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それは、全ての始まり

肌をじりじりと焼くような太陽の光が、スポットライトのように降り注ぐ。蝉の喧騒に頭を悩ませながら俺は雑草の生えた墓地にいた。


「はぁ、あちぃ……草は伸びてるし……手入れくらいしろよ」


 俺は、額の汗を手の甲で拭いつつ、しゃがみ込んで草を抜き始める。根っこが糊で貼り付けられたかのように、中々抜けない。暑さのせいか、頭はくらくらしてくる。段々と抜き取るのがめんどくさくなってきた。


「あ〜めんどくせぇ!」


 俺は、抜くのを止めた。だいたい、こんな暑い日に〈墓参りに行かなきゃだめ〉と言われて、無理矢理来たようなものだ。

俺はバケツに汲んだ水を柄杓ひしゃく使って墓に水を掛ける。


今日は8月13日、俗に言うお盆休みの初日である。ーー本当は友達とどっかに出掛ける予定だったのにな......。俺は雲ひとつない空を見上げて予定をぶち壊してくれた両親の顔を思い浮かべていた。


今朝、俺は夜遅くまで起きてネットサーフィンをしていた為8時になっても夢の世界に居た。そんな俺を母さんが叩き起こしてこう告げた。


「一週間ぐらいお父さんと旅行に行ってくるから留守番よろしくね」


勿論、叩き起こされたばかりの俺ではその言葉の意味を理解出来なかった。2分ほどその場でぼーっとし居るうちに、やっと頭が働きだし、さっきの言葉の意味をだんだん理解し始めた。理解すると同時に急いで玄関まで行きサンダルを履いて外出ると一台のタクシーが止まっていてそこに両親が乗っていた。

両親も俺が外に出たことに気づいて手を振るがそのタイミングでタクシーが発信し始めた。俺はそれを只々見るしかなかった。


しばらくして現実を受け止めた俺は朝食を食べるために台所に向かったんだが、テーブルの上に置かれた一枚の紙に気がついた。

手にとって見てみると母さんの書き置きだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


久しぶりに夫婦水入らずで過ごしたいから行ってきまーす

それと、お盆だからお墓の掃除とかお願いね?二万財布に入れといたからどうにかなるでしょ?じゃあね〜


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それを見た俺は無言でその紙を丸めて振りかぶって八つ当たりの意味を込めてゴミ箱に投げつけた。


まぁ、そんなこんなで現在に至るわけだけど......。

この墓地には結構お墓があって俺以外にもお墓参りをする人が来ててもいいと思うのだが、見渡す限り墓、墓、墓。人の影は何処にもなく、少し遠くを見ると陽炎が揺らめいていた。


「後は花を差し替えてっと。......まぁ、こんなもんかな」


作業を諦め、雑草が周りに残ったりしているが、それでも背の高い雑草を始末しただけあってすっきりした感じになっていた。

さて、じゃあ帰るか。そう思って荷物をまとめ始める。その時、どこか冷たい風が頬を撫でる。俺はその風が吹いてきた方を無意識のうちに向いていた。そして視線の先には白いワンピースを着た同年代ぐらいの女の子が居た。さっきまでここには俺一人だったはず。その事実に、驚きのあまり目を見開く。その彼女な姿は、何処か朧気おぼろげで、さっきまで見ていた陽炎のようで、一瞬でも気を抜くと何処かに消えてしまいそうな雰囲気をだしていた。

女の子が普通なら気にも留めるようなことでは無かったがかもしれない。だけど、彼女は宙に浮いていた。


驚きのあまり目を離せずにいた。


彼女も俺の事に気がついたのかこっちに近づいてくる。一瞬逃げようかと思ったけど、近づいてくる彼女を見ていると出来心のような好奇心生まれていた。そして俺は、彼女に声をかけていた。


「き、君は?」


返事を期待した訳でもない、ただただ目の前にいる彼女を知りたいと思い出た言葉。目の前にいる彼女は話しかけられると思っていなかったのか、本当にとても驚いたような表情を浮かべ......。


「も、もももももしかして、私のこと......見えてるの?」


何故か凄く言葉に詰まりながらそう答えた。

その様子に少し動揺しながらも、俺はなるべくその動揺を顔に出さないように努力しながら頷く。すると彼女は大きな声をあげて泣きだしてしまった。


これが、今年のお盆7日間を忘れられないものにしてくれた、幽霊の女の子との出会いだった。

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