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ソロモンシステム  作者: ぐりむどあ
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第二十話 パイモン

 三十分後、六人はヘブロンに降りたった。


「はじめまして、神山司です。」


と、挨拶する司に、まだあどけなさの残る巻き毛の少年が、


「上杉洸一(こういち)です。でも、お姉さんの大きすぎる虹色のオーラは、この建物に入る前からずっと感じてたよ。」


と言って、にっと笑うと、その後ろに立つ陰陽師のような神秘的な眼差しの男性が


「幸運の女神、お目にかかれて光栄です。私の名は、明日香(あすか)高史(たかふみ)と申します。」


と、深々とお辞儀をしたので、司もあわてて頭を下げながら、この二人から梓叔母さんと同じ力が放たれるのをなんとはなく感じていた。


(いつき)さんも一緒に行かないのですか。」


そう尋ねる時任に、斎は笑いながら首を振った。


「私はソロモンシステムを守らないといけないからね。それに、君たち六人まで消えてしまったとなれば、第二第三の強者(つわもの)どもが、局長室に現れかねない。」


「そうですね、残ったインペリアルをよろしくお願いします。」


「わかってるよ。司君からピーチ君とダンタリオン三十機を預かったから、こちらは大丈夫だ。

 ほら、速くパイモンに乗り込みたまえ。

 赤城の件については、嫌な予感しかしないんだ。先ほども言ったが、(いたる)の確保を最優先に頼んだぞ。」


「了解しております。」


「じゃあ、司ちゃん、よろしく頼むよ。」


「は、はい。」


「司、クマ吉、あんじょうガンバリヤ。」


(いつき)の肩の上で、ピーチが手を振った。


「ピーチも頑張ってね。」





  【パイモン発進】




「まさかこんなことになるなんてね、司ちゃん。」


「そうですね。この一月の間のトレーニングも、どうやらこの為だったみたいです。」


 映し出された司のドライビングライセンスを覗きながら、時任が、


「それにしても、自動二輪からバルバトスやパイモンまで、司ちゃんは、今、日本にある乗り物はすべて運転できるようになったんだね。たった一か月で、ほんとすごいよ。」


 すると、後ろから高橋の声が飛ぶ。


「こら、任務中に何口説(くど)いてんだ、お前の顔、不細工すぎて困ってるじゃないか。」


「はぁ? 鏡見て言えゴリラ。そんなことないよな、司ちゃん?」


「いいから、早く乗り込め、チビ。」


「俺は平均身長だ!お前が、無意味にデカすぎるんだよ。」


「あーあー、下の方からなんか微生物が叫んでるけど、全然聞こえねーや。」


こうして全員が乗り込みを完了すると、鶴野が時任に話しかける。


「確か時任(ときとう)君は、バルバトスを、飛ばせる人デスよね。」


「ああ、そうですよ。まあ以前、純に無理やりやらされたというべきだが……。」


「それはよかったデス。操縦は司ちゃんがやってくれるみたいデスけど、シミュレーション訓練に合格してはいますが、実際には一度も飛ばしたことがないデスから、副操縦席でサポートしてあげてくれないデスか。ぼくもデスね、作ったもののまだ飛ばしたことなくってデスね、ちょっと不安だったんデスよ。」


「了解です。じゃあ副操縦席に座るよ。」


すると、機内後方から高橋たちのヤジが飛び始める。


「お前の操縦とか、スリリングゥー。滑走路から離れられるのかよ。」


「司ちゃんの足引っ張んなよー。」


「あーあー、死んだわ、遺書書いとこ。」


 時任が後方に向かって叫ぶ、


「うるせーぞ、筋肉ダルマぁ。落ちるとしたらお前が積載オーバーだからだよ。」


「ざけんな、なんで俺だけなんだよ。」


それには応えず、時任はコクピットに入り、ベルトを装着しながら司に話しかけた。


「司ちゃん、この任務は、どんな危険が待っているかわからない。けど、俺たちは、司ちゃんを全力で守るから、もし君が最後の一人になったら、その時には、(いたる)を、奴の事を宜しく頼む。

 あいつは、俺たちの同期の中でも特別中の特別なんだ。運動神経、知性、性格、何を取っても一級品だ。だが奴は、何でも自分でしょい込んでしまう悪い癖がある。まさに、今回がいい例だ。

 俺たちじゃあ束になっても、純一人に勝てないんだ。だが、君はちがうよ、純と同じ匂いがする。」


「時任さん達だって、めっちゃすごいと思います。」


「ハハハ、神童神山司にお墨付きをもらったってなると、後ろの連中も喜ぶな。」


「そっ、そんなこと…」


「さあ、おしゃべりはここまでにして、離陸準備に入るか。」


「はい。」


「離陸は、東京湾、旧アクアラインとニューアクアラインとの間、T32番ゲート、海ほたるを使おう。

 今回のフライトは、アダマスは無論のこと、米軍レーダー網の捕捉を回避する為、成層圏を航行することにする。核パルスエンジン冷却確認。」


「了解。第一第二第三第四核パルスエンジン冷却完了。」


「高電圧ケーブルパージ。」


「高電圧ケーブルパージ完了。内部電力に切り替え完了。電圧に問題なし。」


「滑走路停止信号オフ。」


「滑走路停止信号オフ、隔壁は二十秒後に全て開きます。滑走部電圧基準範囲プラス0.2から0.3フェイズ1離陸確認完了フェイズ2に移ります。」


 司がそう言うと滑走路の中央のガードランプが赤から緑に変わる。


「管制室ソロモン、チャンネルを秘匿(ひとく)回線Aマイナスに固定。」


「管制室、(いつき)Aマイナス了解。」


「核パルスエンジン起動。」


「核パルスエンジン起動。出力上昇、1000…2000…3000…4000…4200、4300、4400、4500トンMN到達。プラスマイナス0.4。」


 エンジンの回転数が上がり、出力が上がると同時に、次第に大きく高音のエンジン音が響き、機体が微振動を始める。


「各員衝撃に備えろ。」


「AからGまで安全装置解除。」


「安全装置解除。全リニアレール電磁誘導出力上昇。パイモン射出準備完了。」


「此方管制塔。パイモン射出後高度20000メートルまで一気に上昇し、目的のエリア3郊外、(さかい)駐屯地に向かってくれ。」


「了解。」


「行くぞ、司ちゃん。」


「はい。」


「超高速大型戦術輸送機パイモン発進。」


 時任の声と共に、司にもとんでもない重力が襲い、更に加速を続けながら滑走路の傾斜が上がっていくと、本当に押しつぶさるんじゃないかと思うほど体が軋む。


「うおぉぉ…、これはバルバトスとは比にならない出力だな。大丈夫か司ちゃん。」


「なっ、何とか。」


「現在の傾斜は。」


「37度です。」


「射出後右に20度旋回、射角は垂直で一気に20000メートルに上げるぞ。」


「はい!」


 体にかかる重力に押しつぶされながら、緑色のガイドランプが光るトンネルを進むのを確認していると不意に視界が真っ白に輝く。


「時任さん離陸完了です。」


「スピードは。」


「およそ2900」


「了解!右二〇度!」


「右に二〇度!」


「このまま垂直飛行に移行。」


「了解、五〇度、六〇、七〇、八〇、九〇」


「高度は!」


「13000、14000、15000、16000、17000、18000、19000・・・」

「よし水平に戻すぞ。」


「水平飛行移行開始…水平。」


「高度24000、少し飛びすぎたな。マイナス4度、徐々に下げながら、目的地堺駐屯地に設定。」


「目的地堺駐屯地登録完了。高度20000で安定」


「おっけい。さすが司ちゃん。少し休憩できるぞ。」


「ふぅ。」


「よくやったな。」


そういうと、時任は司の頭をポンポンとたたいた。司はまた赤面する。


これで響、純に続き、頭をポンポンされたのは三人目だ。どうしてインペリアルの人たちはこういう事を普通にやってのけるのだろう。


   

挿絵(By みてみん)

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