暖房と冷房の間。
窓の向こうで雨と風が暴れているのが、布団にもぐりこんでも分かる。
室温は昨日に比べ俄然下がり、このまま起き出すのはいささか辛い。リモコン、どこに置いたっけ。汗ばむような気候が一転、今日がこのザマじゃ衣替えもままならない。極度の寒がりなので、布団も未だ冬用のままだ。
結局手探りではリモコンは見つけられず、すなわち部屋の温度も上げられず、右手はすごすごと布団の中に引き下がる。
真っ暗なぬくもりにもぐりこんで、考えにふける。まぶたは重いが、脳は十分目覚めていた。
昨夜、振られた。元カレになった仁からの最後の言葉を受けて、思考回路は私のどこがいけなかったのかとか、他に好きな人ができたのかとかではなく、感情の温度変化についてだった。
「明里って、水道水みたいなんだよ」
必要だし、渇きも癒えるけど、味気ない。それしか口にできないとなると段々飽きてしまう。でも、求められるのは確かだし、俺でないもっと別の人と付き合えばいい。俺はジュースなりお茶なり酒を探しにいく。そういうことを言いたいらしい。
女を飲み物に例える男ってどうなんだとここにきて思い、別れを受け入れた。
私は、好きになったはじめからずっと同じ熱量を宿していたのに、どうして仁にはそれが出来ないのだろう――――仮にも一日前までは恋人だった男に、出来損ないに向ける軽蔑を抱く始末。
幸か不幸か、冷え切ったとの自覚があるほど、露骨な態度はとられなかった。でも確実に、仁の思いは平熱以下に転化していった。
感情の温度調節ができるリモコンがあればなあ。
そろそろお腹が空いてきた。エアコン稼働の必要性がいよいよ増す。
また誰かと付き合うなら。
熱い抱擁やキスでなりふり構わず愛を注いでくれなくていい。23℃、暖房と冷房の間くらいの温度感で関係を維持できれるくらいがちょうどいい。
……昔見た映画が、こんなタイトルだった気がする。
冷静と情熱のあいだ、小説は読んだけど映画はまだです。
エンヤが歌っているから見たいんですけど。
4/18




