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第34話「戦車よ、突き進めッ!」


 ──チュバァァァアアアアアンン!!!!


 大爆発のあと、上空にいたるまで様々なものが巻き上げられている。

 そのあとに続く衝撃波が街全体を揺るがした。



 ビリビリビリビリ……ッ!!



「ははは、スゲーな……ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)ってのは」

 どうも集結中だったのは近衛兵団らしい。


 今まさに、何百mも吹っ飛ばされてきたと思しき完全武装の兵の残骸。

 その残骸を改めれば、その装備からも近衛兵団であるとあたりがつく。


 ……それにしても酷いありさまだ。


 大型爆弾の直撃で消滅したのはまだマシな方だろう。

 至近弾によって吹っ飛ばされた連中はもはや語るまでもない……。

 

 上空で確認中のBf109G(戦闘機)からもその様子は見えたらしく、空軍士官から敵の壊滅を告げられた。


 ザ……。

《敵勢力の壊滅を確認──続けて、航空戦力の警戒に移ります》


「あ、あぁ……。やってくれ」

 ヘッドセットを通じて無線に告げるも、この顔を見ずに話す感覚には未だに慣れない。

 無線手は何も言わずとも空軍士官と連携して無線の中継をしてくれている。


「……それにしても『ドイツ軍』っての凄まじいな……」


 召喚Lv4でこれだ。

 Lv5、6ならどうなるか……。


 ドラゴンLvが最高値に達すれば神龍が呼べるなんていう伝説もあったが、『ドイツ軍』が最高Lvに達したら何を召喚するのだろうか……?


 それは容易に神をも超えてしまう気がする。


 サイド―カー上の空軍士官がナセルに報告した。

『──続報。敵の逃散を確認。モラルブレイク中です』


「ほう?」


 逃散……。軍隊において士気が保てなかった場合に起こる脱走だ。

 それも組織的にではなく、統制を失った兵が各個の判断で────いや、ただ烏合の衆と化して好き勝手に逃げ回るのだ。


 もはや軍隊ではない。


「近衛兵団も落ちたものだな──」


 これで大きな障害はなくなったあとは残敵が少々いる程度だろうが……。


 ならば無人の野を行くが如し、

 集結し、ハーフトラックに乗車を終えたドイツ軍は引き絞られた矢と同じだ。

 

 あとはナセルが号令を出せば、彼らは王都を突っ切り、一気に王城を攻撃してくれることだろう。

 そう、あとは行くのみ。


 一度、戦車のキューポラ上から居並ぶ車両とそこに乗車中のドイツ軍の顔を見渡す。


 誰も彼も肝の据わった顔をしている。

 ナセルをして実戦経験もあり、死にかけたような目にもあっているが……。

 

 このドイツ軍の目はどうだ?

 まるで、歴戦の勇士────。いや、そのレベルではない。絶望と勝利を繰り返してきた者たちの目だ。

 一体、彼らのいた世界ではどれほどの戦争が?

 それとも、生まれつきなのだろうか……。


 ドルルルルルルル……。


 いつのまにか、搭乗するⅣ号戦車のエンジンに火がともり、まるでせかすようにアイドリングを始めた。

 チラリと砲塔を覗き込むと、見えにくい角度でありながらも中の乗員4人がナセルを見上げており、目が合うと軽く頷いてきた。


 いけ──。そう言われた気がして……、


 あぁ、そうとも。

 ケリを付けようじゃないか。


 国の核心たる国王……その小汚い首。もらい受ける!!!!




 すぅぅぅぅ──。

戦車、前へ(パンツァー フォー)!!」




 ドルルルルルン!!!!


 ギャラ……。

 ギャラララ……!


 ギャラギャラギャラ……!!


 ナセルの声を聞いた途端、我が愛しい召喚獣は頼もしい咆哮を上げる。


 戦車は向きを変えるべく、その場で超信地旋回。左右のキャタピラをブッ違いに動かして前後を入れ替えると背後にハーフトラックを引き連れて前を向く。


行くぞ(ロス ウン )お前ら(ジュ スチィン)!! 気合入れ(ブレブ イン)て掛かれ( デ ロフト)!」


『『『了解、指揮官どの(ヤー コマンデン)!』』』


 いざかん!!!

 ──ドイツ軍の……鉄火(てっか)を教えてやるっ!


 ギャラギャラギャラ!!


 戦闘を切るのは陸の王者、鉄の艨艟たち。

 ゴゴゴゴゴと重低音を上げる──ナセルの搭乗する戦車小隊のⅣ号戦車H型3両!!


 それに追従するのは『中隊長』率いる装甲擲弾兵中隊!

 彼らも、順次悌隊ごとに前進するのだ。歩兵のハーフトラックに工兵の戦闘工兵車が追従。



 まずは戦車、そして歩兵と工兵だ。



 盛大な音を立てて驀進するドイツ軍の部隊を見ていれば何の心配もなかった。


軍歌(ズィガン)!!』

 突然、中隊長が大声を発する。

 彼は座乗する装甲車の天板をはね上げて一人腕を組んでいる。


 その装甲車には、ラッパのお化けの様なものとクルクルと円盤を回す妙な機械がセッティングされていた。その機械をチョロっと触れると。


 ~♪


 ~~~♪


「嵐が~~」♪

「灼熱が~~」♪


 ──と流れる音楽。


~~♪


~♪


 軽快な音楽が流れ始め、

 それに合せて、今まで静かに待機していた兵が突然、一人……また一人と声を揃え始める。 


 戦車よ! ~♪ 征け! ~♪

 征けよ! ~♪ 戦車! ~♪


 と謳い始めるドイツ兵達。

 彼らはハーフトラック上で立ち上がり、銃を車体の側面に叩きつけるようにして音頭を取り始める。

 兵たちの即席の打楽器だ。


 ガン♪ ガンッ♪


 ~~~♪


 ~~♪


 ガン♪ ガンガンガッガン♪ ッガッガッガン♪


 知らず知らずにナセルも鼻歌を歌い彼らに調子を合わせる。


 あぁ、なんという歌か。

 あぁ、愛しき鉄の申し子たちよ!


 征け!

 ゆけぇ!


『『『戦車よ、(パンツァー )逝け、突き進めッ(ウィンダヒィン)!』』』♪♪



 ギャラララララララララララララララ!!



 高らかに謳うドイツ軍とキューポラ上に足をかけて腕を突き上げるナセル。

 彼らはもはや無敵だ────。


 阻むものなど、今の王都にありはしない。


 征け、戦車よ!!

 俺の復讐の業火の代弁者よ!!



 ナセルは叫ぶ、

突撃ぃぃぃぃぃ(アングリィィィフ)!!!」



 石畳を砕かんばかりの轟音を立てて疾駆する戦車とハーフトラックの群れは、上空を乱舞するメッサーシュミットに支援されつつ王都を驀進していった。


 不安そうに家々の窓から覗く住民の目など知ったことか。


 流れ弾に家屋が燃え上がろうと、

 大型爆弾の衝撃波で窓が砕け散ろうが、

 降り注ぐ近衛兵団の中に肉親が居たとして──それがどうした!


 お前等も罪だ。


 お前等も同罪だ。


 お前等も大罪人だ。

 

 俺を笑い、家族の死を眺め、リズが喚く様を楽しみ、焼かれた大隊長に高揚した。


 知らない?

 関係ない?

 何もしていない?

 


 そうだ!!!



 知らなかった!! 俺と、俺の愛すべき人々の無実を!!

 関係なかった!! 俺と、俺の愛すべき人々が貶められても!!

 何もしなかった! 俺と、俺の愛すべき人々が地獄に落ちていても!!



 ならば、

 流れ弾は甘んじて受けろ!

 爆風に焼かれろ!!

 吹っ飛ばされた兵士に家族がいたとして、それは皆同じだ!!!





「俺を────俺たちを舐めるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」






 全部、ぶっ飛ばしてやるッ!




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