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第四話 開戦

一章 第四話



 〈九頭竜〉と『アカツノ』。

 その死闘の狼煙を上げたのは、上級の火魔法士が放つ魔法だ。


「――炎槍投擲(フレイムジャベリン)


 前衛二人が〈九頭竜〉に接近する最中、タロは、ハオスでは真似できぬ速さで〈魔法〉を構築し、〈九頭竜〉の白い頭に放った。

 事前にメリーによって強化された〈魔法力〉によってその威力は、もはや攻城兵器を超える。

 砦や王城の建築にも使われる竜鱗とはいえ、これには耐えられない。



 放たれた投槍は、炎で象られ、徐々に減衰し、白頭の鱗をわずかに焦がすに終わった。



「――ふぇぇ。作戦変更ですかねぇ。

 ……風の囁き(ウィスパー)

 ……ヤト、接近しますねぇ」

『了解だ。全員に声を届けたい。維持できるか?』

「すでに繋げていますねぇ」


 遠距離からの魔法は無意味。

 そう判断したタロは、瞬時にヤトへと連絡した。

 本来ならば、今回の討伐の要であるタロの〈魔法力〉消費はなるべく避けたいところである。しかし〈九頭竜〉と接近戦をするならば、叫び声を上げる暇はない。

 後方――下位や中位の冒険者たちと他の〈害竜〉との戦闘からも轟音が響いている。

 〈九頭竜〉の攻撃を避ける術を持たないタロが接近戦を演じるには、確実な意志疎通が不可欠だった。


「ハオス、接近しましょうかねぇ」

「分かった。先行する」


 ハオスは父の形見の片手剣を右手に持ち、走り出した。

 タロの速度に合わせてゆっくりと走る。

 〈九頭竜〉の元に行くまでにハオスは集中を高めていった。

 下級以上の剣士のみが扱える〈剣気〉。それを練って〈剣力〉となす。

 それを体に纏わせれば、身体能力を飛躍的に向上させ、剣に纏わせれば、切れ味も耐久力も向上する。

 そして〈剣力〉を使って放つ〈剣技〉も、剣で攻撃をするという動作や効果を強化したものである。

 事実、ハオスの目の前には、縦横無尽に〈九頭竜〉の周囲を跳ね回りながら、〈九頭竜〉を翻弄するヤトが映っていた。

 〈九頭竜〉はその巨体を支えるためか、足や爪での攻撃はしていないようだ。翼が無いため、飛ぶこともない。

 注意すべきは、自在に動く蛇のような九本の首。その巻き付きと噛みつきである。

 それら全てを器用に避け、時折、斬擊を放っている。


「グウゥゥゥ!」


 音のする方へ目を向ければ、白頭の首の付け根が餌を丸のみした蛇のように膨れ上がった。

 光属性を持つその頭は、まさに餌を食らわんとする蛇のように鎌首をもたげ――――落ちた。

 〈竜の息吹〉を撃たせる前にヤトが切断したのだ。

 すぐさまサカロが、二つの瓶を投げつけた。

 錬金術油と火炎瓶である。

 傷口は燃え上がり、断面を焦がすが、首は再生を始めていた。


「――火炎放射(フレイムスロワー)


 ハオスの頭上を飛び越えて、火の柱が直進した。

 わずかに減衰されるもそれは白い首の断面を黒く焼き焦がした。

 首は動きを止め、やがて盛大に地面を揺らした。


『このまま一気に倒すぞ』


 ヤトの声が、風に乗って『アカツノ』全員に伝えられた。

 動く首は残り八本。



 














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