表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/89

第36話「王国の反撃(後編)」




 ──聞け!!

 不甲斐ない貴様らに代わり、国王自ら督戦に参った!!


 ドーーーーーン! と効果音付きで怒鳴ると、ホール内は一瞬静まり返るも、ヒソヒソから……ザワザワ……。

 そして、……うおぉぉぉ!!


 うおおッ!


 …………。


 ……。


 う、

 うおーーーーーーー!!


 うおおおおおおおおお!


 うおおおおおおおおおおお!!

 うおおおおおおおおおおお!!


 あっという間にホール内は怒号に包まれた。


 そうとも、国王だ。

 国王の御親征だ!


 これほど士気をあげるものはない。


 なんせあっという間に蹂躙された近衛兵団。

 そして、危機にさらされている王城の臣下たち。


 彼、彼女らは皆、意気をあげ、息を吹き返す。


 ──国王だ!

 ──国王が来てくれた!


 あの悪魔の軍勢と戦うために来てくれた!

 勇者の末裔足る国王が御自ら戦うと言われる!


 陛下ッ!


 陛下ッ!!


 陛下! 陛下! 陛下!


「王国────万歳!!」

「「「ばんざーーーいい!!」」」


 現金なもので、さっきまで悲痛に表情を曇らせていた兵が沸き返る。

 女中も典医も大臣連中も沸き返る。


 国王が来れば勝てる!

 勇者の末裔なら勝てる!

 この国一番の人間が来たのだから勝てる!


 国は救われる──。


 なんかズボンが今朝見たのと違うけど、勝てる!!


 臣下の顔を満足気に見渡す国王。

 彼は鷹揚に頷くと、

「よし! さしあたって近衛兵団を再編成する! まずは軽傷者は兵団に即刻復帰すること。そして、重傷者は邪魔だ。今すぐ城から出て奥の兵舎へと移動せよ」


 え? へ?


「重傷者の介助はない。自分で行け! ──城を汚すな!!」


 は?


「他に手隙のもの! 女中は補助兵として槍、弓矢、替えの剣をもって後方に控えよ! 散らばった装備をさっさと回収してこい、(ナァウ)!」


 は? ま、マジ?


「大臣、料理番、馬子、騎士見習い、…………何をやっとる!? 全員さっさと剣を持てぇぇぇえ!!」


 ひ、ひぃぃぃい!!


 突如として人が変貌したように非道な命令をバンバン出す国王。それをたしなめるべき大臣連中も兵になれという。


 実際、注進しようとした大臣が国王からの見事なアッパーカットを喰らって舌を噛んでピクピクしている始末。


 他に意見できそうな近衛兵団長も負傷の身体を推して逃散間近の近衛兵の生き残りと軽傷者を再編成中。兵をまとめるのが精一杯でそれどころではない。


 だが一概に間違いとも言えない。

 国王が言うように、反撃するには確かに兵力不足ではある。


 幸いにも未だに街から招集に遅れた兵が散発的に到着しているため、正規兵だけでもソコソコ(さま)にはなるくらい集まりそうではあった。


「全戦力を出せ! 出し惜しみする時ではない!」


 そう、出し惜しみはありえない。


 軍事においては、ついつい今後のことや追撃を考えて────予備兵力を残して置きたいという基本的な考え方をしてしまう。


 いわゆる教科書的な考えでは、予備兵力の確保は軍事の基本なのだ。

 そのため、並みの指揮官であれば兵力を出し惜しみするだろう。

 だが、今から部隊を指揮しようとする国王からすれば、それは下策でしかない。


 前線から遠く離れた王都とはいえ、現在は首都を正体不明の敵集団が攻撃しているのだ。

 兵力を出し惜しみして、この連中に負けた場合──最悪の場合、国が亡びる。

 

 だから、全兵力を出すのだ。

 文字通り最後の一兵まで!


「おい、重装騎兵(カタフラクト)も出せ! 騎馬戦車(チャリオット)もだ!」


 ヨタヨタと慣れない槍を抱えた大臣の一人を捕まえると指示を出す。

 すでに兵らは動き始めており、重傷者も渋々と這うようにして王城を出ていた。

 そして、集まった兵は王城内の武器庫を総ざらいして、豪華な装備や魔法装備すら惜しげもなく装備させていく。

 それらの兵力は分散しつつも、集合し次第に兵力を増大させつつあった。

 

 彼らは最終的には王城内ではなく、城壁とその後方にある曲輪(くるわ)につくことになるだろう。


 兵を溜めるなら、そこしかない。


 王城は防御拠点ではない。ここは、政治の拠点であり、国王の家なのだ。

 やむを得ず戦うはいえ、なるべくなら破壊に巻き込みたくない。だから打ってでるのだ!


 防御に使われたり野戦病院にされてたまるか。


 どのみち、平地に立つ城ゆえ、防御力は弱い。

 せいぜい広めに掘られた堀と高い城壁に頼った戦いしかできないがそれで十分だ。


「ワシの護衛に一個小隊の精兵を! それと敵は大軍だぞ! 防御兵器を総ざらいして対抗する! 兵器庫を空にせよ!」


 は。はぃ!!


 誰が答えたか分からないが、大臣のうち何人かが武器庫に向かって走って行く。

 一人で良いのだが、これ幸いとばかりに前線から遠ざかるつもりなのだろう。


(馬鹿め! あとで粛清してやる)


 それでも、兵が動いて防御準備が整うならそれでいい。

 近衛兵団長もようやく気力が戻って来たのか、今度は重装騎兵と騎馬戦車の乗員を選別している。


 騎馬は技術が必要だ。誰でも乗れるものではない。


 かき集めて重装騎兵が100騎いればよいほうだ。騎馬戦車も50~100台準備できれば上等だろう。


 他にも空中機動戦力もあるのだが、今は準備中。

 即応兵力は……事情があって動かせない。


 いずれにしても、彼らもいざというときに投入するつもりだ。


「くそ! 勇者コージめ! 何をやっている!」

 早く来いッ! たまには働けや!!


 諸々の不手際や、この一連の騒動も全部が全部コージに起因する。




 あの疫病神め……!

 ビッチ嫁と乳繰り合ってないでさっさと来い!!






 ワシを護れぇぇぇえ!




───────────────

 両軍戦力

───────────────


 ※ 王国軍戦力 ※

 国王:1名

 近衛兵団長:1名

 近衛兵団歩兵:約1000名

(内、300名は軽症者、300名は王城勤務者)

 近衛兵団重装騎兵(カタフラクト):約100騎

 近衛兵団騎馬戦車(チャリオット):約50台


 ◯支援火器

 城壁上弓兵隊:約100名

 移動式大型重弩(バリスタ):20基

 移動式投石器(カタパルト):10基

 

 ◯予備(準備中)

 空中機動戦力:怪鳥及び飛竜:約50匹



 ※ ドイツ軍 ※

 ナセル・バージニア:1名

 ドイツ軍装甲擲弾兵中隊:一個

 (内、指揮官用装甲車1両、ハーフトラック9両)

 ドイツ軍戦車小隊:一個

 (内、Ⅳ号戦車H型:3両)

 ドイツ軍工兵小隊:一個

 (内、工兵戦闘車:3両)

 ドイツ軍◯◯小隊:一個

 (教会跡地に展開中)


 ◯ドイツ空軍

 戦闘機(メッセーシュミット)一個小隊(シュバルム)

 (内、Bf109G:4機【機銃弾残り少】)

 急降下爆撃機(スツーカ)一個小隊(ケッテ)

 (内、Ju87D:3機【爆弾無、機銃弾残り少】)

 地上誘導員(サイドカー装備)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お読みいただき、ありがとうございます!


⇧ の『☆☆☆☆☆』評価欄 ⇧にて


『★×5個』で、応援いただけると嬉しいです!



新作だよ!
⬇️ 新作 ⬇️

異世界サルーン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ