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第51話「戦闘爆撃機」


 ──これは家族の!

   ──大隊長の!


     ──そして、リズの分だッ!!


 気合いを籠めるナセル。


 ────はぁぁああああ!!!

「思いしれぇぇええええええええ!!!」


 もはや剣など使わない。

 ドイツ軍召喚士になって以来ナセルの武器は銃のみ。

 だが、撃って殺すなど生温いッ!


 銃ってのはこうやって使うんだよぉぉお!

 延長したストックがギラリと輝き、国王の股間を狙う。


「ぶひぃ!? やめろぉおおお!!」

 やめるかぁぁああ!!!


 ───潰れろこのボケぇええ!!


 振り下ろしたMP40が、奴のぉぉお股間目掛けてぇぇえ────「陛下ぁぁあ!!」


 鋭い叫びがナセルと国王の間に割ってはいる。


 ──ぬぅぅッッ!?


 ボロボロになった騎馬戦車が猛然と突っ込んできた。


『突撃破砕射撃────ッてぇええ!』


 そこに、銃撃が集中するも──強引に乱入してくる騎馬戦車が一台。

 車輪がすっ飛び、もはや橇のように走るのみだが、戦意は失せていないようだ。


(ちぃ……。まだ生き残りがいたか!?)


 だが、そいつも地雷原に踏み込み、国王を助けようとしたのが運の尽き。

 地雷原に踏み込んだ瞬間────ズドォォオオン!


 月の果てまで吹っ飛んでいきそうな勢いで爆散する。


 クッソ……!


 その破片がナセル達に降り注ぎ──……一瞬だけ国王から目を離してしまった。


(しまった!)


 マズイと思ったときには、予想通りの光景が。


 ────チィ!!!!


 あれ程、ボッコボコにしたはずの国王が、顔面崩壊のまま「あーばーよー!」と言わんばかりに脱兎のごとく逃げ出していきやがった。


 おいおいおいおいおい、国王さんよ。



 つーーーーか(はえ)ぇぇぇな、おい!?


 

 神業の如く、ヒラリヒラリと地雷原を走り抜けると、残っていた騎馬戦車に────飛び乗る。

 つーか、御者を蹴り落として奪い取りやがった。


 その間ほんの数秒のこと。

 ナセルをして呆気にとられる始末。


 マジかよあの野郎……。


「いいいいい、異端者ごときの打撃がワシに通じると思うてか!」

 顔面ボッコボコで(のたま)う国王。


 全然説得力ないぞ、おい。


「──今に見ておれ! 今度こそ数千の我が精鋭軍が貴様をギッタギタにしてくれるわ」

 ギャハハハ! と下品に笑い続ける国王は、背中を見せて一目散に城へと逃げ戻ろうとする──。

 するけどな……。


 ──はっはっは。


 いーーーーーー度胸じゃねぇか?

 お前の軍はもう全滅だぜぇ。


 そんな、ボロの騎馬戦車で今さら逃げてどうなる?


 城に逃げ帰って、残った雑魚兵士でガタガタ震えて籠城か?

 それともなんだ?

 数千の精鋭とやらで対抗してみるか?


「はっはっはっはっはっは!!」




 ──やってみろ!!!!!




 あーはははははははははは!!


 ナセルは笑う。

 壊れた様に笑う。


「まだだ、まだ殺さんよ。殺せねぇよなぁぁあ!!」


 そうとも、俺の愛しい最後の肉親の居場所を聞き出すまでは殺せないよ。

 殺せるものか。

 だけど、とことんまで悪あがきするなら、お前の持てるモノ全てを破壊しなければならないよなー。


 まずは、お前の大事な大事な、

「────城からぶっ壊してやろうじゃないか!!」


 いでよ──ドイツ軍!!



「フォッケウルフ────召喚ッ!!」



 シュパパァアア!!


 ナセルの呼びかけに応じて、空に大型の召喚魔法陣が現れる。

 途端にけたたましいエンジン音がこだましたかと思うと、獰猛な怪鳥を思わせる風貌の航空機が出現した!


 メッサーシュミットよりもエンジンが大きく太い。それは、いかにも頑丈そうな風貌だった。


 その名もフォッケウルフ!!


ドイツ軍Lv5:

フォッケウルフFw190F-8(戦闘爆撃機)


スキル:21cm対戦車ロケット弾×14、

    28cm爆裂ロケット弾×6、

    機首13mm機関砲、

    無線中継


備 考:戦闘爆撃機(ヤーボ)型のフォッケウルフ。

    ──F型。


    A型、D型の戦闘機型よりも、

    より低高度での爆撃任務に特化。

    長距離から近距離までカバーし、

    散布界の広い範囲を空爆可能。


    また、空戦能力も向上。


 ※ ※


 キラキラと召喚光を纏いながら大空に舞うのは巨大な航空機。


 これこそ──────!

 大型の空冷エンジンがいかにも頑丈そうなイメージを持たせる、空の────低空の王者だ!!


 ──ヴォォォオオオオオオオン!!

  ──ヴォォォオオオオオオオン!!

   ──ヴォォォオオオオオオオン!!

    ──ヴォォォオオオオオオオン!!


 同時に出現した複数の機体。

 四機の編隊(シュバルム)がグルグルと絡み合いながら空を圧倒している。

 その様は、さながらじゃれ合う海獣のようにも見えた。

 


 ──グゥゥウウヴヴヴォォオオオオン!!



 唸るエンジン!

 力強いBMW801型エンジンの1700馬力が翼に連ねた重武装をものともせずに、空を強引に駆け巡るパワーを与える。


 その4機の一個小隊(シュバルム)が、我が物顔で空を舞い狂うと、空中で先に召喚していた航空機とすれ違う。

 

 ナセルが空を見上げると、そのまま一航過するフォッケウルフを見送る。


(行けッッ────ドイツ軍!)


 フォッケウルフを召喚したことで、先の航空支援任務としていたメッサーシュミット(戦闘機)スツーカ(爆撃機)の召喚を解除した。

 すると、あとは任せたとばかりに、キラキラと召喚光を霧散させながら、メッサーシュミット達が彼らの世界へと還っていく。


 ──ありがとう。


 ナセルの声にならないお礼は空に溶けていき、代わりに出現したフォッケウルフが超低空を舐める様に飛んでいく。


 そして、ナセルの頭上で一度だけ見事な編隊飛行のまま宙がえりして見せると、あとは合図を待つ猟犬のように上空を遷移していた。


 ああ、コイツらの強さが分かる。


 この世界で最強の火力を誇る戦闘爆撃機(ヤーボ)の威力が分かる────。



「さぁ、行けッ! 奴らに容赦するな!!」



 この国を!

 その軍を!

 あの城を!


 俺の怨敵を──────……。



「────ぶっとばせぇぇえ!!」



 無線にがなり立てると、上空のフォッケウルフは我が意を得たりとばかりに、翼を振って(バンクして)了解の合図。


 二機編隊(ロッテ)に分かれると、地上を無様に逃げ回る国王にあっという間に追いつく。

 そして、鎌首をもたげる蛇のように、ククンと動かした機首を僅かに下げる。


「ぶげ!? な、何じゃありゃ!?」


 腫れ上がった顔面でよく見えるなと感心するナセル。

 国王はといえば、器用に手綱を握ったまま振り返り、上空にあらわれたフォッケウルフを驚愕の眼差しで見ていた。


「はっはっは! そいつは、お前にとっての悪夢だよ!!」


 ナセルの大笑いを背後に受けつつ、国王は僅かばかりの騎馬戦車と数騎の騎兵を引き連れ、命からがらと言った様子で戦場から離脱する。


 だが!!

 そこにつっかけるフォッケウルフの攻撃!


(……安心しな)

 ──ちゃーーーんと、国王だけは殺さないでおいてやるからよ!!


撃てぇぇええ(シィィイセェン)!!」


 ナセルの命令を受けたフォッケウルフは、翼に吊るしたロケット弾を一斉に発射!!


 ブパパパッパパパパン!!!


 まるで翼が燃え上がったかのように黒煙と炎が噴き上がる。

 それはそれは、物凄い炎の尾を引きながら、真っ直ぐに国王たち目掛けて飛ぶ。

 フォッケウルフが装備する対戦車ロケット弾の連続発射だッ!!


 シュゴゴゴゴオオオオオオ!!


 無数のロケット弾が、高速で騎馬戦車と騎兵の残党に突っ込むと────……!


「ぶひぃぃいいい!!」


 国王の叫びをかき消す様に大爆発!!


 ドォン!!!

 ドドドドドドドドドオン!!


 わざと着弾点をずらしたロケット弾攻撃が、国王の周囲にいた騎馬戦車と騎兵を焼いていく。


 あるものは破片に切り裂かれ。

 あるものは爆炎で黒焦げになり。

 あるものは爆音に驚く騎馬が迷走し衝突。

 あるものは直撃を受けてこの世から蒸発。


 あっという間に護衛達を全て消し去った。


「ひぃぃぃいいいい!!」


 一応は魔法防御でもしていたのだろう。

 魔術師同乗の国王がのるボロボロの騎馬戦車はなんとか爆炎を脱し、一台だけで城に逃げ戻る。


 ぶりゅりゅりゅりゅ────!!

「はぶ、はぶ、はぶぁぁああ!!!」


 国王は────もはや、人目もはばからず盛大に脱糞。

 履物の後部がもっさりと盛り上がっているが、そんなことを気にしている余裕もない。


 はぶ、はぶ、

「早く! 速く走れぇぇええ!!」


 バシバシと鞭うち馬を駆るも、すでに限界速度。ぜいぜいと馬が喘いでいるも、あと僅かとばかりに鞭を入れる。


 そして、それをまんじりと見送るナセルではない。


 もはや、追い詰めるのみ。


 兵はなく、

 守りもなく、

 人もいない!


 あとは復讐対象たる国王がいるだけだ。


「──追えぇぇえ!!」


 すかさずナセルはドイツ軍に追撃を指示。

 パンター戦車を先頭に、陣地から飛び出してきた擲弾兵とⅣ号戦車を背後に突撃を開始。


 国王はと言えば命からがらと言った様子で城門を潜り抜けるも、上空のフォッケウルフにはそんなもん関係ない。


 さらには、ナセル率いる地上のドイツ軍が猛スピードで追ってくる。


「ぬぐぁああああ!! は、橋を落とせ! は、はやくぅぅうう!」


 ガラガラガラ!!──と、猛スピードで跳ね橋を渡り切ると、限界を迎えた馬がここでへたり込み、騎馬戦車が横転する。


「へぶ!! ……つつつ──」


 顔面を強打しつつも起き上がり、用済みになった騎馬戦車を乗り捨てると、同乗していた弓手と魔術師の尻を蹴飛ばして跳ね橋を操作させる。


 もはや、王城に残っているのは僅かばかりの留守番兵と重傷を負った兵ばかりだ。


 そして、先ほどまでの戦闘で国王率いる最後の戦闘部隊が完敗したのを見て僅かばかりの留守番兵も逃げ散っていた。


 おそらく、今現在も残る兵力は片手で数えるほどしかいないのではないだろうか?


 だが、それにも関わらず国王は騎馬戦車に同乗していた最後の2名を跳ね橋操作に送り出すと、迫りくるドイツ軍を前にガタガタと震えるのみ。


 もはや、護りは城壁と堀しか残っていない。

 それすらも突破されそうになっている。


「うひぃ!? ぶひぃ!!! は、はやく跳ね橋を落とせ! はやーーーーく!!」


 だが、無慈悲に響き渡る履帯の音。

 それは、堀と城壁に反射しこだますと、一層大きく聞こえて恐怖心を煽っていく。


 ──ギャラギャラギャラ!!


「ははははははは!!」

 わはははははは!!!


 国王の眼前に迫りくるのは、ナセルを先頭に、巨大な戦車と黒衣の軍勢!


 そいつらが今にも国王の懐へ迫るも、上空では怪鳥の如きフォッケウルフがブンブンと飛び回っているのだから迂闊に城門の下から抜け出せない。


「ぶひ!? ぶひ! く、来るな、来るな」

 来るなーーーーーーーーーー!!!


 ────ぶひぃぃぃぃいいい!!!


 そうこうしているうちに、上空のフォッケウルフが蹂躙を開始した。


「いいぞ! ブチカマセ!!」

 ナセルの叫びに容赦はない。あとは残党が僅かだけ。

 敢えて言おう────カスであると!!


 ギャガガガガガガッガガ!!


 フォッケウルフが重低音を響かせていたかと思うと、腹に響く連続射撃。

 機首の13mm機関砲を城中に浴びせかける。


 もともと砲兵の射撃でボッコボコになった王城をさらに耕していき、綺麗な庭園も東屋も、馬を囲う厩舎も使用人の平屋建ても穴だらけになり倒壊していく。


 その様子に、隠れ潜んでいた残党がバラバラと建物から飛び出して来る。

 手に手に弓を構えて盛んに上空のフォッケウルフに撃ちかけるも──効くわけも届くわけもなく、あっという間に銃弾に引き裂かれて骸を曝すのみ。


 もはやただの残党狩り……。

 いや、ただの屠殺だ。


 ──ブパパパッパパパパン!!!


 大量のロケット弾は王城の本丸を除いて各種施設をボッコボコに叩いていく。


 ズドン! ズドン! ズドン!!


 城内の神殿分所、臣下の家屋、食糧庫、武器庫、兵舎、倉庫群と次々に爆発炎上。

 それらを正確無比にぶっ飛ばしていくフォッケウルフだが、なぜか王城そのもの──本丸には手を付けない。


 その様子を茫然と見つける国王に向かっていよいよナセル率いるドイツ軍が目前に迫ってきた。


 ギャラギャラギャラギャラ!!


「さぁ、お前の大事な大事なお城が台無しだ。お次はどうする?」

「ひぃぃいい!?」


 もはや虚勢すら張れなくなった国王は城門の下で腰を抜かしている。


 あとは、堀とそこにかかる跳ね橋だけ!

 それを挟んで別れた二人だが────。


 バキィイイン! と大きな破壊音が響く。

 その音に反射的に身を固くしたのはナセル。

 一方、ナセルとは反対に国王は喜々とした表情だ。


「何の音────」

「間に合ったか!」


 国王の喜色溢れる声音に合わせる様に、ガラガラガラ──! と、跳ね橋を支えていた鎖が弾けて堀に落下していく。


「き、ききき緊急時の跳ね橋破壊装置じゃ!──がははははは! こ、これで手も足も出せまい!」


 冷や汗ダラダラで国王はふんぞり返る。

 尻はもっさり、履き物の隙間から足にまとわりつく茶色のナニか。

 その目の前で跳ね橋が傾いでいき、ドボーーン! と堀の中に没していった。


 これで、王城に渡る手段はなくなったわけだが……。

「ハッ……笑わせてくれる。こんなチンケな堀一つで逃げ切ったつもりか?」


 ギャラギャギャラ……!


 パンター戦車で城門前まで到達したナセル。

 そこで、堀を挟んで国王と向かい合うと。


「くくく……! 単純だがそう簡単に越えられまいて、貴様ら異端者どもが橋を作る間に、我が精鋭が──」


 パァン!


「ひょ!?」


 グダグダと能書きを垂れ始めた国王の繰り言など聞いていられないとばかりに、拳銃で一発足元に撃ち込んでやった。


「オウチに帰ってガタガタ震えていろ……テメェは簡単には殺さねぇ──」


 パン、パンパン!!


 足元を狙って連射。銃の存在は知らずとも足元で爆ぜる銃弾に恐怖を感じないわけがない。


 ついには、「ひぇぇぇえ!」とか叫びながら一目散に逃げ出した国王。



 その様子をを冷淡に見つめるナセルは、






「その汚ぇケツを磨いて待ってろ────」


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