第四十八話 夢の中で
「ピ、ピ、ピ、ピ、ピ、ピー」
夢を見た。
司は、ソロモンシステムの中枢部で、父親である水無瀬光と向かい合っていた。
あの夢の続きだ。優しい眼差しを司に向けて、光が口を開く。これまではっきりと聞こえなかった光の言葉が、鮮明に語りかけてくる。
「司、君がこれを見ているということは、ソロモンがSIVAに対抗するために覚醒したという事なのだろう。父親として君の成長を見守れないことを本当に悔しく思うよ。
司、いいかい、これからお父さんが言うことをよく聞くんだよ。
南極に落ちた彗星SIVAの真の正体は、宇宙より降りたった人類破滅兵器なのだよ。
そして、そのSIVAのエネルギー源は、かつて、日本をはじめ世界各国が南極の地下1kmの岩盤に埋めた高レベル放射性廃棄物、いわゆる使用済み核燃料棒なのだ。
SIVAが南極の地で、そのエネルギーを十分に溜め込み覚醒すれば、恒星をも破壊できる威力を持ってしまう。おそらく、その出力はゼタジュール(10の21乗ジュール)単位だ。
私の父、水無瀬渡は、世間から変人扱いされながらも、彗星SIVAが衝突するずっと以前から、地球の未来に危機感を抱き、古代の人類の戦いの歴史について研究していたんだ。そして、その研究の結果、彼は『ソロモンの秘宝』に辿り着いたのだよ。
奇しくも、剣山の『ソロモンの秘宝』を、代々密かに守ってきたのが、神山家の清宮神社だ。
そう、それが君のお母さんの実家だ。水無瀬渡は、君のおばあさんの神山渚に会い、この危機を懸命に訴え、ようやく秘宝の在り処への道案内をしてもらったのだよ。
それからというもの、彼は、恐るべき集中力で古代文字の解読に成功した。そして、ある日突然、私に『ソロモンの秘宝』のデータを託した直後、アメリカ政府に連れ去られ、消息は途絶えてしまった。
その後の世界のことは司も知っての通り、彗星SIVAは、水無瀬渡の予言通り、南極に激突してしまった。
司、ソロモンシステムをお父さんが立ち上げた本当の目的は、SIVAから、地球を守るためなんだ。しかし、残念ながら、お父さんとお母さんの命は、そう長くないようだ。
だから、この使命は司に受け継いでもらいたい。君の頭に埋めこんだチップには、水無瀬渡が解読した古代文字の変換コードが内蔵されている。事は急を要するはずだ。このメッセージを受け取ったらすぐに『ソロモンの秘宝』が祀られている洞窟に行きなさい。司ならきっと大丈夫だから。
私は、この時のために、ソロモンシステムには高精度の自立学習プログラムを組み込んである。
だから、お父さんが完成させた時のソロモンよりも、司の生きている時代のソロモンの方が、遥かに成長して、SIVAに対抗できる手はずを整えているはずだ。
司は、お父さんとお母さんの子だ。そして、ソロモンシステムも僕たちの子供だ。だから、ソロモンは、司の弟のようなものなんだよ。
この世界の行く末は、私の子供たちに任せたよ……。」
そう言うと、光の姿が霞んでいき、司は、目を覚ました。




