第11話「生まれ変わった召喚獣」
ぶっ殺してやる────。
そうだ!
ぶっ殺してやる!!!
俺の敵。
怨敵!!
大隊長と家族の仇ぃぃい!!
がぁぁあああああああ!!!
ドラゴンが召喚できれば、真っ先にぶっ殺してやりたかったのは勇者コージ!
一度は負けたが、そんなことは知るかッ!
次は殺す。
必ず殺す。
念入りに殺してやる!
今度は前とは違うぞ?
アリシアを取り合うんじゃない。
俺のプライドのためじゃない。
俺のドラゴンと、
そして、家族と大隊長の仇を討つためだ!!
そのために──────、
まずは、
冒険者ギルド!!
ギルドマスターで────剣聖の末裔で、俺の敵ッ。
首を洗って待っていろ!
精々、ゴロツキの手下と俺を小馬鹿にしたクソ冒険者どもを集めるがいいさ!
──全部まとめてぶっ殺してやる。
殺意をそのままに、ギロリと睨み付けるとゴロツキは震え上がる。
「ひぃぃぃぃぃ! よ、よせ! やめてくれ!!」
「殺しはしねぇよ(今はな)────ギルドまで付いてきてもらおうかッ」
ナセル自身も傷だらけだが、それを怒りと気合で抑え込むと男を羽交い絞めにして真正面から睨む。
「ギルドマスターをぶっ殺す。テメェは証言しろ、俺を殺すように言われたってな!」
「ひぃ! そ、そんなことしたら──」
チクリ。
ゴロツキの背に当てられる鋭い切っ先。
いつの間にかドイツ軍歩兵が、銃剣を抜き放ちゴロツキの背に当てていた。
「わわわわわ、わかった! 分かったからやめてくれ──!」
「最初っからそう言え!」
ゴキン! と思いっきり頭を殴りとばすと、ゴロツキをドイツ兵に預けて拘束させる。
ここでようやく、ナセルは荒い息を付いて膝をついた。
怒りのあまり気付いていなかったが、実はかなりのケガだ。
足の傷はもとより、ゴブリンどもに強かに打たれた体はあちこちが打撲だらけ。
「ぐぐ……」
それでも、気力を振り絞る。
まだだ……。
こんなとこで死ねるものか!
もう、遠慮はしないと決めた。
国と教会の連中にノタレ死ねと棄てられた命だ。
どうせ死ぬなら、棄てられたなら──復讐のために生きてやる。
勇者の首を取り、
アリシアの顔面を変形するくらい地面に叩きつけ、原型を留めないくらいぶん殴って、陥没するくらい蹴りとばしてやるためにな!!
ナセルはズルズルと体を引き摺り、ドイツ軍歩兵が撃ち倒した男達の荷物を漁り始める。
死体漁りは勝者の権利だ。
鉄の長剣×1
鉄の短剣×4
鉄の槍×1
鉄の斧×1
短弓×1
木の矢×15
傷薬|(軟膏)×4
ポーション×2
スタミナポーション×1
携行糧食がいくつか……。
それに、
銀貨4枚、銅貨58枚、
はッ! 銀貨とはね。
「────俺の値段は、銀貨一人頭1枚か……」
ボロボロの銅貨に比べて、銀貨はピカピカだ。
鋳造したてで、同じ時期に配られたのだろう。
つまり、ギルドマスターがナセルの殺害を命じた時だ。
その銀貨を握り混むと、ギリギリと折り曲げるほどに力をいれる。こいつの使い道は決まった────。
ギルドマスターよぉ、熨斗をつけて返金してやるぜ!
男たちから奪った皮袋に銀貨を押し込むと、胸から下げる。
街に入ったところで金を使えるあてもないが、回収できるものはすべて回収した。
ちょうどいい。
衣服はボロボロなので、交換させてもらおう。
鎧の類はサイズが合わなかったので、大きめの服だけ拝借しその上から胸当てだけ装備した。
腰には剣を佩き、投擲用に短剣をあちこちに隠す。
短弓は背に負い、斧と槍は迷ったがとりあえず放置した。
最後に、回収した薬で体を癒していく。
どれも質が悪くなっていたがないよりはましだ。
喉の渇きもあり、ポーションとスタミナポーションは3本とも飲み干してしまった。
そして、男達の持っていた傷薬を塗りつつ糧食を取り出していく。
そこに、
「むぐーーーーー!!!」
猿轡をかまされたゴロツキがナセルの目の前に転がされる。
ドイツ軍歩兵は無言で仕事をやり遂げたようだ。
ドラゴンとは似ても似つかないが、やはり彼もナセルの召喚獣なのだろう。
「ご苦労さん」
そう言って召喚術を解くと、スーと光の粒子になって消えていった。
その姿を見送り、手早く火を起こして湯を沸かすと適当に千切った野草を煮ていく。
そこに岩塩、チーズを削っていれ、一煮立ちさせる。
スープ擬きが出来上がるまでに、堅い黒パンを千切ると塩漬け肉を何回かスープの中で泳がせた後、パンの上に乗せて火であぶっていった。
数日振りのまともの食事だ。
腹がギュルギュル鳴る中、そういえばと思いつく。
先の戦闘中、実を言うといつの間にか召喚獣Lvが上昇していた。
Lv0からLv1への上昇は早い。
ゴブリンにゴロツキと、初期の召喚士としては十分すぎる戦闘経験を積んだのだ。
Lvが上がってもおかしくはないだろう。
それに『ドイツ軍』の召喚獣としての実力は未知数。
『ドラゴン』ほどではないにしても、中々に強そうではある。
おそらく、余多いる召喚獣の中でも、あれを召喚したのはナセルが初めてに違いない。
少なくとも、ナセルの知識の中では、一度としてそんな変わった召喚獣は聞いたことがなかった。
近い所で言えば『英雄』召喚に近いが……。
ブゥン、とステータス画面を呼び出す。
ドイツ軍Lv1:
※ ※ ※:
ドイツ軍Lv0→ドイツ軍歩兵1940年国防軍型
Lv1→ドイツ軍歩兵分隊1940年国防軍型、
ドイツ軍工兵班1940年国防軍型、
Ⅰ号戦車B型、
(次)Lv2→ドイツ軍歩兵小隊1940年国防軍型、
ドイツ軍工兵分隊
Ⅱ号戦車C型、
R12サイドカーMG34装備
Lv3→????
Lv4→????
Lv5→????
Lv6→????
Lv7→????
Lv8→????
Lv完→????
「????? な、なんじゃこりゃ!?」
ステータスを見た所でサッパリわからない。
歩兵分隊に、工兵班???
それに、…………戦車?
もう一度言う、
「なんじゃこりゃ!?」
目を剥くナセルの様子にひたすら怯えるゴロツキ。
「もがもが!」
ゴロツキがなにかほざいているが完全無視しつつ、パンと肉を頬張るナセル。
「……分隊──兵を呼びだせるのか? それに『Ⅰ号戦車』??」
戦車というとアレだろうか、騎馬に牽引された戦闘用馬車。
車軸に連動した鎌を装備し、突進力と鎌で敵陣を蹂躙する兵器──。
ま、見てみるか──。
「出でよ────ドイツ軍!!」
ステータス画面でⅠ号戦車を選び召喚してみる。
何はともあれ見てみないことには──────。
パリパリと輝く魔法陣が中空に現れる。
……点滅するその魔法陣は想像より遥かに巨大だった。
おいおい、
何が出るん──────……。
ズゥゥゥン!!
魔法陣から浮かび出た巨大なもの。
地響きを立てて現れたそれをみて、ゴロツキも目を剥いて驚いている……。
勿論ナセルも────。
もう一度言う!
「な、ななななん、な、なんじゃこりゃあああ!!」




