13 引っ越し…って
「じゃあ、さっそく俺は、『あやかし眼鏡』の開発に取り掛かる。みんなはそれぞれ、今の生活をきれいに清算してきてくれ。あ、引越す時は、荷物をこれに入れれば簡単に収納できる。決して犯罪には使わないように。」
俺は忠太郎が開発した収納リングを4つ、それぞれに渡した。
「これに魔力を少し流すと、起動して使えるようになるはずだから。…魔力の流し方だけでも教えておくか。」
俺はそういってそれぞれの両手を持って、魔力をそっと流し込んでやった。
なんとなく4人とも流し方が分かったみたいで、すぐに収納リングをアクティべートできるようになっていた。
「これすごいな。」
「これが魔道具・・・」
「京さんから流れてきた魔力が…いい…。」
「こんなんあるんやね。これあったらほんまに盗み放題やわ。」
パシッ。
「だから、犯罪には使うなよ。」
まったく、瑞月ちゃんだけは面白がってるな。
…約一名、魔道具とは違うところで感動してたけど、今は無視しておこう。
「期限は特に決めないんで、早速準備に取り掛かってくれ。引き払ったら、とりあえずこのペントハウスに集合な。その前に俺に電話くれてもいい。親や兄弟にも引き払う理由を説明しなきゃいけないだろうから…。そうだな、俺の会社に移籍したことにすればいい。グローバルシナジーって会社だ。場所は三条の町屋にある。これが名刺だ。」
俺は4人に鴨川京介名義の名刺を渡した。
「代表取締役って…やっぱり、社長になってたんやな。」
「ああ、その会社で物資の調達を行っている。実質は輝乃の采配で動いてるけどな。あと、異界のことは絶対に話さないようにね。もし連れてけって言われても、その人の魔力保有量によっては無理だから、あまり話さないようにね。最も話したところで証明できないし、信じないだろうけどな。」
「いやいや、京さん。この腕輪見たら話の信憑性は増すで。」
「その収納リングを使ってるところは、絶対人に見られないようにね。場合によっては殺されてでも奪われるよ。これはそういう品もんなんや。これが流通しだすと『輸送革命』が巻き起こるからな。くれぐれも取扱は注意してな。誰かに預けたり、貸したりせんように。」
俺からそう言われて、4人は改めて収納リングを見た。
…うん、多分世界中の流通が変わるからな。
「さて、そしたら解散や。俺も家に戻って作業に入る。」
俺はそういって立ち上がった。
「え?京さんの家って、ここやないんかいな?まだ前の家が残っとるの?」
「いや、あのマンションは引き払った。今はもともとゴルフ場のクラブハウスだったところを改装して住んでる。ゴルフコースは畑に改装中だけどな。」
「え?クラブハウス?どんなとこか見てみたい!なあ、京ちゃん。連れてってぇな。」
だから、瑞月ちゃん。そんなに俺の腕をつかむんじゃない。
「わか・・・わかったから、そんなに腕にしがみつくな。当たってるやろ。」
「当ててんねん。」
パシッ。
「そういうことはしないように。そのたんびに、俺は冷や汗が出るんやから。」
「え?女嫌い?京ちゃんが?うそやろ。…ひょっとして男の方が…。」
パシッ。
「女好きじゃボケー。公言して恥ずかしいけど女好きじゃ。」
「それやったらええやんか。」
「ええことないんやって。ほら見ろ、皆さんを。」
…うん、さっきから周りの目が痛いんだよな。俺を見る目が。ちゃうねん。中年の男やったら、鼻の下ぐらいすぐ延びるねん。ちゃうねん…。
「じゃあ私たちもつれてってください。」
おっと、そう来たか。ここでまた揉めても、いつまでも決まらないだろうしな…。
俺は靴を取りに行かせて玄関からそのままクラブハウスのホールに転移した。
「うっ、これが転移か。」と、冒険者志望の中年男。
「一瞬なんですね。」と、千春ちゃん。
「ここが京さんが住んでる家か…」と、沙織ちゃん。またこの子だけ感動してるポイントが違うような。
「ええ所やね。うん、気に入ったわ。私ここに住む!京ちゃん、どっか空いてる部屋ない?そこをうちの部屋にするわ。」と、瑞月ちゃん。なんでこの子はいつも爆弾おとすかな…。ほらほら・・・。あ、これは…。
「「私も住みます!!」」
千春ちゃんと沙織ちゃんも大声で叫んだ。
「俺も住むよ。日本での居場所も必要なんだろ?だったらここに一緒に住ませてくれよ。京さん。」
まぁ、そうなんだけどな。引っ越し先の住所もいるか…。
「……わかった、じゃあこの家にみんなで住めばいい。最も、ここにはそんなにいないだろうけどな。部屋は結構たくさんあるはずだから、それぞれ見てきて決めればいい。俺は最上階に部屋があるからみんなは2階の部屋を使ってくれ。」
みんなは一目散で2階に上がっていった。
まあ、また賑やかになるのか…。
「これで嫁候補が3人増えましたな。嫁の教育はうちがしますよってに。」
輝乃がいきなり出てきた。
「いやいや。嫁候補じゃないって。仕事仲間の同居人ってところかな…。うん、まあ、深くは考えないでおこう。」
…そういえば、俺が25に成れること、まだみんなに話して無いな…。あ、弟たちにも、まだ話してなかったな…。まあ、そのうちばれるからいいか、今から説明しなくても。それにそんなことできるってわかったら真っ先に瑞月ちゃんは「うちも!」って言いそうだしな。
…うん、絶対言うな。この機能もあやかし眼鏡に組み込んでおく方がよさそうだな。う~ん、変化の魔法でも組み込むか。見た目だけ変わってれば問題ないだろう。俺のは違うけどな。俺のは万眼鏡で肉体改造を受けたからな。
俺はそんなことを考えながら、工房に足を向けた。
愛に頼んでみんなを最寄り駅まで送ってもらうことにした。
さて、あやかし眼鏡を作ろうか。
まず機能だよな。どんな機能がいるのか…。あ、それに眼鏡のデザインもそれぞれの好みを聞いときゃよかったな。メールでみんなに一斉配信して、気に入ったメガネを持って来てもらうことにした。レンズは度が入っていなくていいからフレームだけメガネ屋で買えばいいだろう。サングラスなんかもいいかもしれないけどな。
返信で女性2人組は明日の夕方にはこっちに越してくるらしい。瑞月ちゃんに至っては、今日の仕事終わりには、こっちに来るらしい。冒険者志望は1週間ほどかかるようだ。そりゃそうだろうな。会社の名義変更から預金通帳など、名義変更だけでも大量にあるしな。それに今までの得意先に挨拶にもいかなきゃいけないだろうし…。
お、弟からもメールが入ってるな。妹からも来てる。
二人とも、日に3時間ほど伏見稲荷の道場に通うことにしたようだ。
それぞれ時差があるから、時間帯は違うらしい。それに妹は午前中はパートに行ってるし、まだ1歳の娘もいる。子供4人姉妹だからな。負担掛けて申し訳ない。
あの二人にもあやかし眼鏡を作っておこう。フレームは…俺が作ろうか。
こっちにはできるだけ万眼鏡と同じ機能を持たせておいた方がいいよな…。でも通信機器と融合させると、第二の『愛』が生まれる可能性もあるしな…。




