三国智春という少年
「『生きる』ってなんだろうなぁ」
彼は一人だ。一人だからこその考えに至ったのかもしれない。かつて偉大な哲学者がそう考えたように、はたまたただの幼稚な浅はかな考えなのかは本人すらわかっていない。ただ、ふと言葉として出たことに彼自信何も疑問に思うことは無かったはずだ。
彼の名前は三国智春。思春期真っ盛りの現役高校生であるが、恋人はともかく友達ですら居ない。
生来孤独な生き方をしているのだ。
生まれてすぐに親は離婚。母方に引き取られるも母自身、親戚とは仲が良くなく、少年と二人で暮らしていた。だが、彼の母親は彼が中学生の頃事故に遭い結局それから今までずっと独り暮らしだ。幸いにも親戚からは最低限資金の援助はしてもらえていた。
もちろんこんな複雑な家庭環境だったのでは上手く他人とコミュニケーションをとることもできなかった。
「『生きる』ってなんだろうなぁ」
再び自らに問いかける。友達はいない。恋人もいない。学校の先生ですら彼との接し方がわからない。行って帰ってくるだけの生活。
もううんざりだった。
将来は国公立の大学に進み、安定した生活を送りたい。そう思っていたから宿題や予習は欠かさずにやっていた。このお陰で成績は良かった。
そして、今日もまた、そしてこれからも同じ生活が続くはずだった。少なくともそう思っていた。