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木屋町ホンキートンク Ⅱ  作者: 鴨川 京介
第3章 カモガワスタンピード
39/39

39 うちらの話も聞いてぇな

 「なんか、みんな、大変やったみたいやで。」


 瑞月ちゃんが同じように席についてそう話しはじめた。


 「じゃあ、まず沙織ちゃんから聞かしてもらおうか。」


 俺は又、ビールを飲みながらつまみを食べて話を聞いた。


 「私のところは、実家の問題でしたね。メールがかなりの数、届いてました。まあ、2か月音信不通だったんで、かなり心配してましたね。お父さんやお母さんからえらく怒られました。『そんな会社辞めてまえ!』って、そりゃひどい剣幕でした。」


 …そりゃそうだろうな。ちゃんと親に話してきてたんじゃなかったのか。…そうか。マナフォンだけ持って、普段使ってたスマホはこっちにおいてたんだな。これは盲点だったな。


 「そりゃ悪いことしたね。スマホは日本に置いて行ってたんやね。仕事(?)では、マナフォンしか使ってないもんな。マナフォンにも固有番号はあるからそっちを教えておいた方がいいのかもね。個人のスマホに掛かったのまでマナフォンで取れればいいんだけど…。愛ちゃん。その辺はどうかな?」


 愛は俺の後ろに控えていた。


 「すでにマナフォンには固有番号が入っていますので、それを2個に増やすのはあまりお勧めできないかと。使用を分けてもらうのがベストだと思います。異界でもこちらで使っていたスマホが使えますし、マナフォンに収納しておけば、着信も知ることができると思います。」


 そうか。うっかり仕事上の話を個人のスマホでするのも防げるしな。やはり分けておいた方がいいんだろうな。


 「…ということらしいんで、申し訳ないがみんなも個人のスマホはマナフォンに入れておいてほしい。それで、沙織ちゃん。実家に帰って怒られた?」


 「はい。かなり心配させたみたいです。警察にも届を出してたみたいで、すぐに取り消してもらったんですけど、2か月行方不明になってたんで、警察でも怒られました。まさか正直に『異界に行ってて、スマホが取れなかった』って言うわけにもいかないし…。忙しくて、なかなか電話に出れなかったということで納得してもらいました。でも、その後も今の会社を辞めろってしつこくて。」


 そりゃそうだろうな。これは俺の配慮が足りなかったな。


 「だから『こんだけ稼いでるのよ。文句ある?』って、通帳見せちゃいました。」


 …あちゃぁ…。それはまずいかもしんない。


 「それはまずいだろ…。大学卒業して何年もたってないのがいきなり億稼ぐなんて、下手したら家族が集りに来るぞ。」


 「実家は最近立て替えたばかりだったので、そのローンを全額払ってきました。これ以上は出さないからねって言って、後1億ほど現金でおいてきました。」


 …えらく大胆なことするな。


 「それって余計に心配しなかった?大丈夫?」


 俺の子供がそんなことしたら、どんな犯罪に加担してるのかって、ひやひやするけどな。


 「ちょうどタイミングよく、京介さんの放送(・・)が流れて、家族には厳重に口止めしたうえで、『この人の会社にいるの。』と、説明しておきました。まあ、最も移籍した時点でグローバルシナジー社の名前は伝えてあったんで、その時のメール見返して、納得してたみたいですけど。」


 そっか。迷惑かけちゃったな。


 「そのあとは、会社でやってることを根掘り葉掘り聞かれて、嫌になっちゃいました。私は『好きな人と一緒に働いてるから満足だ。』って、言っておきました。そしたら『一度連れて来なさい。』って、お父さんが…。」


 ……いやいやいや。まてまてまて。なんでそうなる。なんで俺が実家に挨拶に行かなきゃならん。まるで嫁に貰うみたいに…。


 「それはち~っと、早いんちゃいますか。」


 後ろに居た輝乃が、ずいと前に出てきた。


 「にい様の嫁に名乗りを上げるんなら、まずうちらの承諾、得てからやおへんか。」


 …いやいやいや、それも違うからね。輝乃の後ろにレティと愛も腕組んで、6人娘を見回した。

 うん、お前らちょっと落ち着こうか。


 「おいおい、ちょっと落ち着け。沙織ちゃん。悪いけど俺は嫁をとる気はないからね。会社の経営者としてあいさつに行くのはいいけど。今回のことも含めてこれからのこともあるだろうし、一度挨拶に入った方がいいのか…。…これって、みんな同じだよな?」


 俺は6人娘を見回した。すると全員がうんうんと首を縦に振っている。


 「じゃあ、近いうちに時間作って、それぞれの家庭訪問と行こうか。場合によっては少し家族の方には悪いけど、記憶を操作させてもらうかもしれない。これは、みんながお金を持ってることが周囲にばれると、危険が増えるからね。」


 「その点については、既に対処しております、ご主人様。」


 レティが、そう言ってきた。


 「マナフォンからの連絡を受けて、すでに眷属の皆さんが処置(・・)を施しております。ここにおられる皆さんはそれぞれ、多忙な会社で高給取りではあるが、なかなか会えない環境で、世界中飛び回って仕事をしているという設定(・・)で統一しております。それに今回、それぞれの家族の借金やローンなどを一括返済してきているので、当分は問題ないかと思われます。後、マナフォンのアドバイスで、それぞれが実家に1億ほどの現金を置いて来ております。最もそれぞれ母親に託した形で、父親には意識させずに処置(・・)いたしました。」


 …どう処置したか聞けねーよ。


 「…そうか。それにしても今後のこともあるから家庭訪問はやっておこうか。他に問題があった人はいる?」


 美由紀ちゃんが手を挙げた。


 「私のところは食堂やってまして、かなりガラの悪い人たちに因縁つけられて、お店の売り上げも落ちて閉店寸前でした。マナフォンと相談したところ、そのチンピラたちの組を眷属の皆さんが壊滅してくれたんで、助かりました。私も店の改装費としてお金置いてきました。」


 「眷属の皆さんが壊滅って…。…人死んでないよね?」


 「それについてはご安心ください。木屋町で行ったことと同様の処置(・・)を施しました。他にも、綾香の実家の店も同様なことが起こっておりましたので適切に処理(・・・・・)いたしました。」


 輝乃がそう答えた。


 「私のところはお兄ちゃんのお店だったんだけどね。」


 綾香が付け足して、教えてくれた。


 「千春ちゃんと幸子ちゃんのところは特に問題なかった?」


 俺は二人に向き直って聞いた。この二人だけは特に発言がなかったもんな。


 「私は元彼とちょっと揉めて…。最終的には公園に呼び出されて、よりを戻すつもりはないってはっきり言ったんだけど、逆上されて。拉致されかかったんだけど、今の私に勝てるわけなくて、ボコボコにしておきました。これで二度と私の前に現れることはないでしょう。」


 おぅふ。…ハードだったんだね、千春ちゃん。


 「私のところは、父がリストラにあって、途方に暮れてました。マナフォンに相談したところ、グローバルシナジー社と取引のある会社に就職が決まりました。ありがとうございました。」


 幸子ちゃんはぺこりと頭を下げた。

 俺は輝乃の方を見て、どういうことか教えてもらった。


 「幸子はんの実家近くに、飲料メーカーの工場がありましたよってに、総務職の募集がないか、掛け合ってみたんどす。そしたらすぐに空きがあったようで、部長待遇で入社が決まりはりました。」


 …深くは聞かんぞ。まあ、向こうも利益があると見込んでの採用だろうからな。その分輝乃の心情もよくなっただろう…たぶん…。

 これはこの子たちの家族を守るためにも何かやらないといけないかもしれないな。


 TAPがあるか…。あれにはかなりいろんな業種が必要だからな。真剣に考えてみるか。


 その後も、実家に帰って同級生に会った話とか、親からいろいろ言われた小言の話とか、話題が尽きることがなかった。そういえば、この子たちとこうやって話しする機会って無かったもんな。


 俺はそれぞれの話を聞いた。


 俺たちはその後、瑞月ちゃんの店に連れていかれて、朝までカラオケ歌って騒いだ。愛や輝乃やレティの眷属も一緒に騒いだ。飲んだ。

 朝方に松屋に行って牛丼まで食べた。もうお腹いっぱいだ。

 みんなもよく食うよね。


 そのあとは徐々に迷彩かけて、完全に消えてからクラブハウスに転移した。

 それぞれ大浴場で温泉につかった後、朝の9時ごろ、ようやく就寝となった。

 みんなレベルが上がってるから体力がついて、タフなこと。


 その日の夕方、みんなはそれぞれ起き出してきた。

 それぞれすっきりした顔をしてた。みんなもストレスたまってたんだろうな。

 夕食を食べながらTAPの話になり、そのままロビーで企画会議が始まった。


 いいな、やっぱり。こういうブレスト。どんどん発想がわいてくる。

 一応、企画書に纏めなおした。これを実施計画書にしなければいけないんだが、それはまた今度だ。

明日から、少し休暇を取って、その後、ヤマト王国にもいかなきゃね。


 …俺に休んでる時間はあるんだろうか?


 みんなと企画会議しながらも、立体ビジョンに流れてくる世界情勢や日本の要請を流し見て、ため息をついた。


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