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どこか華やか春時雨。
「雨がやんだら、会いに行く」
メッセージはずっと、更新されないまま。
まるで、五時を告げるように降り出したささめくような春時雨は断続的で、落ち着かない空模様の日が続く。淡墨色の夕暮れ時、今日何度目かの雨の雫の玉簾が窓にかかった。透明な簾の向こう、隣家の垣根では卯の花が雨に打ちひしがれ頭を垂れている。恵みの雨には成り得なかったらしい。秋の時雨が木々の葉を色付けるのならば、春の時雨は花を腐らせ色褪せさせるのだろう。
こうも降ったり止んだりでは、少しの外出も躊躇ってしまいそうだ。あの人も、そうなのだろう。いや、そうであってほしい。雨と雨の合間に来れないのは、心変わりのせいではないのだと。
あれだけ晴れを願っていたはずが、今では止んでほしいのかそうでないのか、心が揺れている。
幾度目かの更新ボタンを押す。新規のメッセージは届いていない。濡れて会いに行けば、いじらしいとあの人は抱きしめあたためてくれるだろうか。傘の代わりにさびしさを片手に握りしめたわたしを。
春雨の止まず降る降るわが恋ふる人の目すらを相見せなくに
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