第七話 『両刀使い』
一章 第七話
緑、黄色、錆色。
三本の頭からの攻撃を避け続けるヤトは、パーティー全体の様子を俯瞰していた。
赤と緋色の頭を、その身体に見合わぬ巨大な盾で、キヌがいなしている。
――このパーティーで最も信頼できる盾役だ。
〈補助〉と〈回復〉の〈奇跡〉を常に使い続け、メリーは暴れていた。頭だけでは飽きたらず、胴体をも殴りつけている。
――持久戦ならば、負けることはない。
問題児三人組は、戦闘中だというのに、喧嘩をする余裕がある。
――いや、喧嘩しているのは二人だけか。
「そろそろ、メリーの方で動くか?」
『アカツノ』で能動的な行動をしているのはメリーだけである。
さすがのヤトでも、頭を三本も相手に切断する余裕はなく、タロの魔法が直接には効かない状況で、〈九頭竜〉の鱗を傷つけられるのはメリーとハオスだけであった。
だが、切断には至らない。
右手で、『妖刀・揺光』が胎動する。
その漆黒の刀身は怪しい光を放っている。
対して、左手の『霊刀・風牙』は大人しい。
その純白の刀身は常に風を纏い、所有者に天を歩む力を与える。
ヤトの異様な滞空時間と驚異的な空中機動はここに起因していた。
――もう少しだけ待ってろ
ヤトは自身の愛刀に語りかけながら、機が熟す――暴れるメリーが〈九頭竜〉を引きつけ、喧嘩するサカロとタロが万全の状態になる――のを待っていた。
『妖刀』と『霊刀』を自在に操り、冒険者ギルド最強のパーティー『アカツノ』を率いる女剣士――――それが『両刀使い』ヤトである。




