4、寂しいから
『もう、個人的に会うのはやめましょう。信用できない。』
本田くんの帰った部屋は、なんだかとても静かでとってもゆったりとした時間が
経ったように感じた。
本田くんが帰って10分しかたってないのに。
ピンクのチェックのカーテン。
丸いテーブルに置かれた、灰皿。
セブンスターの吸殻が彼の存在感をあらわしているようで、なんだか
わからないけど…切なくなった。
大朝さんには、本田くんが帰ってすぐメールをした。
半分勢いだけど…。
でも。
これでいい。
断ち切らなくては。
なにもする気なんておきなくて、ただただ三角ずわりをして
部屋にある、シンプルな白の目覚まし時計や、テーブルを眺めていた。
コンコン。
どれぐらいの時間が経ったのだろうか?
ドアをノックする音が聞えた。
大朝さんだ。
「なに?」
「なにって、あのメールなんだよ。」
「そのまま。」
私は、必死で無表情を作る。
「信じろっていっただろ。」
大朝さんは、まっすぐ目私のを見つめる。
この目に何度屈してきただろう。
「いいよ。とりあえずあがって。」
私は半分諦めた口調で言った。
「仕事の途中だからすぐ帰るけど…。」
大朝さんは、少しとまどったように言った。
そうやって、他の女の家に行くのだろう。
割り切ってつづける関係に何の意味があるのだろう。
大朝さんは、きっと寂しい人。
それは、実は私も一緒なのだろう。
自分では寂しがりやを隠していたけど…、自分のボロは大人になればなるほど
自分自身よくわかる。
でも、弱い自分とも向き合わなくてはいけないはずだ。
大朝さんは、私の頭をなでる。
「ごめんな。あんまり会えなくて。」
すべて嘘なのはわかっているのに、拒否できない。
言いたいはずの言葉が出ずに涙がどんどん溢れてくる。
少しだけ唇がふれあうと、そこからはもう境界線がなくなった。
頭で考えて拒否できたらいいのに。
一瞬のぬくもりに負けてしまう私は弱虫だ。
出口の見えない関係ってこうゆう事をいうのかな。
「今日はするつもりなかっのに。」
大朝さんは、私を抱きしめながら言った。
そして子供を見るような目で、私をみると、
「もう行くね。」
と言った。
もう私には言葉は見つからなかった。
大朝さんは、決して直とは呼ばない。
他にも、名前で呼ぶべき人がいるはずだからお前と言う。
確かに、大朝さんに恋はしていたと思う。
でも、いまは寂しいだけ。
キスしてもシアワセを感じない。
大朝さんが帰った後、自分だけが世界に一人取り残されたようで
さっきまでの安らかな時間が嘘だったようだ。
罪悪感、焦燥感、胸がざわざわして落ち着かなかった。
絶えられずベッドに入り、泣くことしかできなかった。