第63話「勇者vsナセル(後編)」
───卑怯だろうが! オッサぁぁあン!
「はッッ!!!」
何をふざけたことを。
……卑怯だぁぁあ?!
「───知るかッ、ボケぇぇ!!」
お次はこいつだ!───ズチャキッッ!
脇に吊るした、バカ長い二挺のライフル!
「何度も同じ手を食うかッッ! 豆鉄砲なんざ、この伝説の盾で────」
コージの憤懣など完全無視。
ナセルは「おらぁぁあ!」と気合い一閃!──二手に構えたのはPzb39が二挺ッ!
再装填は手間だが、一発撃つだけならこいつで十分!!
防げるものなら、
「─────防いでみろぉお!!」
発射ッッ!!
───ズッ、ズガァァァン!!
超至近距離で発射される対戦車ライフル。
そいつの弾頭は7.92mmとMG42のそれと同じだが、発射する薬量が桁違い!
なんせ、本来は13mm機関砲弾を撃つ薬莢に詰まった炸薬で、この小さな弾を飛ばすのだ。
その貫通力はすさまじく、
そしてパンチ力も、また凄まじい!!
──そいつが2発同時着弾ッッ!
コージの持つ盾にぶち当たると、バギャアァァァァァァアン! とドラでも鳴らしたかのような派手な音を立ててぶっ飛ばす。
貫通しないのは流石に伝説装備だが──。
着弾の衝撃までは消せずに、コージの腕をもぎ取らんばかりに、盛大なダブルパンチをお見舞いした。
メキャ……。
「──うぎゃああああああ!! う、腕がぁぁぁあああ!!」
ボキィ、メシメシメシ……! という音がしたところを見るに、直撃を受けてへし折れたらしい。
「──ぎゃぁぁぁぁぁああ!!」
はっはっはっはっ!!──いい気味だぜ!
「い、いでぇぇええ! この野郎ぅぅう!」
懐から試験管のような物を取り出すと、中身を煽るコージ。
む!? この匂い────。
「ハイポーションか!」
「エクストラポーションだよ!!」
超高価な回復アイテムを呷り、あっという間に傷を治すコージ。
メリメリ……と音を立てて腕が元に戻っていき、あっという間に全回復。
そのまま両手で聖剣を構えると────。
「俺は勇者だぞぉお!!」
「知っとるわぁぁあ!!」
こぉぉぉぉの間男が──!!
だったら、こいつを喰らえぇぇぇえ!!
背に担っていたデッカイ筒を……デンッ!──と構えるナセル。
まるでストーブの煙突のようなもので、──そのデッッッカイ筒の口径は88mm。
筒の左側には発射ガスから射手を護る防盾付き──────。
そうとも、コイツは────!!
ば、
「バズーカぁぁあ!?」
変な声を上げて目を見開くコージ。
ちげぇ……、
聖剣をナセルに叩きつけようと振りかぶっているコージの前に突き出されたのは、88mmのロケット弾を発射する、対戦車兵器──。
──断じて、バズーカじゃねぇ!!
「パンツァーシュレックだよッ!!!」
死ね。クソ勇者ッ。
発射──────────!!
「た、タンマ──」
驚愕に目を見開く勇者コージの鼻先に、────ズバァァァアアン!! とロケットモーターを唸らせて88mm対戦車ロケットがスッ飛んでいく。
何がタンマじゃ!
タンマするわけねぇだろ、ボケ!!
───ズガァァァアアアン!!!
と、命中したロケット弾が一瞬でコージを焼き尽くし四散させる。
余りにも至近距離なものだから。
すぐには信管が作動せず、コージの腹に突き刺さった砲弾が飛翔していく様まで、まざまざと見えた。
「ほげぇぇぇええええええ!!!」とか叫びながら88mmロケット弾に打ち上げられて、上空で信管が作動ッ。
チュドォォオオオン!──と、空中で爆散し、焼き尽くされたコージ。
その四肢がバラバラと吹っ飛んでいき。
良く焼けた肉がベチャベチャと周囲に降り注いだ。
「──は。汚ぇシャワーだぜ」