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木屋町ホンキートンク Ⅱ  作者: 鴨川 京介
第1章 スタッフ募集中!
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04 従妹だよね?

 俺は一度クラブハウスに転移で戻り、風呂に入って着替えた。


 ここの風呂はいい。元々がゴルフ帰りの客が入る為のものを改装したんだが、広くて全面ガラス張りの見晴らしも最高だ。

 風呂上がりのビールも最高なんだが、この後、飲みに行くのでやめておこう。

 おっさん二人で飲むのも味気ないけど、まあ、これも今まで仕事もらってたって義理もあるしね。


 それにオープン以来、行ってなかった『木屋町ホンキートンク』に行くのも楽しみではある。

 洋風居酒屋『木屋町ホンキートンク』を仕切っているのは、涼子ちゃんだ。


 涼子ちゃんにはいろいろとお世話になっている。

 俺の魔法の師匠でもあるしね。


 猫又のおばばが、木屋町のまねきビルで「なんか面白いことを、このビルの1階でやるのじゃ。そうじゃ、居酒屋じゃ。」とか何とか言って、いきなり1階を洋風居酒屋に仕上げてしまった。結局自分たちがいつでも来て、騒いでいられる場所が欲しかったんだと思う。久しぶりの京都の町だもんな。この150年って、別世界のように京都が変わってるから、かなりワクワクしてたもんな。まねきビルからなら京都の町に遊びに行くのに都合もいいしね。拠点がほしかったんだろう。


 店のつくり自体は悪くない。むしろ俺好みに仕上がっている。どうせなら俺もこの店で飲んでいたいからね。口出しはさせてもらった。


 西部劇に出てくるようなスウィングドアをつけて、木製の丸テーブルと、木製の背凭れのついた椅子と、内装も木板を張り付けたようなデザインにした。古いシャンデリアとバーカウンターを長くとって、スツールも木製で揃えた。最もスツールや椅子に貼ってある革は魔物製だけどね。誰にもわかりゃしないだろう。


 あと、酒はバーボンと日本酒で揃えた。バーボンもアメリカまで行って、いろいろと買い込んできた。

 日本酒は、日本全国の地酒を取り寄せてくれる酒屋が京都にあるので、そこで扱っているすべての種類を注文した。

 もちろん京都・伏見の酒も全種類用意している。二条にある次男が俳優やってる酒蔵からも、仕入れてある。

 もちろんおばばや長達と試飲は済ませてあるお墨付きばかりだ。


 あと、店の一番奥にはステージを作ってある。ここでいろんな演奏ができるようにってことだったんだが、結構あやかしの皆さんは楽器がうまくて、バンジョーやらギターやら、かき鳴らしながらすぐに覚えていった。楽器はほかにもいろいろと置いてある。スタンドピアノやタンバリン、マラカス、打楽器…京都にある楽器屋で、これらも取り寄せた。スタンドピアノだけは黒塗りじゃなく木の色そのままのものがないか探してもらって中古のものをレストアして置いてある。うん、その方が雰囲気にあってるからね。今では居酒屋なのにショータイムがあるってかなり盛況らしい。

 そういえば、涼子ちゃんにも電話して、席取っておいてもらわないとな。


 「旦さん。すでに連絡済どす。」


 輝乃が急に現れて、予約が既に済んでいることを教えてくれた。


 「お、そうか、ありがとう。ところで、その『旦さん』ってなんだ?」


 「いややわ、旦さん。先日『ご主人様はあまりに恥ずかしいから他の呼び方にせえ。』って言わはったから、変えたんどす。」


 確かに言った記憶があるな。所構わず、振袖を着た中学生ぐらいの子に『ご主人様』呼ばわりされたら、周りが俺を見る目が辛い。うん、危ない人認定だ。


 「いや、それにしても『旦さん』は余計に俺が辛くないか?中学生に見える女の子から『旦さん』って…。だからと言って『ご主人様』ってのも、駄目なんだけど…。」


 「ほなら、こないしたらよろしいやん。」


 と、いきなり輝乃は妙齢の美女に変化していった。


 「これぐらいの年齢やったら『旦さん』って呼んでも、かましまへんやろ?」


 服装も和服でかなり色っぽい。


 「い・・・いや、俺って会社では25ぐらいなんで、もうちょっと若くしてくれないと釣り合いが…って、そうじゃなくて。『旦さん』って言葉は旦那さん、つまり夫のことを指す言葉だからね。確かにご主人って意味もあるけど。俺と輝乃が夫婦に見られちゃうよ。唯でさえ姓がおんなじなのに…。それに、今まで中学生程度だった子が、いきなり35ほどの妙齢の女性になったら、仕事での面会もおかしくなるだろ?」


 「うちは女房でも、かましまへんのに…。」


 …そんなこと言ったってな。


 「…何やら不吉な予感がして、来てみたら何の話をされているんですか?マスター。」


 「京介様。少しオイタが過ぎるようだと『レティーズ・ブートキャンプ』に強制入隊させないといけなくなりますが、よろしいですか?先日、ヤマトの元宰相たちは2週間で強制できましたので、京介様だと1か月コースぐらいになるかと思われますが。」


 「い…いや、ちょっと待て、お前たち。俺は別にやましいことなんてしてないぞ。今俺と輝乃は俺の呼び方の話をしていたんだ。『旦さん』って呼びだしたから、「それじゃ夫婦に間違われるぞ」って話をして…。」


 「それじゃ、私たちとも夫婦になってもらいます。マスター。」


 「当然ですね、京介様。私も伴侶として頑張りますので、末永くよろしくお願いいたします。」


 「いや…そうじゃなくて。レティ、頭を上げなさい。お前たちは俺の持ち物から生まれたあやかしなんだから、俺にとっては子供みたいなもんじゃないか。なんで俺の嫁の話になってんだよ。」


 「そやかて、異界やったら重婚もできますやろ?でしたら、うちら3人を娶ってもうて…。」


 「いやいやいや、だからなんで俺とお前たちが、結婚する話になってんだよ。違うだろ?俺の呼び方の話だったろ?」


 それからしばらく、喧々諤々と揉めた。


 結局、輝乃は高校生ぐらいの容姿になり、呼び方も『(にい)様』で、落ち着いた。

 …妥協した。うん、かなり妥協させられた。にい様って呼ばれてる俺を想像して、もだえ苦しんだ。


 それぞれが持っている免許証を見せられた。年齢がみんなひとつ違いになってた。

 愛が22歳、レティが21歳、輝乃が20歳。で、俺が25歳。

 みんな俺の親戚として通っている。レティに至っては金髪に青い眼なんだけどね。これも親戚、従妹で通している。


 「異界では3人とも妻ということでよろしおすけど、日本での本妻は決めなあきまへんな。」


 輝乃、せっかくおさまったのに余計なこと言うんじゃない。


 「せやかて、従妹やったら結婚できるんでっしゃろ?他のおなごに取られる前にしっかり唾つけとかな、あきまへんからね。」


 「いやいやいやいや、もう結婚はいいよ。それに俺、もう50過ぎてんだぜ。確かに性欲はあるけど、そこまで切羽詰まってねーし。」


 「じゃあ、三人とも『愛人』ということで。」


 「だから、なんでそうなる!」


 俺は疲れてきた。なんとなく、こいつらにからかわれてるのは気づいてるんだが、ここで止めとかないと、えらいことになる気がする。済し崩しにそういう関係にでもなってみろ。気づいたら電子機器のあやかしとの子供ができることになるぞ。スマホやタブレットやパソコン相手に50の男が『俺の嫁』って、どんだけ末期なんだ。


 俺は膝をついて、四つん這いになってしまった。疲れた。


 あ、そろそろ時間じゃないか。


 「もう待ち合わせの時間だから行くけど、この話はこれで終わりね。」


 俺はその場から逃げるように、木屋町のビルの屋上に転移した。

 まったく、レティは今、ヤマトで采配ふるってたはずなのに…。

 え?輝乃のミニタブレット経由でいつでもどこでも人化できるようになったって?


 …そっか。聞いてなかったからびっくりしたよ。


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