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→薬を使う

柚希に薬を使いますか?

⇒はい

 いいえ

 四日目。

 昨日と同じ時間に決めていたポイントに向かうと既にあずさとひよりは到着していた。


「悪い、待ったか?」

「いいえ、今来たところ! ……なんか反応してよ」

「そんなこと言うなら最初からやるな」


 ひよりのあしらい方もだいぶ慣れてきた。挨拶もそこそこに早速本題に入る。


「お前らの方は何か変わったことあったか?」

「うーん、昨日はアイテム探しばっかりしてたし、特にないかなぁ。あ、とりあえずアイテムキーは今二つ確保出来てるかな。最終日になってもアイテムキーを集めきれなかったら恵んであげてもいーよ。最初から期待されるのも困るけど、あんまり人を信用してない悠馬さんなら大丈夫でしょ」

「おいあずさ、君の姉ちゃんほんっとに失礼だよな」

「まあ、今に始まったことじゃないので大目に見てください」


 あずさは諦念の混じった笑みを浮かべる。お前がそうやって甘やかすから、またお姉ちゃんは増長するんだぞ。


「で、悠馬さんの方は何か変わったことあった?」

「あー、僕の方は少し動きがあったよ」


 そう言って、僕は昨日柚希を拾ったことを話した。


「えーっ! それじゃあ、あの悠馬さんが見返りもなく他人に回復アイテムを使っちゃったの!?」

「びっくりしすぎだからね」

「でも、あずさもちょっと意外かもです……」

「二人の僕に対する評価は十分分かったよ……」


 とはいえ、僕も昨日の自分の行動には若干の戸惑いを覚えている。

 昨日助けた柚希は、お腹を貫かれたような傷があり、そのままにしていれば危険な状態だということは素人の僕にとっても十分に分かった。

 そしてそのとき、僕はちょうどその日にアイテムキーで入手した回復アイテムがあることを思い出した。


『回復薬…患部に液体をかけることで傷を癒す』


 小瓶に貼ってあったラベルにそのような説明があったときは、いよいよもってこれがゲームの中なのではないかと思えてきたが、同時にこのアイテムがとても貴重だろうということはなんとなく察しがついた。

 今でも、何故そんな貴重な物を柚希に使ったのかは分からない。自分が助かることだけを考えるなら、確実に薬は温存しておくべきだったし、事実、最初は彼女に薬を使うはおろか、助ける気さえなかったのだ。いつもの僕なら実際にそうしたのだろうが、そのときだけは魔が差したというべきか、気づけば彼女に薬を使ってしまっていた。全く僕らしくない行動だ。

 ……いや、それは本当に僕らしくないのか? 倫理的にみれば、今回の行動は褒められるようなことではあっても、決して貶されるような行いではないはずだ。それをよりにもよって僕自身が「自分らしくない」、あまつさえ「魔が差した」という表現で表した。斎藤悠馬という一介の高校生に過ぎない“彼”はそこまで非情な人間だったのか?

 ここ数日、時折このような思考が頭を掠め、混乱するときがある。まるで、“僕”が“自分”ではないような、画面越しに外から操っているような奇妙な感覚。そこで僕は頭を振るい、話を続けた。


「とりあえず、薬の効果は劇的で、朝には傷も完全に塞がっていた。今日中に目が醒める可能性が高いと思うから、何があったか聞いて、明日話すよ」

「はい、よろしくお願いします。その柚希ちゃんも村人サイドなら、将人も入れてあと一人クリア条件を満たせば、お姉ちゃんと私もクリア条件を満たすことが出来るので」

「柚希ちゃんって……僕より学年は一つ下だとはいえ、あいつも高校生なんだぞ?」

「知ってるよ? だからひよりたちと同級生じゃん」

「えっ……」


 もしかしてこの双子、高校生だったのか。


「あー! やっぱり悠馬さんもひよりたちのこと中学生くらいだと思ってたんだ! 将人さんといい見た目で人を判断するなんて酷いよー!」

「いや、お前らだって、自分で高校生って言わなかったろ……!」


 ていうか、あずさには出会った初日に「見た目によらず頭が良いんですね」とか言われたんだけど。


「聞かなくたって見れば分かるでしょ? 見た目で判断してよ!」

「言ってること無茶苦茶だからな」

「お、お姉ちゃん、あんまり大きな声出さないで……」


 柚希がどういう経緯で怪我をしたかは知らないが、十中八九他のプレイヤーの仕業だろう。ならば、あの場からそれほど遠くないここも敵が近くに潜んでいる可能性は大いにあるのだ。


「とりあえず、あずさとお姉ちゃんはポイントを移動して東側のエリアに行こうと思います。悠馬さんの話だと、そこには例の大グループもいなさそうですし」


 現在僕達がいるのはフィールドの東側のエリア。優真たちのグループは大所帯ゆえに小川が流れる西側を陣取っているというのが僕達の考えで、また北側には初日にひよりと将人が見たという要塞化した山小屋もあるため賞金稼ぎの根城になっている可能性が高かった。

 そうして次に落ち合う場所を決め、あずさたちと別れると、僕は柚希を寝かせている場所に戻った。薬は使ってやったとはいえ、食糧等は全て持ってあずさたちの集合場所に移動していたため、柚希が何かを持ち去っている可能性は皆無だ。しかし、ここまでして助けたのだから、せめて何が起こったのか話くらいは聞いておきたかった。


「お」

「……あ」


 どうやら、事情を聞くくらいのことは出来そうだ。

 柚希のいる場所へ戻ると、木に上半身をもたれかけていた彼女と目が合った。


読んでいただきありがとうございます。

もし機会があればルート分岐の展開書いてもいいかなぁとか思ったり。

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