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引きこもり女冒険者の生活態度を正します?  作者: えぐち
第1章 レベル上げさせるだと?
3/3

ポーチ

私は陰鬱な気分のまま、初心者冒険者がはじめにレベル上げやその他諸々をしにやってくるという『ハジマテ森』にやってきた。


流石初心者用と言ったところか、道がキレーイに整備されており、あちこちに看板が立っている。


看板には冒険者の心得や、戦闘のコツなどが書かれていて、この森自体が教則本みたいなかんじだ。


森のクセに見晴らしが良いため死角が無く非常に闘いやすそうだ。闘いたくないけど。


「さてと、あっちにスライムが湧く場所があるみたいだから行くぞ」


森の入り口付近にあったマップ看板を見ながらカイ君が言う。


その場所につくまで、私はどうにかカイ君を出し抜いてサボる方法はないかとずっと考えていたが、何も思いつかなかった。


レベルを上げてスキルポイントをもらい、悪知恵のスキルを得れば思いつくようになるのだろうか?


くっめんどくさい!


「よし、ここだな。」


カイ君が足を止めて辺りをキョロキョロと見渡している。


どうやらスライムは今ここら辺にはいないようだ。


「うーん、今日はお休みかなー?スライムもわざわざ倒されに湧き出てくるの嫌になっちゃったんじゃないかなー。帰るか!」


私は心の中で湧くな湧くな湧くなと念じながら言ったが、その念は届かずほんの数秒後にスライムが湧き出てきた。


「おっ湧いたな、よしいくぞ!」


「うわっきもちわるっ」


地面からニュルニュルニュルッと這い出てくる様子を見て、私の沈んだ気分はさらに沈んだ。体うごかしたくね〜。


「まずナルメアがダメージを与えてくれ」


「へいへい」


私は一応魔術師希望で通しているので、杖を使う。もちろん魔法はなにも使えないから杖で叩くのが攻撃方法だ。


でも杖で殴ったとてスライムにダメージが入るとは思えないんだよなぁ〜、とか思いつつ嫌々殴ってみたが、案の定手応えは全くなかった。


「うおおっ!トリャァ!!」


なんとも男臭い掛け声とともにカイ君が剣で斬りかかりスライムが消滅した。


何気にモンスターが倒されるところを見るのめっちゃ久しぶりだ。


「ん?なんか落ちてない?」


「あー、あれは倒されたモンスターが落とすポーチだよ」


ポーチ・・・?あのスライムが?ポーチを?どこから?どういう原理で?と疑問が積もるが、考えるのはやめておこう。そういうものなんだろうしね。


ところで本当に今ので経験値を私は貰えたのだろうか?そもそもレベルが上がったかどうかはどうやって確認すればいいんだろうか?


カイ君に尋ねたところ、なんかピーンッてくるらしい。そのあとに自分のレベルが頭の中に表示されて攻撃力、防御力の数値も確認できるらしい。


私はレベルを上げたことがないからわからないが、なんとも胡散臭い話である。


しかし、カイ君の言っていることが本当ならその感覚がどんなものか知りたい!とらしくもないことを思ってしまった。


そんなこんなで順調にスライムを狩り続けていたら、近くをちっちゃいゴブリンが歩いていた。


「おおっ!あれはゴブリンじゃないか!」


げっ、カイ君があの冴えないチビモンスターを発見してしまった。


当然カイ君は倒そうとするだろう。そこで私は


「わたしぃ。。ぼうぎょりょくないからぁ。。たたかれたらしんじゃうよぉ。。。」


とぶりっ子してやめさせようとしたが


「大丈夫大丈夫!俺5才の時にあいつとタイマンして余裕で勝ったから!」


とカイ君はドヤ顔で言った。


いやいやいや、君のことなんか知らんし、私は女の子だし、痛いの嫌いだし!殴りかかったら絶対あの手に持ってる棍棒でやり返されるし!


とかいろいろ思いながらふとゴブリンに目をやったら、あることに気が付いた。


「・・・ねぇカイ君、あのゴブリンの腰に付いてるポーチってさ、スライムが落としていくポーチとおんなじだよね?」


「ん?あーそうだな、あいつを倒したら手に入れられると思うが、あれがどうした?」


「いや、あれをさ、倒す前に盗ったらどうなるんだろって思って」


「へ?あーたしかにどうなるかはわからんが、そんなことはどうでもいいだろ?さっさと倒すぞ」


ほぅ、カイ君もどうなるかわからないのか。


私は極度の面倒臭がり屋だが、へんなことには執着して好奇心を満たそうとするところがある。今の疑問がその『へんなこと』だ。


私はそろりそろりとゴブリンの背後に近づいていき、腰のポーチに手を伸ばした。


カイ君がなにしてんだあいつ?みたいな目で見てくるが関係ない。私はここだっ!と素早い手わざでゴブリンのポーチを奪った。


数秒間沈黙が続いた。ゴブリンはビクともしない。


私はあれ?と思いつつゴブリンの顔を恐る恐る覗き込んでみた。


するとゲッッッソリとした顔が私の視界に飛び込んできた。


ウワッ!と叫び私が腰を抜かし尻餅をつくと、ゴブリンの足からチリチリと音がしてきた。


数十秒後、ゴブリンの体は全て灰と化し、風に流されて消えていった。


そして次の瞬間私の頭の中にピーンッという感覚とともに、レベル2という文字が浮かんだ。


人生初のレベルアップだ。


さらにその他のステータスの数値や文字も浮かんできた。



_ナルメア=コルネ

職業:魔法使い


体力:28

攻撃力:9

防御力:9

魔法攻撃力:18

魔法防御力:10

素早さ:10

_



は、はじめての感覚・・・だけど今はあのゲッソリ顔のショックでそれどころじゃない、しばらく夢に出てきそうなくらいのインパクトだった・・・


「ぽ、ポーチを盗むとこんな風になるのか、はじめて見た・・・」


カイ君はなにやら関心しているようだが、私はあのゲッソリ顔を2度と見たくないので一生この手は使うまいと決意した。



その後私はレベルアップした証拠として、詳しく自分のステータスを説明し、はじめて目標を達成することとなった。


その代わりゴブリンのゲッソリ顔というトラウマを植え付けられ、やはり外に出てもろくなことが起きないんだと思った。


あの時みたいに・・・


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