第33話「ルフトヴァッフェ」
──総員乗車ぁぁぁああ!!!
『『『了解!!』』』
『中隊長』の号令に従い、整列していた兵が一斉に散る。
彼等は武装を手に、ハーフトラックの後部扉から続々と搭乗するとエンジン音も高らかに準備完了を告げる。
『急げッ。報告!』
『1号車準備よしッ!』
『2号車異常なし。準備完了』
『3号車も異常なしッ。いつでも行けます』
『『『準備よし!』』』
ナセルにかわり報告をうけた『中隊長』が指揮を代行する。
なるほど、少数編成ならともかく、中隊規模になると確かに専門の指揮官が必要だ。
そのための自動召喚らしい。
おそらく、今後も大規模召喚をした際には、魔力の許す限り彼──『中隊長』タイプと同様の召喚獣が現れる気がする。
『よし。──これより第一目標……、王城の確保のため前進する』
『『『了解』』』
『敵は未だに我々に対応できていない。王城前を確保しだい指揮官を呼ぶ、その後は一気に城塞まで前進。各部隊遅れるなよ』
『『『了解!!』』』
所要の指示を終えたらしい『中隊長』がナセルに視線をよこす。
『準備よし。指揮官殿! 展開中の空軍から伝達』
ナセルの装着しているヘッドセットからは、彼らの通信が次々に飛び込んできて目まぐるしい。
今も、まさに上空を遷移しているメッサーシュミットかららしき通信が飛び込んでくる。
ザ……。
《上空偵察完了! 敵兵力の集結を確認────地上掃射、もしくは急降下爆撃の必要性を認む》
んん??
急降下爆撃機?
「りょ、了解した!」
えっと、
…………これかッ!
ブゥン、
ドイツ軍Lv4:ユンカースJu87D
ス キ ル:急降下爆撃500kg爆弾×2、
緩降下爆撃1200kg、
20mm機関砲、無線中継
備 考:急降下爆撃機スツーカ。D型。
性能向上型で急降下爆撃により、
ピンポイント爆撃が可能。
※ ※ ※:
ドイツ軍Lv0→ドイツ軍歩兵1940年国防軍型
Lv1→ドイツ軍歩兵分隊1940年国防軍型、
ドイツ軍工兵班1940年国防軍型、
Ⅰ号戦車B型、
Lv2→ドイツ軍歩兵小隊1940年国防軍型、
ドイツ軍工兵分隊
Ⅱ号戦車C型、
R12サイドカーMG34装備
Lv3→ドイツ軍歩兵小隊1942年自動車化
※(ハーフトラック装備)
ドイツ軍工兵分隊1942年自動車化
※(3tトラック装備)
Ⅲ号戦車M型
メッサーシュミットBf109G
Lv4→ドイツ軍装甲擲弾兵小隊1943年型
※(ハーフトラック装備)
ドイツ軍工兵分隊1943年型
※(工兵戦闘車装備)
ドイツ軍砲兵小隊
※(軽榴弾砲装備)
Ⅳ号戦車H型、
ユンカースJu87D
(次)Lv5→ドイツ軍装甲擲弾兵小隊1944年型
※(ハーフトラック装備)
ドイツ軍工兵分隊1944年
※火焔放射戦車装備
ドイツ軍砲兵一個小隊重榴弾砲装備
パンター戦車G型
フォッケウルフFw190F
Lv6→????
Lv7→????
Lv8→????
Lv完→????
「出でよッ! スツーカ────!!」
魔力行使、魔法陣3個分!!
────ブワッ!!
空に浮かんだ魔法陣から、3機のJu87Dが出現しナセルにバンクを振る。
と、同時に──ナセルのそばにサイドカーに乗った人物が現れた。
「なっ!?」
彼は水色の明るい制服を着ており、少し普通? のドイツ軍とは様相が違う。
『戦闘機4、急降下爆撃機3──集合終わり!』
敬礼して見せた彼は、聞けば空軍所属の前進地上誘導員だという。
……うん、意味わからん。
曰く、
一個小隊、2種類以上の航空機の運用の際には地上誘導員としてドイツ空軍士官が自動召喚されるらしい。
「──そうか、ではさっそくだが、城内に敵戦力が集結中らしい。……叩き潰せるか?」
『了解! 配置完了ッ、行動開始ッ!』
軽快に無線に喋り続ける士官は、何所から取り出したのか地図を広げて何事か指示している。
サイドカーの上からなので、風のあおりを受けて地図がバタバタとそよいでいるが気にした風もない。
ほどなくして、
『目標確認────対空火器なし、3機同時突入します!』
高度を上げ始めていたスツーカの3機編隊が上空で単縦陣に並ぶと、左旋回気味に宙返りし機首を起こすことなくそのまま真っ逆さまに落ちていく。
逆ガルの翼が空気を切り裂くキーーーーーーーーンと言う高音が空を制した。
音と共に高速で降っていく彼ら……。それはまるで自殺行為のごとくみえるがそうではない。
彼ら航空機乗りはあれでピンポイント爆撃を可能とするのだ。
その証拠に、力強いエンジン音が空を制していた。決して墜落する様な無様な音ではない。
そして、それは起こる。
スツーカが腹に抱いていた不格好な大きさの大型爆弾をパツンと切り離した様子が手に取るように見えたかと思うと、3機立て続けに爆弾をばら撒いていく。
それを見届けることなく、機首を起こすと左旋回と併せて、うねる様に機体を機動させた。
彼らが機首を起こしたのと同時期に──破壊の嵐が生まれた。
チュバァァァアアアアアンン!!!!
離れてさえ見える大爆発。
そして、大振動ッ!?
ここまで伝わるほど、地面がグラグラとゆれ。
近隣の民家の窓を、振動と風圧だけで割り砕いた。
まさに圧倒的──────。
目標にされた敵は出オチもいいところ。
王城近郊に落着したそれは、集結中の近衛兵団を……王都最大の軍事組織を木っ端微塵に吹っ飛ばし────あっという間に、灰塵にし、蹴散らしてしまった。