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クリア条件

短めになってしまいました。

Side 優真


 六日目の朝。

 窓から空を仰ぐと、どんよりとした雲が隙間なく青空を覆い隠していた。


「一雨来そうだな……」


 優真が呟くと、山小屋にいたメンバーが思い思いの言葉を口にした。


「ほんとだー。昨日までみたいに野宿だったら風邪ひいちゃってたかも。ラッキー」


 そう能天気に言ったのは双子の姉のひより。


「雨が降るんでしたら水を確保したいですね」


 一方でしっかり者の妹のあずさは空のペットボトルを探し始める。


「みんな、大丈夫かな……」


 そして静花は今朝携帯でみた残りプレイヤー数が一人減っているのに気づいてから物憂げな表情を見せたままだ。四日目に別れたっきりの未来と遥香、それに金木先生や友樹のことは優真も気がかりだったが、今はここにいる三人を護ることが先決だ。

 昨日から椎名姉妹も一緒に行動することになり、今山小屋には四人いるが、生憎男は優真しかおらず、少しだけ居心地が悪い。

 とはいえ、それももう少しの辛抱だ。あずさの話によると、今日の午前中のうちに、同じく村人のプレイヤーであるという荒木将人が合流するらしい。

 荒木とはあまり接点がないが、学校では結構な有名人なので噂くらいは耳にしている。あまり柄の良い人間という印象はないが、ひよりとあずさからは意外に信頼されているらしく、「将人さんなら大丈夫だよ」と昨日力説されたのだ。確かに、喧嘩が多いという話は聞くが、荒木自身が誰かに迷惑を掛けた、犯罪を犯したという話は聞いたことがない。それに、このゲームではただでさえ村人プレイヤーの協力は必須だ。今は一人でも仲間が多いのに越したことはない。

 それに、あともう少しだ。優真は椅子に腰を下ろし携帯を開くと、ホーム画面に『六日目』という文字が表示される。

 優真のクリア条件はアイテムキーを集めたうえで七日目まで生き残ること。つまり、今日さえ乗り越えれば自分は七日目まで生き残るというクリア条件を満たすのだ。

 昨日ひよりとあずさと合流してから、彼女たちにもアイテムキーの回収を手伝ってもらい、未使用のアイテムキーもクリア条件を満たすことが出来ている。


 それに加え、静花も今日中にクリア条件を満たせる。彼女のクリア条件は『パートナーを一名選択し、そのプレイヤーと130時間行動を共にする』こと。そのパートナーは彼女と合流した一日目に既に優真の名前で登録してある。最初の頃は、「行動を共にする」という言葉が曖昧過ぎて、どの程度までが行動を共にしたことになるのか、少しでも離れてしまったらクリア条件は満たせないのか、などと考えたものだが、静花の話によると、クリア条件の下にはクリアまでの残り時間が秒単位で表示されているらしく、時間が減り続けていれば、そのときは「行動を共にしている」扱いになるらしい。それを利用して、一度どこまでが行動を共にしていることになるのか確かめたことがあるが、意外にも五十メートル程度なら離れていても行動を共にしている扱いになるらしく、ここまであまりクリア条件を意識することなくやってこれた。今朝静花に残り時間を聞いたときに「あと18時間くらいかな」と言っていたから、このまま別行動をしなければ今日の二十三時には静花はクリア条件を満たすことになる。

 共鳴者であるひよりとあずさも、優真と静花がクリア条件を満たせば、残り二人の村人サイドのプレイヤーがクリア条件を満たせば彼女たちもクリアできるということになる。となると、今から合流する荒木が村人らしいので、あと一人クリア条件を満たす必要がある。


「なあひより、あずさ。今日で俺と静花、それに荒木がクリアするとして、二人はあともう一人、村人サイドのプレイヤーがクリアしないとダメなわけだろ? 他にあてはないのか?」

「うわぁ、わざわざひよりたちの心配までしてくれるなんて天道さんはジェントルマンだね! でも、そこはひよりたちも頭を痛くしてるところでさぁ」


 どうやら、ひよりたちも他に会っているプレイヤーはいないらしく、今は他の村人プレイヤーが自力でクリアしてくれるのを祈るしかない状態らしい。こういうとき、占い師である遥香がいてくれれば良かったのだが、生憎今となっては無事なのかも分からない。遥香は意外にしっかり者だし、なんとか上手くやっていると信じたいのだが……。


「あ、お姉ちゃん見て。荒木さんが来たみたい……だけど、あれ?」

「ん、どうしたの?」

「なんか、多くない……?」

「うわ、ほんとだ」


 そのとき、窓の外を見ていたあずさがひよりを手招きし、何かを指さした。

 優真もそれで気になってあずさの示した方を見ると、確かに遠くから見たことのある男、荒木が歩いてきているようだった。

 しかし、男の後ろから歩いてくる女性、そして男が背負っている人物を見て優真は目を見開いた。


「し、静花!」


 未だ沈んだ表情を浮かべていた静花は優真の笑顔を見て目を丸くした。


「ど、どうしたの?」

「やったぞ……遥香と未来が、帰ってきた!」


読んでいただきありがとうございます。

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