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届かなかった…。

修正しました。

静まる中、教頭先生の声が響いた。


「新入生代表。久遠悠仁、流川怜花。壇上に上がりなさい。」


「「はい。」」

第二会議室を出て少し時間がたった今、入学式の新入生代表挨拶が始まろうとしていた。


私はゆっくりと壇上へと上がっていった。

そして、演台の前に立った。

(やっぱりか。)

演台の高さは推定135センチほど。その上にマイクが置いてあり、そこでスピーチが出来るようになっていたのだが、私の身長では届かない所にあったため、スピーチが出来なかった。

(どうしようか。)

台があればなんとか届きそうなのだか、生憎台らしきものは見当たらなかった。これ程身長が低いことを悔やんだことはなかった。

(ジャンプしたらいけるかしら…)

何回も背伸びをしてみても、やはり届かなかった。

私がどうやってこの場を切り抜けるかをかんがえていたら、静かにしていた彼が突然マイクを手にとって、私にしか聞こえない位の大きさで「俺に任せて」と言った。

そのあと彼は壇上から下りていき、新入生代表のスピーチを始めた。私は急いで壇上を下りていった。


「皆さんおはようございます。新入生代表の久遠悠仁です。」


それからいくつか話をしてから私にマイクを渡した。私はそのマイクを受け取ると、さっき考えてきた。スピーチを話した。

スピーチが終わったあと一礼すると私が持っていたマイクを彼がひょいっと奪って演台の上に戻した。


◇◇◇


入学式が終わり、今は特別科Ⅱクラスの教室にいた。

ガラッ

さっきまでざわざわとしていた教室が静かになった。担任の先生らしき人が教室に来たからだ。

「皆さん御入学おめでとうございます。今日から特別科Ⅱクラスを担任することになった古本直哉ふるもと なおやです。今日は入学式ってことで自己紹介してもらうからな~。」


古本先生の髪は緑色だった。何だかとても眠そうだ。昨日は何時に寝たのだろうか。私のおすすめ就寝時間は10時だ。


それにしても自己紹介とは、何を言えばいいのだろう。秘書だった頃の自己紹介は「社長秘書をやっております。山本京子です。以後お見知りおきを。」だったのだが、今は社長秘書ではないし、名前を言うだけでいいのだろうか。


わたくし折原賀奈子おりはら かなこと申します。趣味は日本舞踊やお琴です。これからよろしくお願いいたします。」


趣味とかも言うやつなのか…。どうしようか。何を言おうか。と考えていたら次は彼の番だ。


「俺の名前は久遠悠仁だよ~。趣味は特に無いかな~。あと俺、女の子は好きだけどこの赤い髪した眼鏡の女の子が婚約者だから、告白とかは遠慮して欲しいな~。これからよろしくね。」

彼はゆるゆると自己紹介をして、皆の前で堂々と私が婚約だと言った。さっきまで頬を薔薇色に染めていた女子たちが、彼には婚約者がいると言われた瞬間顔が冷たくなり、視線が一斉に私の方へと集中した。

(何かしらこれは…。)

それから数十名ほど自己紹介が終わった後に、私の番が来た。一瞬止んだと思った睨みや視線をまた受けながらも自己紹介をした。

「私は流川怜花と申します。趣味は特にありません。(嘘です、眼鏡集めです。)これからよろしくお願いします。」

私が流川怜花と言った瞬間に皆の顔色が変わった。そして私から目を背けた。


私は一応、日本三大財閥のうちの一つに入っている家のお嬢様だから。

(さっき入学式で新入生代表挨拶の時に名前呼ばれてたと思うのだけど…)


皆は多分彼の事しか見ていなかったんだな。少しは私も見てほしかった。スピーチきちんと考えてきたのに。そう言えば彼にまだ礼を言っていない。終わったら言いに行こう。

それからまた何人か自己紹介したら自己紹介が終わった。挨拶をしたらもう帰りだ。

「さようなら。」


私は彼のところにいく前に彼から私の方へと来た。そして、

「怜花チャン。良かったら今日一緒に帰らない?」

と言ってきた。一瞬断ろうかと思ったが彼の笑顔から無言の圧力を感じたのでやめておいた。

「ええ、帰りましょう。」


そして私達は教室を出た。


「今日、スピーチの時、助かったわ。ありがとう。」

私は彼にそういった。すると彼は

「いえいえ~怜花チャンの助けになったならよかったよ~。何気にさ、怜花チャンって俺の名前呼んでくれないよね~。婚約者なんだからしたの名前で呼んで欲しいな。」

と言った。そうなのだか、人を下の名前で呼ぶのは親しい人しかいなかったので呼んでいいものかと迷ってしまうのだ。いいと言うのなら呼ばせてもらおう。

「なら、悠仁って呼ぶことにするわ。」

「うん、そうして。」

彼はへらへら笑いながら言った。


私は今日この世界が乙女ゲームだったと知って、どうしても早くかたずけなければならないことが出来たのだ。

「私、悠仁に聞きたいことがあるの。」

でもこれは悠仁に聞いたほうがいいと思った。悠仁には関係ない事かもしれないけど、彼も同じ転生者だし、このゲームの内容を知っているようだったから。


そう言えば悠仁はゲームの彼とは全然違う。成績が優秀なところだけは変わっていないが、それ以外はすべて違う。

私が、彼に聞きたいことは碧の事だ。碧と…碧の好きな人、美月ちゃんについての。


「ねぇ、碧の好きな人、美月ちゃんが自殺するのっていつだったかしら?」





ブックマーク十件。ありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[良い点] 内容がしっかりしていて面白いと思います [一言] 最近見はじめた者です あまり転生系は読みませんが面白いと思います 私も同じく学生です。 これからも頑張ってください
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