アンケート用紙で大喜利すんな
レンタカー屋でバイトをするようになって1ヶ月。
そろそろこのバイトにも慣れてきたところで、店長から新しい仕事を任された。
「このアンケート用紙のデータをPCに打ち込んどいてくれ」
「あ、はい。わかりました」
お客様からの声は、店のサービスの向上に繋がるのでしっかり纏めておかないと。
俺はアンケート用紙の束を持って、PCの前に腰掛けた。
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「えーっと……【お客様が利用するのに好ましくないと思われるレンタカーの条件を教えてください】か……20代、女性、主婦……【前の人のタバコの匂いが残っているレンタカーはイヤだと思います。あと、新車の匂いも幼い子どもの車酔いの原因になると思うので、イヤですね。】……なるほどなぁ、こんな意見もあるのか」
PCに文章を打ち込んでいく。
アンケート用紙は沢山あるので、こういったお客様の意見を全て打ち込むのは大変そうだ。
「えーっと、次は……」
50代、男性、会社経営者。
【車のタイヤが四角い】
「……えっ?」
思わず二度見した。
車のタイヤが四角い。
やっぱりそう書いてある。
「もしかして、大喜利だと思ったのかな……まいっか。次は、と」
30代、男性、ヤクザ(組長)。
【アクセルを踏むと激痛が走る】
「ヤクザの組長まで大喜利すな!ああもう、次!」
30代、女性、美容師。
【排気ガスの代わりに髪の毛が出る】
「気持ち悪っ!この人髪の毛切りすぎて疲れてる!次!」
20代、男性、軍人。
【車三つ連結させて《轟》フォーメーションでしか走れない】
「轟フォーメーションって何!?次!」
30代、男性、シェフ。
【排気ガスの代わりにイカスミパスタが出る】
「お前さっきの美容師と結婚しろ!価値観いっしょだぞ!次!」
40代、女性、教師。
【オバケを感知してアイサイトが反応するのがとてもイヤでした。ここのレンタカーは二度と使いたくありません】
「えっ……えええええ!?怖っ!ウソ、怖っ!……次!」
30代、男性、小説家。
【車に乗った瞬間、目に見えぬ力で谷底へと引きずりこまれ……そのまま帰らぬ人に……】
「やめろぉお!さっきのオバケのくだり、まだ引きずってんだよ!怖い話やめろよぉお!次!」
20代、女性、パリピ。
【ダサい】
「あ、うん……パリピは職業じゃないよ。次」
20代、男性、会社員。
【運転席のシートの、丁度お尻の部分に棒が……そして、ゆっくり座ると……アッー!♂】
「くっだらねえ!もうお前が優勝でいいよ!」
まだ沢山アンケート用紙はあるが、こいつ以上の逸材はいないだろう。
俺はこのバカな回答の余韻を楽しむために、少しだけ休憩することにした。