけられたのはふた昔以上前の話。今じゃ、この季節に運動会を実施するのを国が禁止している。熱中症で死人が出るからだ。
春の開催も、北海道以外では難しい。秋のように消えたとまでは言わないが、春から初夏の期間は極端に短くなった。
「行ってきまーす」
弁当づくりに必死で、和信を見送れなかった。しかし耳に届いた声は弾んでいて、弁当の用意は大変だが俄然応援が楽しみになってきた。今日は運動会当日。この日まで和信は毎日のように練習を重ねその結果を嬉しそうに、または悔しそうに報告してきて、本番が待ち遠しいのがありありと伝わってきた。
「ヨシ」
普段より大きい重箱のような容器に和信の好物をこれでもかと詰める。親としては、息子が首を長くして迎えたイベントを更に盛り上げるべくリクエストに応えたメニューにしたつもりだ。水筒も、お茶とポカリの二種類を持って行こう。
エプロンを外しながら、着替えるために寝室のクロゼットに向かう。部屋の窓からは、桜吹雪が見えた。桜も開花がどんどん早まっている。
冬の運動会に、桜の花。私より上の世代の親なら、考えもしない組み合わせが現実になった今。それでも子供は運動会が楽しみで、親は少しでも子供に喜んでもらいたいのは変わらないのだろう。
「……お母さんも、そうだったのかな」
お節料理のような弁当も、甘い飲み物が入った水筒も、かつての私が嬉しかったもの。あの瞬間の私は愛されていたのだと遅まきながら気づき、急に照れ臭くなってしまった。
「帰ったら連絡するか~」
できれば、和信の紅組が勝ったよという報告つきで。そのためには、私も応援を頑張らなくては。
全くネタが思い浮かばず、でも何か書かない限り次には進めないので、腹くくりました。
5/7




