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第77話「その口径を目に焼き付けて───」

「で、デッカイっていうか───……」


 ポカ~~ンと口を開けて呆けているアリシア。


 おーらよッ!!


 その髪を引っ掴むと、

「いだだだだ! は、離しなさいよ!!」

「はっはっは。離してやるともさッ」


 ブンッ! と、クソアマをぶん投げたのは、召喚と同時に地面に敷設されている線路上。


 そして、そこに走る砲弾輸送用の貨車(・・・・・・・・)の上だった。


「あだッ!」


 いった~~い……。

 しこたま打ち付けた尻をさすりながら、アリシアが抗議の目を向けてくる。


「何すんのよ!」

「ナニするのさ」


 ナセルも貨車に同乗すると、アリシアを足蹴にしたまま、前進を指示する。


いけ(ギィッヒ)

了解(ヤボォル)


 ゴトンゴトンと、重々しい音を立てて動き出した貨車の上には、バカでっかい砲弾がズラーーーリと、横倒しに並べられている。


 人間より遥かにデカいソレ────3~4mくらいはあるのだろうか?


 さらには炸薬まで含めると、もはやこれが大砲の弾だなどと(のたま)うことすら(はばか)られるサイズ。


「───ちょ、ちょっと何よ! いい加減にして!」


 ゴトンゴトンとレールの上を走る振動に、アリシアが怯えたような声を上げる。


 とはいえ、ナセルだって列車に乗るのは初めてだ。


 だが、召喚Lvの上昇とともに、ドイツ軍の知識が次々に溢れてくる。

 まるでドラゴンを愛し、相互に理解と意思疎通ができたあの頃の様に……。


「さすがにLv7。……魔力がドンドン減っていくな」


 これは、バンメルから頂いた『魔力の泉』がなければ、数分程度しか召喚できないかもしれない。


 それほどまでに、ナセル自身と本来の召喚Lvを越えた急激な成長は、彼をしても多大な負担を強いていた。


 過負荷が体を蝕み、つーーー……と鼻血が垂れる。

 どうも、魔力そのものは回復しても、精神疲労の様なものが徐々に蓄積されていくらしい。


 だから、マジックポーションが大量にあったとしても魔術師は無限に魔法を行使できるわけではない。


 それは召喚術とて同じ……。

 ───やはり限界がある。


(───もう少し。もう少しだけ、もってくれ……)


 俺の体よ……。


 そうだ。

 コイツで最後なんだ。


 コイツを最後(・・・・・・)に、少し休もう────。


「なぁ、アリシア……。ずっと、お前に言いたいことがあったんだよ」

 ふと優しい目で、足蹴にしている愛妻(クソビッチ)を見下ろすナセル。


「な、なによッ!! 私にはアンタと話なんかないわ! コージ! コぉぉぉっぉぉおジぃぃぃぃい!!」


 うるっさいクソアマだな。

 来ないっ、つってんだろ!


「…………まぁいい。あとで言ってやるよ」


 ゴトン、ゴトン……。

 ゴトン、ゴト──────……。


 ギィィィ……………………ゴ、コン。


 見上げるほど巨大な列車砲の近くで貨車は停止する。

 周囲は砲の操作要員でごった返しており、貨車にもすぐ要員がドヤドヤと乗り込んできた。


榴弾(ラーデン ダ)装填グラナート炸薬は(マキシマム)最大だ(レゲビュワ)!』

了解(ヤボォル)! クレーン(カーニュ)よこせぇ(バシュフォン)!』


 非武装の兵も多く、兵士というより作業員と言った風貌だ。

 そして、全員が役割を理解しているのかキビキビと動き、巨砲を操作していく。


 ナセルの目の前にもフックの付いたクレーンがゆっくりと降ろされ、操作員と作業員が連携して砲弾を運搬していく。


固縛よし(ビーディエスエム)フック(ハーグゥンフェ)装着(スティゴン)!……巻上げぇぇえ(ヒーヴンツァァアイグ)!』


 ウィィィィィィン…………。


 クレーンに取りつけられているワイヤー駆動の巻き上げ機がフックを引き上げていく。

 同時に砲弾に取り付けられている固縛用のベルトがミリミリと音を立てて引き絞られていき───ピンッと張る。


 そして、ついにはフワリと巨弾が浮かび上がり、クレーンの操作に従って列車砲の後部へと導かれていく。


(リンカー)旋回(ツンポォス)──────停止(ハルト)!』


 ウィィィィィイイン…………。

 ゴッコォン……。


 クレーン操作によって、列車砲専用の巨弾が空中でユラユラと揺れている。


 そのまま、操作員と作業員が互いに声を掛け合いながら砲の後部にある砲車へと巨弾を運搬するのだ。


ジブ上げ(フォックヒィヴン)──巻き下げぇぇえ(アップセィヒィィイン)!』


 ウィィィィィイン…………。

 ズンン……!


 巧みなクレーン技術により、ようやく一発の砲弾が届けられる。


 次に装填作業。

 そして炸薬を装薬するという────聞くだけで、気の遠くなる作業だ。


 だが、練達のドイツ軍──列車砲兵たち!

 その動きに淀みはないッ!


「こりゃ、圧巻だな……」

「何が圧巻よ! 退()きなさいよぉぉ!!」


 アリシアがナセルの足元でジタバタと暴れるも、そう簡単に逃がすわけないだろうが……。


「ま……楽しめよ。お前のために召喚したとっておきだぜ?」


 最後のプレゼント(・・・・・・・・)って奴だ。


「ふ……ふざけないよ! 私を誰だと思っているの?! 勇者の妻よ! 聖女になるのよ!!」


 は……。

 何が聖女だ。


「性女の間違いじゃねーのか?」

 クソビッチが。


「黙れ、ふにゃ〇〇野郎が!」

「やかましい、クソアマ」


 スパーン! とその頭をブッ叩いてやる。


「く……! お、覚えてなさいよ……。コージだけじゃない。国も教会も私の味方なのよッ」

「そりゃ結構」


 とっくにぶっ潰したよ。


「───あとな、まだお前は俺の妻だ。そして、今も昔も俺の恋女房だよ。……お前のことは片時も忘れたことはない」


 そうとも……ずっと、想っていたよ───アリシア。


「き、気持ち悪い……! アンタと結婚したことは、私の人生最大の汚点よ!」


 コージと先に出会っていたら……!


「そうかもな……。だが、な────」


 ナセルは、砲弾を運び終えたクレーンを呼び戻す。


 操作員は遅滞なく操作し、ナセルの目の前にクレーンのフックを誘導した。


「────そのセリフ、そっくりそのまま返してやるぜ! 来いッッ」


 アリシアを抱き起すと、ナセルはクレーンのフックに足をかけ、ワイヤーを掴む。

 

「ちょ! 離しなさいよ! 離せッ! 離せッこの野郎!!!」


 アリシアの柔らかい体がナセルに密着する。

 こうして抱締めたのはいつ以来だろうかと、フと思い出すも────それはずっと昔のことのように感じられた。


「離したら死ぬぞ? いいのか?」

「何を────ひぃ!」


 いつの間にかクレーンが動き出し、ナセルとアリシアを高々と引き上げていく。


 左旋回で砲の後部へ……。


 ならば……右は?

 このまま、右旋回なら?


「あそこへ……」


ハッ(ヤー)! (リヒテヒ)旋回(ツンポォス)! 砲身(シーラグ)に当てる(ジィニヒト)なよッ(ゲェヴォフ)


 クゥィィィィィィィィイイン……。


 ナセルの示す方向にむけ、操作員が淀みなく答え、クレーンを操作していく。

 それはまるで、蛇が鎌首をもたげるようにゆっくりと───。

 まるでダンスを踊る二人をサポートするかのように、旋回するクレーン。


 その行きつく先は────?


「見ろよ、アリシア────。王都が燃えてるぜ……」

「ひ、ひぃ……は、離さないで!」


 常人では考えられない高さをクレーンで運ばれる二人。


 そして、ナセルはアリシアと高空の景色を楽しむ。


(この光景───……)


 まさか、自分の家を高い位置から見下ろせる日が来るとは思わなかった。


 王城程ではないにしても、列車砲も途方もない巨大さ。

 さらにはクレーンの高さも相まって、まるで展望台から王都を眺めているかのようだ。


 倒壊したギルド。

 破壊しつくされた教会。

 爆破され、燃え堕ちる王城。




 あぁ、綺麗だ………………。



「綺麗だよ……」

 アリシア。


 そして見てごらん───。


 ナセルの精神をズタボロにした全てが、

 そう……全てが破壊されている────。


「ひ……ひぃ……! な、なんてことを! なんてことをぉぉぉおお!!」

 ようやくアリシアも周囲の様子に気付いたらしい。

 遠目に見るのと、高所から見下ろすのでは随分違うだろう。


 王都の民も大半が逃亡し、難民化。


 残ったものは大抵がならず者どもで、警備兵がいないことを幸いに、暴虐のかぎりを尽くしているらしい。


 略奪、破壊、強姦、放火、殺人。


 だが、もはや取りしまる兵もおらず。

 ……いや、生き残った要領のいい兵はすでに暴徒側について、積極的に略奪に加わっているようだ。


 まだ炎の勢いは弱いものの、早晩王都は焼け野原になるだろう。


 誰も消火しないし、防火帯を作ろうともしない。

 できるわけがなかった。


 民のいなくなった王都なんて、こんなものだ。


「ひ、ひどい……。ひどすぎる……」


 ボロボロと涙を流し、破壊されていく王都を見つめるアリシア。

 炎の照り返しを受けて、彼女の涙がキラキラと輝いていた。


 ───綺麗だ……。


 散々ボコボコにされて、酷い有様だというのに、この女はそれでも美しい────。


 あぁ、

「───綺麗だよ……アリシア」

「くッ! こ、このぉぉおお!」


 密着した状態でアリシアがナセルに掴みかかる。

 クレーンが揺れ、ギュリギュリとワイヤーが軋んだ。


「この人でなし!! 人殺し!! 悪魔! 化け物! クズ野郎!!───魔王ぉぉぉぉおお!!」


 は……!

 ははは!

 はーーーーーーはっはっはっはっ!!


 はッ……!!

「────お前が……」


 そうとも、人殺しだ。

 悪魔で化け物で、クズ野郎さ。

 はたから見れば、確かに魔王かもな。


 だけど、

 だけどな……。


 だけど、アリシアよぉぉお───。


 すぅぅ……、


「───お前が言うんじゃねぇぇぇぇぇえええええええ!!」


 お前たちが!

 お前らが!!


 お前(・・)のせいだろうが!!


「ああ!! 人殺し?  人でなしぃぃ? 悪魔だ? 化け物だぁ? クズ野郎?───そして、魔王だぁぁぁ??」


 …………よく言うぜ。

 よく言うぜ!!!!


 よ・く・言・う・ぜッ!!!!


「そうよ! 見なさいよ! アンタのやったことを! こんなの悪魔よ! 人でなしの所業よ!」


 見なさいよ!


 人が斬り殺され、

 人が焼き殺され、

 財貨を奪われ、

 住処を追われてるのよ!!


「それを悪魔や、人でなしや、いーえ!───これこそ魔王の所業っていうんでしょぉぉぉぉおおおお!!!」


 このクズ野郎ぉぉぉぉおおおお!!



「───は!!!!」





 すぅぅぅぅう……、

「────それは、全ッ部お前らが俺にやった事だろうがよぉぉぉぉぉおおおおお!!」





 あああああん!?


 ふっざけんじゃねぇぞ!


「両親を殺され! 大隊長を焼き殺され! リズを攫い、住処を奪い、尊厳を踏みにじり、ドラゴンすら奪い取り、あまつさえ命さえ奪われそうになった!!」


 お前が!

 お前らが!!


 全部お前ら(・・・)がやった事だろうがよ!!


「────人にやっておいて、自分がやられないなんておめでたい(・・・・・)事を考えてたのか、おらぁぁぁああ!!」


「ひぃ!」


 ふざけんなよ!!


「俺が魔王で人でなしで悪魔なら────」


 そうとも……。

 俺が魔王なら!


「───お前らは、……お前は何なんだよぉぉぉぉおおお!!!」


 ドロリと鼻血があふれ出す。

 頭がぼうっとするのは、魔力枯渇の前兆だろう。


 だが、ナセルは止まらない。


「ひぃぃぃ! だ、だから────わ、私じゃない……」

「お前だ」

「ち、違う! 私じゃない! 私は何も悪くない!!」

「お前が悪い」


「だ、だって……!」


 言い訳を必死で考えているアリシア。

 その間にもクレーンは動き、ナセル達を列車砲の砲口へと(・・・・)導いていく。


 そう……。

 クレーンはナセルを砲の前へと送っているのだ。


 眼下では、操作員たちが動き、砲車に乗せた巨弾を砲の後部へ運んでいる。


 レールに沿って砲尾に導くと、装薬と合わせて装填完了。

 列車砲の巨大な尾栓がグルグルと回り、らせん状の溝に沿って閉塞されていく。


 ガシャァン!!



『『『装填完了(ラーデンオケィ)!』』』


 ゴン、ゴン、ゴン…………。


 装填完了と同時に、列車砲の砲身が徐々にせり上がり空を指向する。

 その様はまるでナセルに狙いを付けているようで、砲口から覗く列車砲の砲身内は真っ暗だった。


「アリシア…………。なぜ、俺に黙ってコージと関係をもった?」

 そうだ……。不貞は許される事じゃないが……。


 それでも、

 それでも、だ。


 それでも、例え俺よりもコージを選んだとしても────。


「そ、そんなこと言えるわけ……が!」


「だとしても、だ……。お前が俺に愛想をつかして、コージに惹かれたのなら───」


 ───そう言ってくれ。


 そうして、正式に離縁してコージと所帯を持てばよかったんだ。


「だ、だって! だって!!」


 不貞を楽しんでいたのか?

 間抜けな夫を二人で嘲笑っていたのか?


 そうだとしても、だ。


「俺の家族が皆殺しになり、理解者まで殺される必要が何処にあった? なぁ? 攫われたリズが何をした? なぁ?」


「だか、ら───それは……」


俺は人間(・・・・)だ。お前も人間(・・・・・)だ。コージだって……。ギルドマスターや神官長、国王も人間だ───」


 だからさ。


「───たった一言でも、言葉で伝えればよかったんじゃないか? それをしないがために、こうなった(・・・・・)…………」


 ナセルはサァ──と手を掲げ、燃える王都を指し示す。


「俺が嫌いなんだろ?……そして、お前はコージを愛した───」


 それは俺にとって悔しい事だ。

 男として情けなくもある。


 だけど、


 だけど!!!


「───俺を愛していないッ!…………たった一言、それでよかったんじゃないか?」



 なぁ?!

「アリシアぁぁぁぁぁああああ!!!」


 ナセルのきつい、そして悲しい問いにアリシアは(しばら)(うつむ)いていた。


 だが──────。


 う……。

「────さい。うるさい。うるさい!」


 ガバッと顔を起こしたアリシアが密着した距離でナセルを詰る!


「うるさい! うるさい! うるさい! うるさいッ!!」


 うるさいッつってんだよぉぉおお!!!


「お前が、」

 お前がぁぁあ!!


「──……お前が、一人で朽ち果てていれば(みんッッな)幸せだった!! 王都も燃えず! 教会も繁栄し! ギルドも繁盛する!!」


 お前がぁぁあ!!


 そう、

「──……お前が、黙って殺されていれば、コージと私は幸せな家庭を築き、可愛い子供を産んで、私は聖女となり全てを手に入れられるはずだった!」


 そう、全てを!!!!!


 だから、

「───お前みたいなカスが一人死んだところで、(だーーーれ)も気にしやしないッ! お前の両親? 知るか!」


 お前が、

「──……しつこく、しつこく、しつこく、しつッッこく無様に生恥晒して、なぁぁあにが復讐だッ!! 大隊長? 知った事か!」


 お前が、

「──……甲斐性なしで、大した稼ぎもないクズ冒険者なのが悪い! あのねぇ、コージは勇者よ! 最強で金持ちでかっこよくて、若くて、権力の塊よ! ハッ、リズぅぅ?───んなもん、どーーでもいいわッ!!」


 きゃーーーーはっはっはっはっ!!


「───ははは……言うねぇアリシア」


 言うねぇ、言うねぇ、言うねぇぇえ!


「ぎゃははは! わ、私はお前なんかに屈しない! ふにゃ〇〇野郎が! コージのあれと比べれば、お前なんか小枝みたいなもんよ!」


 ひゃはははははははははは!!!


「うは! はーはははは! 言うねぇ、言うねぇ! 言ってくれるねぇ、アリシアぁぁぁあ! そーーんなにデカイのが好きか?!」


「当ッたり前でしょ! コージのはすッごいんだからぁぁあああ!!」


 はっはっはっはっは!

 はーーーーはっはっはっはっはっはっ!!


 あーはっはっはははははははははははははははははははははははははははははははッ!



 ───ピタリ。



「……そんなお前に、とっておきのプレゼントだ───」


 ゲシッ。


「ひゃ!」


 ナセルの唐突な蹴りを食らうアリシア。


 受け身もとれず、フワリと宙に浮く愛妻(クソビッチ)


 そいつが、高所から落下する恐怖に顔を歪ませるも────。


「───ッッ! きゃ、」




 ……ガン!!




「って、あいッたぁぁあ!……あれ? お、落ちてない?」


「見ろよ。80cm列車砲────……こいつぁ、5t近い砲弾を、遥か彼方の48km先にブチかませるとんでもない代物だ。お前のご要望通りデッカイぜ? どうだ?

 気に入ったか?」


 空を睨む列車砲の砲口に掴まり、辛うじて落下を防いでいるアリシア。


 うーーーーん、そこじゃないんだよ。


「───ふ、ふ、ざけん、なッ!!」

「なんだ? ほら、落ちろ! 中に入れ!」


 ゲシゲシと顔を蹴り飛ばし、砲口に(・・・)落っことそうとナセルも容赦しない。


「ちょ、やめて! ごめんなさいナセル!」

「うるせぇ! とっとと落ちろ!」


 ゲシゲシ!!


「ぜ、全部謝る! ほんとよ! 私が悪かったわ! ね?!」

「知、る、か!! さっさと、落ちろぉぉぉお!」


 おらおらぁ!


「そ、そうよ! ナセル! よ、よりを戻しましょ! ね?」


「い、や、だ」


 聞くに堪えんわッ!


「あ、愛してるのよ! 本当よ! 全部、コージが悪いの! 私はナセル───あなただけを、」

「だったら、さっさと落ちろ! そこにぶち込んでやるぜぇぇ!」


 命乞いか?

 ふざけろッ!!


「ゲフ! うそ! やめ! こ、こんなの無理! は、入……」

「無理だぁ───?? ちがーーーーう、おまえが中に入るんだよ!!」


 ───おらぁぁあ!!


 クレーンの反動を利用してアリシアの鼻っ面に、蹴りをジャストミートさせる!


 パッコォォォォン!


「はぶぁあ!」


 クソビッチ嫁の汚い悲鳴。


 ッッッッ、かぁぁぁぁあああ!!

 こりゃ、気持ちいぃぃぃいいい!


「い、いだ…………あ、」


 ───ズルン。


 なんせ、80cmの砲口だ。

 立つのは無理でも、体を屈めれば余裕で入れる───そして、顔面にケリを喰らったアリシアが体を仰け反らした拍子にスポーンと中へ……。


 そして、


「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……───」


 ゴロンゴロンゴロン……と、クソ嫁が転がっていく姿。


 はっはっは!


 すげぇだろう?

 でっかいだろう!?


「気に入ったかアリシア! コージのよりも遥かになぁぁあ!! はっはっは!」


 あ、


「そうそう、ひとつ言い忘れてたぜ───」


 砲身の底の方で待ち構えている砲弾に頭を強打したのだろう。「ぎゃあああああ!」と悲鳴が聞こえるも、それくらいならこっちの声も届くだろう。


「───アリシア……。テメェとは、」



 そうだ。

 ずっっっっっっっっっと、言いたかった。



        今がそのとき───。



 てめぇとは……。


 そうとも、

「─────てめぇとは離縁する。あばよ、他人さん」



 ま、

 ま───!




「待ってよ、ナセルぅぅぅうううう!!!」

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異世界サルーン
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