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私はオートバイ  作者: 京丁椎
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私はDio(沢井綾所有)

高嶋郡に嫁いできた奥様が嫁入り道具として持ってきたスクーター。

長年頑張ってきました。製造後20年を超えるのですが・・・


このお話はフィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切関係ありません。



私はDio。ホンダのベストセラーなスクーター。

つい最近、生産中止になったらしい。最終型の形式はAF68.

私の形式はAF27。古~い2ストローク時代のDio。


スーパーDioなんて呼ばれています。


最初は『安曇河町』ナンバーだった。もう26年も前の話よ。

その頃は大島サイクルになる前の大石サイクルだったわね。


大津市から来た若奥さんの自転車代わりに大活躍したのよ。

何処に行くのも一緒。高嶋郡内を走り回ってたのが懐かしい。


しばらくして赤ちゃんが出来て、旦那さんが乗るようになった。

赤ちゃんが生まれてからは奥さんは軽自動車に乗り始めて私の出番は減ったけど

旦那さんが私に乗って駅やコンビニ。短距離の移動は私の出番だった。


家族に愛されて、走り回ってメーターは1周した。


「おお~新車に戻った」

メーターを見た旦那さんが笑って奥さんと話してたなぁ。


その頃になると周りの若いスクーターは『高嶋市』ナンバーになってた。

平成の合併で高嶋郡から高嶋市へ。時代が流れるのを見ていた。


さらに家族の足として走り続けて十数年経った。

メーターは2周目。私の整備をしてくれていたお爺さんは引退した。

いつの間にか客として来ていた男の子が私を整備している。


私の仲間はだんだん少なくなっていった。

この頃から排気ガス規制が始まった。4ストロークエンジンが出始めた。


新型車は優等生だけど覇気が無い。


奥さんは軽自動車。旦那さんは出世して乗用車に乗っている。

出番が減った。そろそろ引退かと思い始めた時。


免許を取ったお嬢ちゃんが私に乗ることになった。


お嬢ちゃんを乗せて高嶋高校へ3年弱通った。


最後の御奉公。雨の日も風の日も走り続けた。

とうとうメーターは3周目半ば。私はまだまだ元気だけど

同じ型の仲間たちはずいぶん減ってしまった。


お嬢ちゃんは遠くの大学へ行く事になり、今度こそお役御免。

すっかり周りのスクーターは4ストロークエンジンばかりになっていた。


煙を吐く私を見て嫌そうな顔をする人が居る。

アイドリングしているだけで近寄って来る警官もいる。

整備不良?とんでもない。整備不良ならここまで長生きしない。


解ってる。もう私が走る時代じゃない。時代は変わったのね。


親子2代で大事に使ってくれたことに感謝・・・。

カストロールのオイル・・・美味しかったです。


ありがとう・・・さようなら。


私は長年住み慣れた家を離れ、大島サイクルに戻って来た。

もう若くない。排気ガスも汚い。処分かなと思っていた。


「年式の割に程度も良いし、代車にでもするか。」

すっかりおじさんになった男の子が私を分解し始めた。


「やっぱり。この頃のスクーターは造りが良いな。」

鼻歌交じりで分解・清掃・点検・調整・部品交換・・・。


マフラー出口からバーナーを突っ込んで火をつけてカーボン除去。

エアーを吹き込んでチャンバーにたまったオイルと共に燃やしていたら

ご近所さんが何事かと飛んできた。


ちょっと驚いた。


私は若返っていく・・・大島サイクルで代車として走る余生も悪くない。

そんな事を思っていると、騒がしいお嬢ちゃんが飛び込んできた。


「なぁ~おっちゃん。友達がバイク欲しい言うし今都のバイク屋に行ったんや。」


「ふ~ん。そうか~。」


「ピカピカのバイクばっかりやったんやけどな、

高価過ぎて買えへんねん。予算10万円って言うたら鼻で笑われたわ!

安曇河(びんぼうまち)の〇〇が買えるような安物は無いって!」


「まぁ気にするなや。他の店で買えばエエだけやし。うちの店で買う?

女の子やったら足を揃えて乗れるスクーターが良いか?

古いけどヘルメットの入る奴が2万円で有るで。」


男の子とお嬢ちゃんが話しているのを聞いて不思議に思った。


私以外にスクーターなんて見当たらないけど・・・?


整備が終わって元気になった私は女の子とお見合いをした。


ポニーテールの清楚な娘。


「何だか古いスクーターだね。」なんて言いながら試乗。


若い頃は元気が売りだったのよ。今の子にも負けないわ。

「凄い!速い速い!」と大喜びして買ってくれた。


私は再び安曇河町から高嶋高校まで走ることになった。


しばらく走るうちに私はボアアップされて2種スクーターになった。

長年着けてきた安曇河町ナンバーは、真新しい高嶋市ナンバーになった。


この車齢(とし)でボアアップなんてするとは思わなかった。

しかもプーリー加工まで・・・若いスクーターみたいで恥ずかしいじゃない。


若い頃よりパワフルになった私は高嶋市を快走する。

同期のスクーターは見かけない。昔に比べるとバイクが減ったように思う。


もうすぐメーターは4周目。4万キロ走行は目前だ。

タイヤもエンジンも整備したばかり。まだまだ走れそうだ。


私はスーパーDio。時代の移り変わりを見てきたスクーター。


元気だけど20世紀生まれ。古ぼけたスクーター。




2ストローク時代のDioと言えば速いスクーターで有名でした。

イメージリーダーのZXは7.2馬力と強心臓を誇ってレースからヤンキーまで

大人気。残念ながら綾のDioは普通のスーパーDioです。

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