8、恋する気持ち
涼子ちゃんの告白の後、私は涼子ちゃんが私と拓が仲の良い事を知っていて
もしかして疑っているのかも知れないと考えてしまった。
正直なところ、罪悪感や申し訳ないという、涼子ちゃんを思う優しい気持ちはなかった。
大朝さんから受けている仕打ちを、拓が癒してくれて…もう拓が近くにいない自分が想像できなかった。
ピンクのカーテンにピンクの座イス、黄色いスマイル君の灰皿、この部屋を形成している
すべての物が愛おしいと思うぐらい私の心はピンク色だった。
大朝さんと付き合っていた時は、この部屋が狭苦しくて息苦しくて毎日が苦しかったのに。
明日は、拓に会えるかもしれない。
そう思うだけで生きる意欲が沸く。
神様は、私を見捨ててはいなかった。
涼子ちゃんの気持ちや大朝さんの気持ち、いろいろな事が見えてなかった。
5年たった今、めったに拓の家がある路線には乗らないけども
時々拓の住んでいる駅を通過するとき、拓の存在を探さずにはいられない。
電車からは、拓の住んでいるマンションが見える。
拓の部屋も見える。
もちろん部屋の中まではわからないけど、
拓は今家にいるのかなあ。
そう考えるだけで、今もこの世の中に拓が存在していることを心の中で確認できる。
夢の中だけじゃなく、実際に会って話せたらどんなに素敵だろうか。
この先の長い人生、拓と私はもう関わることがないのだろうか。
拓の事を思う時、いつでもこの事を考えてしまう。