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木屋町ホンキートンク Ⅱ  作者: 鴨川 京介
第1章 スタッフ募集中!
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02 帝からの依頼

 木屋町にある京介所有のビル屋上の、ペントハウスの会議室に、続々とあやかしたちが集まってきた。

 このビルの名称も『まねきビル』って名前になってるらしい。

 どんだけまねき猫押し(・・)なんだよ。


 伏見工場の魔開工房(魔道具開発工房)のスタッフも来ている。

 猫又のおばばをはじめとした、あやかしの長達も集まっている。

 レティも、ヤマト王国から帰ってきた。

 輝乃も駆け付けた。愛も人化している。

 うん、そろそろ始めようか。


 「みんな。集まってもらって申し訳ない。実は本日、東京におられる帝と会見をしてきた。その際に、日本の裏事情と併せて、いくつかの話があり、帝からの依頼もあった。いろいろと考えたんだが、回避できる方法はなさそうなんで、この依頼を受けることにする。そこでみんなに協力をお願いしたい。」


 「帝の依頼とはなんじゃ?」


 「うん。それを話す前に、その前提から話さなきゃいけないんで、少し俺の話を聞いてくれ。」


 俺はそこでみんなを見回して、話に集中していることを確認してから切り出した。


 「まず、今の帝のお立場の話なんだが、150年前のおばばたちが知っているものと、少し違っている。それは日本の歴史の中で『帝』と呼ばれる人が、初めて京都の土地を離れたことに起因している。京都に都が来たのは1,200年ほど前になるが、『帝』が京におられたのは、もっと昔まで遡ることになる。これはおばばも知っての通り、約1万年前、つまり、異界ができた頃まで遡る。」


 「日本には、そんなに古い歴史はないと思うのですが…。」


 「そうなんだよな。皇紀で数えても2,700年ほどなんだけど、国体を作る前から、この土地は特別な土地で、おばばや帝たちが守ってきているんだ。今生天皇をはじめ天皇陛下の万世一系の家系は、その帝の子孫にあたる家系になる。それが、この日本を日本足らしめるための、絶対条件なんだが。それは置いておこう。

 で、この天皇家とは別の流れとして、帝の一族もつながってきた。表の一族は国体を管理し、裏の一族は異界を管理してきた。これは魔素がこの地球に無くなったことにも関係するんだが、魔素、つまり魔法を使わず国を導き、国体を守ってきたのが、今生天皇率いる表の天皇家。帝率いる裏の天皇家は魔法、魔術を基本として異界の結界の維持、管理を担当してきた。決定的な違いはその魔素の保有量、つまり俺が言うところのMPの大きさの違いとなって残っている。ここまではいいかな?」


 みんな神妙に聞いている。


 「で、この一族が日本の国体の変化、つまり150年ほど前の明治維新によって、東京に遷都した時に、少しややこしいことが起こったんだ。」


 「ふむ。わしもあの時はいきなりじゃったから、よく事情は分かっておらんのじゃ。」


 「うん。それも含めて説明するよ。もともと京都の土地にずっといた一族が、国体を纏めるために2つの家系に分かれた。これが今から2,800年程前になる。そのあと表の一族は各地に都を移しながらも、最後には京都に戻ってきた。これが1,200年前だ。そして、それから明治維新まで、京都の御所を中心に政治が回っていた。この間に2つの家系は、その役割は違いながらも、お互い婚姻などを繰り返し、1つの家系として当時の貴族たちには認識されていた。

 どちらも敬う対象としてね。それが明治維新で東京に遷都した際に、一族郎党全員東京に連れていかれるという事態が起こったんだ。京都に天皇家ゆかりのものを残すと、そのあとまた、クーデターが起こりかねなかったからね。

 当時、天皇と帝はそれを承諾し、とりあえず東京に移って行った。あとで裏天皇家だけを京都に戻すためには、一時の国の混乱を避けるためにも、これは必要なことだったと思う。問題は、いつまで経っても裏天皇家が、京都に戻ってこれない事態が生まれたということなんだ。その間、おばばたちあやかしの長達がいろいろと手を尽くして、京都の結界は維持できていた。でも、これが日本各地となれば少し事情が違っていたんだ。」


 「どういうことじゃ?」


 「つまり、日本の他の土地で、次元のほころびが出て来かかっている個所が、増えてるそうだ。」


 これにはあやかしの長達もびっくりしたようだ。


 「で、まず一つ目の依頼は、これらの次元のほころびを修復するか、異界にある日本全土を結界で覆って、今の京都のように安定させるかしてくれってのが、一つ目の依頼となる。そこで眷属の皆さんの力を借りて、日本で出来つつある次元のほころびを修復していくってのが対処なんだが…。どうやらそれでは追いつかなさそうなんだよな。愛の方でシミュレーションしてもらった結果、それで追いついて、何とか持たせられるのが、10年程しかないようだ。10年を過ぎると修復が追い付かなくなり、やがて次元のほころびから魔物が現れだす。そしてそれを放置すると『滅び』に向かうことになる。俺も今回、帝から聞いて初めて知ったんだけど、小さな滅びつまり小滅びがほころびと呼ばれるようになったんだそうだ。」


 「それで、どうするんじゃ。」


 「うん。いろいろと考えた挙句の結論なんだけど、異界の日本を統一して、各種結界を張った方が、確実で安全なんだよね。幸い、眷属の皆さんが張り切って魔物を倒していってくれているようだし、忠太郎の方で人工衛星の打ち上げもできそうになってきてるようだし。異界の星全部ってのはまだ早いけど日本の領土すべてを覆う結界を張ることからまずはじめてみようと思ってるんだ。」


 「どうやって?」


 「まず異界の日本領土を平定する。ヤマト王国に服従し、配下に下るならその支援を行う。もしだめなら…レティ軍曹に預けて再教育しなおしていく。星そのものの存亡がかかっているからね。強制的にやっていくよ。その上でレーダードームのような施設を要所、要所に設置していく。自衛隊が行っている警戒レーダー網のようにね。ここまで行くのに眷属の皆さんの力を借りて約半年で行うつもりだ。」


 「それはいくらなんでも早急すぎではないか?」


 「うん。俺としてものんびりしたいのは、したいんだけどね。日本側の次元のほころびが、それぐらいの時期に破綻しそうなんで、ちょっと急がないといけないらしいんだよね。あ、日本の方での対処は裏天皇家の皆さんが対処して浄化してくれるらしい。そこで一つの問題が。」


 俺は魔開工房の管理責任者である忠太郎を見た。


 「結界の魔道具各種、それと浄化の魔道具。あと、緊急に駆けつけるための転移の魔道具の開発をお願いされたんだ。忠太郎。何とかできるかな。」


 忠太郎はいきなり話を振られて戸惑っていた。


 「は、はい。すでにいくつかは開発しています。けどこちらの世界の人に扱えるようにするには、魔素をため込んだ魔核が大量に必要になってきます。」


 なるほどな。じゃあ、早急にあちらの高集積魔核の採掘を開始しないとな。


 「わかった。それについては何とか手配してみるよ。魔核さえあれば、いつでも魔道具が作れる状態にまでもっていってくれ。それと、ドットの街で子供が乗ってたあのホバーボード。もう少し早く移動できて安全なように改造してみてくれないか。ひょっとしたら転移の魔道具より、有効に使えるかもしれない。魔素の量が節約できると思うんだ。もう少し高空を飛べるようにすれば、地上の渋滞も気にしないで済むからね。一人の結界師が装備できるような魔道具と武器、それに戦闘服の開発をお願いするね。魔核は3か月以内には手に入るようにするから。」


 「わかりました。」


 忠太郎はこぶしを握って、やる気に満ち溢れていた。

 うん。お前たちの作ったものでこの世界を守るんだからね。頑張って。


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