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木屋町ホンキートンク Ⅱ  作者: 鴨川 京介
第1章 スタッフ募集中!
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03 そろそろ眷属の皆さんが…

 「さて、次に眷属の皆さんのことなんだけど…。おばば、異界の方に、この頃ちょくちょく出かけてるよね?あれってどういうこと?」


 おばばは、ぴくっと反応した後、目をそらしながら、話し出した。


 「え~っと。うん。あれはじゃな。ちっと異界がどの程度変わったのか、散歩がてらに見に行っておったのじゃよ。うん、そうじゃ。散歩じゃ。」


 そうじゃそうじゃと長の皆さんが復唱しだす。

 俺は少し笑ってしまった。


 「ぷっ。うん。危ないかもしれないから、土地の調査が終わってからにしてねって、お願いしておいたよね。」


 「じゃ、じゃから散歩じゃ。まだ冒険ほどはしておらん。」


 おばばは、まだ目をそらしながら、俺に話した。


 「うん。眷属の皆さんから報告があってね。各地で出会った異界のあやかしが、おばばたちのうわさをしてるって。何でも相撲を取ったり、空を飛びまわったり…いろいろ聞いてるよ。」


 おばばはうつむいてしまった。


 「おばば。俺は別に怒ってるんじゃないよ。おばばたちの安全も確保しなきゃいけないんだから、そういうのは、ちゃんとこっちにも伝えてねって話なんだよ。むしろ、これからは俺から依頼を出すから、異界のあやかしの長達を探し出して、結束を固めるように動いてほしいんだ。せっかく日本を結界で覆っても、あやかしたちが悪さしたら水の泡だからね。基本、負の魔素がたまっているところは浄化して溜めないように指導してほしいんだ。」


 急に顔を上げて、目が生き生きと輝きだした。まったく現金なんだから。


 「おぉ、そうか。わしらの力が必要なんじゃな。うんうん、任せておけ。異界のあやかしネットワークなんぞすぐに作ってやるわ。」


 「浄化も忘れないでね。あと、魔素が発生している場所の特定もお願いね。こっちで情報をまとめておいて、必要なら神社のような結界がいるかもしれないしね。」


 「うんうん、任せておくのじゃ。」


 早速長達と話し合おうとしている。


 「ちょっと待ってくれる?話し合いは全部の話が終わってからにしてほしいんだ。うん。じゃあ、あとはこの作戦に必要な人、物、金の問題だね。眷属の皆さんは、どれぐらい加勢してくれるだろうか。」


 「実は眷属の者どもからは『わしらはいつ異界に行けるんじゃ』と矢のような催促を受けておっての。そういうことなら希望者全員行かせてみればよかろう。」


 「ちょっ、ちょっと待ってよ、おばば。眷属の皆さんって全部で何人ぐらいいるの?」


 「やおよろずじゃ。800万の眷属がおる。」


 「う~ん。それ全部ってわけにはいかないよ。それぞれに持っていってもらう道具も、用意しなきゃいけないし。ヤマト統一後はヤマト王国と同じような文化水準まで引き上げる予定だから、各町を結ぶ街道や各種施設の建設、周辺の魔物の駆逐とあやかしたちの保護も必要だから…とりあえず20万人ってところでどうだろう?京都から東に向けて10万人。西に向けて10万人ってところかな。それぞれで拠点を作って何人か残して、次に行って、ってしていくと、結構な数の人に、異界に残ってもらわなきゃいけないかもしれないな。その補充をしていって、たまに入れ替えてってことで、何とか今は納めておいて。」


 「確かに慎重に事を進めねば、あやかし同士の争いにもなりかねんな。」


 「うん。そういうのすっ飛ばしてどこかの誰かさんたちは散歩(・・・)に出かけてたみたいだけどね。」


 「ハハハ…。まあ、済んだことは、この際いいじゃろ。さっそく選別に取り掛からんといかんな。どれ、伏見に戻るか。」


 おばばたちは、そそくさとゲートを通って、伏見稲荷の武家屋敷に帰っていった。


 「まったく。一番長生きしてて一番子供なんだから。俺が聞いてる話だと、散歩どころか『怪獣大戦争』並みだったようだけど…。まあ、無事だったんだからいいか。さて、あとは物と金か。輝乃、どんな状況かな。」


 「はい、ご主人様。現在のところ余裕をもって資金は調達しております。しかし、物品の手配については、今からでございますので、相当の時間がかかると思われます。特に眷属の皆さんの装備一式と魔道具については、どこまで追いつけるか…。伏見工場に頑張ってもらうしかありませんね。三条の工房で新規開発を、伏見工場で量産を分担した方が効率が良いと思われます。」


 「うん、じゃあ忠太郎、申し訳ないけど三条の工房の方で開発をお願いね。それと小太郎は、その開発したものを必要な数揃えられるように、手配と監督をよろしくね。」


 「「はい、わかりました。」」


 「よし、じゃあさっそく取り掛かってくれ。」


 それぞれが、自分のやらなければいけないことをするために、ゲートをくぐっていった。


 さて、みんなが準備している間に、俺も俺の(・・)用事を済ませておくか。異界の日本統一って何か月かかるんだ?当分会えない人たちもいるだろうし、少し挨拶しておこう。


 俺は大阪のイベント会社の社長に連絡して、今晩会うことにした。


 「おお、ハルさん。久しぶり。どうよ、元気してた?」


 「ああ、死なない程度には元気だよ。ところで今晩だけど、どう?」


 「ん?酒か?いいけど、急にどうしたんや。」


 「うん、実は当分会う機会もないだろうと思ってな。時間のあるうちに会っておこうかと。」


 「え?どっか行くのか?」


 「うん。その辺も含めて…、京都でどうよ。」


 「ええけど。大阪も寂しなるな。」


 「ハハハ。じゃあ、京阪四条の改札口に何時に来れる?」


 「そうやな。20時ごろになるんとちゃうやろか。」


 「オーケー。それじゃ20時に京阪四条で。」


 「わかった。じゃあその時に。」


 俺は電話を切った。ふ~。よし次だな。


 俺は瑞月ちゃんに電話した。


 「おはよー。京ちゃん元気してた?」


 「おはよう。ってもう18時やで。そろそろ出勤ちゃうんかいな。」


 「うん、今お風呂入ってたとこ。どうしたん?」


 「ん?あぁ、今日ちょっと店に行かせてもらうわ。当分忙しなりそうなんでな。」


 「そうなんや。うん、じゃあ待ってるね。」


 「おう。あとでな。」


 俺はそっけなく電話を切った。


 この二人ぐらいか…。今のところ挨拶しておかなきゃいけないのは。

 あとは…。俺はもう一人電話をかけた。


 「はい、もしもし。(にい)ちゃん?久しぶりやんか。元気してた?」


 そう、京都に住んでいる俺の妹だ。


 「おう。なんとかな。ちょっといろいろあって、一辺話しとこかな思て、電話したんや。今時間大丈夫か?」


 「う~ん、ちょっと忙しいな。」


 「そしたら明日にでも空いてる時間ないか?」


 「明日やったら12時ごろには、うち()家にいてるわ。」


 「そっか。じゃあ明日伺わせてもらうわ。」


 「うんうん、待ってるわ。ほならな。」


 あわただしく電話は切れた。そうだよな。もう19時か。主婦は今の時間帯、忙しいもんな。


 恐らくは妹も弟同様『魂の適合者』のうちの一人だと思う。

 それを確認して、弟とも話をしようと考えていた。


 俺は異界で確かにレベルアップもして強くなっていた。

 しかし、何が起こるかわからない。

 ましてこれから異界の日本を統一しに行くわけだから、もしも(・・・)のことを考えておいた方がいいと思う。

 俺にもしものことがあったら、申し訳ないが弟か妹に俺の役目を継いでもらわないといけない。そう、異界の分離、再結界化のことだ。

 弟はすでにあやかしの長達より、魔力量では上になっている。

 まだ、再結界のための魔道具開発なんかはこれからだけど、大枠はすでに考えてある。これを何とか託しておきたい。


 あと会っておきたいのは名古屋の人でなし(・・・・)と、東京の人でなし(・・・・)なんだけど…。


 まあ、明後日以降で考えてみるか。転移を使えば楽に行けるだろうしな。


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