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木屋町ホンキートンク Ⅱ  作者: 鴨川 京介
第1章 スタッフ募集中!
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07 うん、その反応、よくわかるよ。

 「……で、ハルさん。今の話どっからがほんまでどっからがネタなん?」


 「はじめっから最後まで、ほんまの話。誰が1時間かけてネタしゃべるかいな。」


 俺が真剣にしゃべってたにもかかわらず、失礼な。


 「ハルさん、この店って結構有名になってるの、知ってはりますか?」


 千春ちゃんがそう言った。


 「うん。最近なんかテレビが取材させてくれって来てるらしいね。そんな報告がマネージャーから上がってたな。よく知ってるね。」


 千春ちゃんは首を激しく縦に振りながら、俺に詰め寄ってきた。


 「今、ネットですごい噂になってるんですよ。京都に『ネコミミ』の女の子がいる店があるって。それがガールズバーやキャバクラじゃなくて居酒屋(・・・)だって。かなりのマニアが写真を撮って掲示板に載せて、お祭り騒ぎになってましたよ。」


 あぁ、そういうやつらも出てくるんだろうな。いまどきスマホで、すぐに写真も撮れるしね。いや俺もはじめケモミミ出して尻尾出してるって聞いて驚いたんだよ。でも、すぐに『そういう店』ってことで認知されたんだって言ってた。そういう店ってどういう店だよって少しばかり問い詰めたいが、申し訳なさそうな涼子ちゃんを見て、やめといたんだよね。何でもお客様が倒れ掛かってきて、一緒に倒れちゃった子がびっくりして、魔法が解けちゃったらしいんだよね。この店の制服はカッターシャツにジーンズにテンガロンハット、ウエスタンブーツって感じなんだけど帽子が脱げちゃったのもまずかったようなんだ。

 それ以来、開き直ってケモミミと尻尾出して営業してるらしい。それが結構受けて今や長蛇の列になってて、取材の申し込みが来てるって話だったな。


 「もともとは共存のために、人とあやかしはこの世界を守っておったのじゃ。また元に戻るためにはちょうどいいきっかけじゃったのかもしれんし、しばらく放っておいてもいいじゃろう。」


 おばばは、そういって、たまに若い姿で店員に交じってるって聞いたんだけど、あれってホントかな?


 「それに、女の子がすごい美人って噂も、書き込まれてました。まさか今日、自分がこのお店に連れていかれるなんて、思ってもいなかったんで、すっかり忘れていましたが。このお店がハルさんのもので、女の子がすべて『あやかし』だったなんて…。」


 すごく驚いてるようだね。じゃあ、最後にもう一つ爆弾おとしておこうか。


 「うん。あやかしに驚いているようだけど…。三人ともその『あやかし』の血を引いてるみたいだよ。他の人より特に濃くね。その証に三人ともすごくMPの保有量が多いよ。社長が800、沙織ちゃんが700、千春ちゃんが600ってところかな。ちなみに普通の人で1~5程度だけどね。」


 「「「え!?」」」


 うん、そりゃ驚くよね。自分が純粋な人ではなく、あやかしの血が混じってるって聞くとね。


 「ちなみに社長はタヌキ、千春ちゃんは猫、沙織ちゃんはイヌか狼だと思う。」


 それぞれがそれぞれを改めて見て、目を丸くしていた。


 「それって…。」


 「ああ、大丈夫。他の人にはわからないよ。俺も今日、駅で見てびっくりしたんだから。この万眼鏡と俺の分析能力がなければ、誰も気づかないよ。三人とも今まで人より感がいいとか、気配を感じるとか多くなかった?」


 「「「確かに!」」」


 うん、俺と一緒だな。


 「それって無自覚に魔力を使って、周りを探っていたかららしいんだよね。」


 「じゃ…じゃあ、私たちも魔法を使えるようになるんですか?!」


 「千春ちゃん、声が大きいって。うん、確かに訓練したら使えるようになると思うけど…。」


 「「「使えるようにしてください。お願いします波瑠さん、いや、京介様。」」」


 いや、いきなり怖えーって。社長まで目が輝いてるよ。


 …京介様って。


 「いやいや、この世界では無理だよ。この世界には魔素が少ないからね。魔法使うとすぐに魔素の枯渇で動けなくなる可能性が高いよ。気が張ってる現場が終わった瞬間、どっと疲れることって今までなかった?ああいう感じになるんだ。」


 「じゃあ、異界に私もつれて行ってください。」


 「私も。」


 「俺も。」


 …って、また社長もかよ。あんたももう45だろ?家庭もあるし無理なんじゃね?


 「ちょっと落ち着いて。三人とも、異界ってまだそんなに安全なところじゃないんだ。魔物も多いしね。それに向こうに行けるかどうか…う~ん、どうなんだろうな。異界に入って弾かれちゃうんじゃないかな…。」


 俺は話を逸らそうとした。恐らくだが、この三人が持っている魔力量なら異界にはじかれることもない。しかし、人様の娘や一家の大黒柱を勝手に異界に連れていくこともできない。危険が多いからね。


 「それならおそらく大丈夫じゃろ。京介も気づいておるんじゃろうに。」


 そういっていきなり俺たちのテーブルに、女の人が近づいてきた。


 誰?これ?このボンキュッボンのないすばでーな女性は。なんとなくわかるんだけど、答えたくないな。


 「わしがさっきの話に出ておった、猫又のおばばじゃ。よろしくな。」


 そういってないすばでーな女性は、俺の横に座った。


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