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5、好きという直線

いつの間にか、私はベッドの中で眠っていた。


夜中に目が覚めボーっとした頭で携帯を取る。


…何時だろう。

あっ…本田君からのメール。

『次の休み遊びにいかない?』


頭の中には、さっきの大朝さんの表情と臭いが残ってる。

でも、その気持ちとは裏腹に嬉しい気持ち。

なんだか矛盾してる。

でも、この苦しい気持ちを癒してくれるのは彼だ。

髪を切ったときから、そう思っていた。


『夜中にごめんね。私、ららぽ行きたいんだけど★』

私は、返信してこれからの事を考えながらも眠った。


〜数日後〜


トントン。

きゃあーもうそんな時間か!!

「はあい!」

少しゆっくりドアを開けると、ニコリと照れ笑いをする本田くんがいた。

ヤバイ。癒されるなあ…。

二人で、マンションの階段を下りながら

先に階段を下りる本田くんが、私の方を振り向く。

「よし、自転車で行こう!」

「まじでー?自転車でいけるの?!」

本田君は、黒いTシャツに緩めのチノパン。

さわやかな服装。

私は、スカートではなく思い切ってショートパンツに挑戦。

これが結構勇気いるんだよなあ…。


外は、5月とは思えない程、暖かくて風が気持ちいい。

私は、まだ本田君に触れまいと思いサドルや自分の座っている銀色の部分を掴む。

工場地帯を抜けてららぽを目指す。

「ねえー重いでしょ?」

「いやだいじょーぶ!」

彼の背中は、細いけど…なんだかたくましさを感じる。

爽やかだなあ。

夜だけ会う関係なんて、恋愛関係と呼べるのだろうか?

私は、そんな事をふと思う。


ららぽに着く頃には、本田君は汗だくになってた。

「まじ!あちい!」

サラっとした前髪も少し濡れている。

「ちょっと待ってて!」

私は、タオルハンカチを本田君に渡すと自販機に走る。

「はい!お礼!」

私は軽く投げるようにして、炭酸ジュースを渡す。

「まじい!ありがとう!」

嬉しそうに彼は勢いよく、プシュッという音とともに黄色い炭酸ジュースを飲み干す。


「さて、行きますか。」

そして、ららぽーとの中でアクセサリーをみたり服をみたり…。

本田君の好きな服やアクセサリーなんかも、色々分かった。

なんだか、本田君を知るたびにどんどん彼に惹かれ始めてる自分がいた。


「そろそろ、帰ろうか!」

本田君の門限が9時のため、早めにららぽーとを出発することにした。

「また、運転宜しくお願いします!」

私は元気よくそういうと後ろの席に跨った。

「しっかりつかまってなよ。」

本田君がそういって、私の手を掴むと自分の腰に持っていった。


「…ありがと。」

私は、びっくりして声を絞り出すのがやっとだった。

川沿いの遠くに見えるサティの小さな明かり、高速道路の車の明かりが今までに

ないぐらいキレイにみえた。

なんで、キレイにみえるのか私にはもうわかっていた。

帰りは、言葉をあまり交わさないまま時間が過ぎる。

でも、とても満たされた気持ちで嬉しくて。

この道がまだまだ続けばいいのにと思う。


信号待ちで、本田君が振り返った。

なんだか、私は彼の顔を見て泣きそうになった。

自然と目を閉じる。

彼の唇が、私の唇に一瞬触れる。


すぐに、彼は前を向き自転車をこぎ始める。

温かい涙が私の頬をつたう。

私は、涙をぬぐいたくなくてもうすぐ夏を知らせる暖かい風に涙を

まかせた。


私は、自分のずるさや、弱ささえ今は許せる気がした。

本田君、ごめんね、ありがとう…。


そして、好きという一直線で私たちはつながった。







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