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私はオートバイ  作者: 京丁椎
8/18

私はCBR250(高村ボデーのお遊び)

小さな部品が入手できずに手放されたCBR250

彼女がたどった数奇な運命とは・・・

私はCBR250。直列4気筒水冷エンジンを搭載したバイク。

今や絶滅したクウォーターマルチのレーサーレプリカタイプだ。


バイクブームが過去のものとなった今、私の部品は出るのか出ないのか。

1つの部品が壊れただけで廃車になりかねない運命にある。


「部品が出ません。何か流用出来ないか調べてみましょうか?」

私を診てくれていたバイク屋さんの提案を聞いたオーナーは


「いや。丁度良い機会だし買い替えますわ。」


あっさりと却下してビックスクーターに乗り換えてしまった。


薄情者め!でも、20年以上ありがとう。さようなら・・・。


冷却ファンが壊れたけれどエンジン自体は生きている。


修理した場合、その手間賃を車両代金に乗せて売れるのか?

考えた末にバイク店は私を修理することを諦めて


『書類付き 部品取りOrレストアベースに』

として売り出した。


部品供給の怪しいバイクは同じ型の仲間と共食いで生き残る。

修理されるか部品取りにされるかは紙一重。


・・・私は部品取り車となった。


レブリミット18000回転を誇るエンジンが降ろされ同型の仲間に積まれた。

その他の部品も使える物は外され、代わりに程度の悪い部品が取り付けられた。


そこそこの見てくれだったのに、今や廃車寸前のボロバイク。


それでも書類は有る。まだ書類付きフレームとして道路へ戻ることは出来る。

車庫で眠る日々が続いた。そしてある日。


処分の為、あるバイク店に持ち込まれた。


荒く乗られるレーサーレプリカタイプのバイクで20年以上走れたのだから悔いはない。


今はこんなだけど峠やサーキットを走り回ったんだ。使命は全うした。

そんな事を思う私を見て何か話している人が居る。


「お?面白いもんがあるやんか。」


「ああ、処分を頼まれてるんですわ。要ります?」


「おう。面白そうやな。書類は有るか?無いなら要らん。」


「はぁ。有りますよ。エンジンは有りませんけどね。」


「これに原付のエンジンを載せたら原付になるんか?」


ホンダモンキーに150㏄のエンジンを積んで普通自動二輪登録した例は

聞いたことはあるし見た事も有る。でも逆は知らない。


「どうせなら車体と一番かけ離れたエンジンにしよう。」


私は高村ボデーという自動車板金工場へ運ばれた。


何やら小さなエンジンに合せたブラケットが造られている。

別の工場に運ばれた私に新しいエンジンが搭載された。


カブのエンジンだ。


45ps/15000rpmのDOHC水冷4気筒から空冷単気筒7ps。


えらく小さなエンジンに積み替えられてしまった。


笑いたければ笑え。


「これは仕事で引き受けたんかな?それとも社長の遊び?」


「新人の練習台っす。外装は新人が仕上げます。」


「完成したら売るんかな?」


「社長は何か考えているみたいですよ。」


再び私はトラックに積まれて工場を移動した。

おじさんが若い男の子に何か言ってる。


「お前もそろそろ(塗装を)吹いても良いと思う。これで練習せい。」


「歪んだステーはどうして欲しがっている?削れたカウルは何を求めている?」

「鉄の気持ちになれ!アルミの気持ちになれ!樹脂の気持ちになれ!」


男の子は怒鳴られながら必死で私を修理してくれた。

所々にカブやモンキーの部品を流用して男の子は必死になって私を仕上げる。


「ええか、ステンレスは熱がこもりやすいからな。リズミカルかつ素早く。」

集合管・・・いや。マフラーはステンレスでワンオフ。

サイレンサーはヒートガード付きのカブ90の物を流用。


昔と同じとはいかないけれど私は生まれ変わった。

最後にステッカーを貼って完成。


CBR90。良く見るとCとBの間に小さなUの字が入っている。


「よし。カッコイイやないか。面白いやないか。合格!」

おじさんが男の子の肩をパシパシ叩きながら笑っている。


その後、私は再び登録されて道路へ戻った。

普通自動二輪を原付2種として登録するのは珍しい事だったみたいで

一悶着あったらしい。


「お前にやる。通勤に使うなり遊びに乗っていくなり好きにしなさい。」

私を塗ってくれた男の子が私の新しいご主人様となった。


無事に道路へ戻った私に災難が降りかかる。

とにかく警察に止められる。登録書類を見せるように言われる。

カウルの中を覗けば載っているのは小さな空冷単気筒エンジン。


「今都のバイク屋じゃあるまいし、不正登録なんかしないっす。」

「きちんと陸運局で聞いて造ったッす。」と警察へ説明している。


滋賀県警本部から高嶋署に問い合わせがあったらしく。

今都でバイクの取り締まりが厳しくなったみたいだ。


これが社長の考えていた事なのかなぁ?


もう高速道理は走れない。頑張っても80㎞/h出す事も出来ない。

だけど私は今日も走っている。


私はCBR250改CuBR90。高村ボデー社長の遊び心。

そして、狼の皮を被った羊。




フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

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