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第94話 たとえ それでも 結局 挙句の果てに 俺が勝つ

今日のツェンタリアさん

「エアフォルク様とご主人様のお陰で森が平地となり、だいぶ戦いやすくなりました。これなら私の強みのみを相手にぶつけることができます!」


「むむっご主人様レーダーに反応あり! ここが力の出しどころですね!」

●依頼内容「2国の裏切り者を殺せ」

●依頼主「パラディノス国王ヴァリスハルト・フェイグファイア国王ノイ」

●報酬「300万W+200万W」


「おーやってるやってる……戦況は今のところツェンタリア有利か」


 壁の上に立った俺が向こう側を見下ろすと、今まさにツェンタリアが脇に空槍ルフトを構えてジーンバーンに突っ込むところだった。遮蔽物のない場所での戦闘で、ジーンバーンは本来の力が発揮できずにいるのとは対象的にツェンタリアは生き生きと走り回っている。


 ジーンバーンが「グッ!」という言葉とともに弾き飛ばされた。しかし俺の目はごまかせない。しっかりと後ろに飛んで空槍ルフトの勢いを殺しており、見た目ほどのダメージは無い。このあたりは狂っても元フェイグファイア機動部隊長である。


 そして経験の差以外に注意すべき点がもう一つ、それは両者のスタミナである。緩急をつけて襲いかかるツェンタリアと違ってジーンバーンの動きは気持ち悪いくらいに常に一定だ。こういう場合どちらのスタミナが早く減っていくかは、説明しなくても分かるだろう。


「どうした! 貴様の戦いへの愛はその程度か!?」


「はぁ……はぁ……ご冗談を、私のご主人様に対する愛は無限ですっ!」


「会話が成立してねぇ……いや、これはこれで成立してんのか?」


 壁の上で呆れているる俺には気付かず、両者は再び接近する。リーチの差を活かして突き出される空槍ルフト、しかし体力を消耗していたためかクロスさせた魔手鈎ヴィンデンで受け止められてしまった。そして次の瞬間、ジーンバーンが異常な行動に出た。


「愛しているというのなら受け止めてみせろ!」


「無茶苦茶言ってやがるな」


 ジーンバーンはそう叫んでクロスさせた魔手鈎ヴィンデンを開いた。ツェンタリアは弾かれそうになる空槍ルフトを強く握ってかろうじて離すことはなかったが、代償として大きな隙ができた。しかし、隙ができたのは両手を開ききったジーンバーンも同様である。ジャンケンで言えばアイコの状態だ。だがそこでジーンバーンが腹を前に突き出した。


「っやべぇ!?」


 俺はそれを見た瞬間、トップスピードにギアを入れた。ジーンバーンが次に何をするのかはわからない。だが嫌な予感がしたのだ。


 そして、前にも言ったが俺の嫌な予感はよく当たる。


「なっ!?」


「串刺しになるがいい!」


 驚愕するツェンタリア、俺もびっくりだ。まさかジーンバーンの腹が左右に開いて中から槍が出てくるなんて……しかし、俺は予想はできなかったが自分の予感を信じて動き出していた。


「……あっぶねぇな。隠し玉ならぬ隠し槍があるってなら早く言ってくれよ。俺とお前の仲だろ?」


 俺は槍がツェンタリアの体に到達する寸前で止めることができた。


「邪魔をするかジーガァ!」


「バカ言え。お前がジーンバーンだったら見守る気もあったが、ジーンバーンを模した機械だってんなら話は別だ」


 激高していたジーンバーンが俺の言葉を聞いてニタリと笑う。


「残念だが俺は俺だ! 二十四時間戦い続けるために俺は機械の体を手に入れたのだ!」


 俺はジーンバーンの『笑』撃の告白を聞いて苦笑する。


「社蓄かよ」


「戦いに関して容赦しないだけだ!」


「そりゃそうだ。お前が許容して赦すなんてガラかよ」


「常に本気で命を取り合う、それが美学だ」


「笑わせんな作りもん。テメェの玩具の命と俺の命の重さが同じでたまるか」


 そこまで言い切った俺は「てなわけで助太刀してもいいかぁ?」とツェンタリアに尋ねる。ツェンタリアは苦笑しながら頷いて空槍ルフトを構えた。


「先程死んだ私に拒否権はありません。よろしくお願い致します!」


「よし、そうと決まりゃ……さっさと終わらせて美味い酒でも飲むかね」


「ふざけろ! 貴様達が飲むのは酒ではなく毒液だ!」


 戦闘態勢をとったジーンバーンの体が筋肉で膨れ上がっていく。その変態していくさまを見ながらツェンタリアが俺に注意を促す。


「ご主人様、お気をつけください。ジーンバーンの武器は以前より強固になっております」


「万能炉テアトルだな。ついでに言うと服にも細い金属製の糸が縫い込まれていて防御力も上がってるぞ」


「よくご存知ですね」


「さっきあっち側でバンドゥンデンをぶん殴ってな。その時に気づいたんだよ」


「っとなると万能炉テアトルとズイデンの合せ技ですか……ますます一人では無理ですね」


 冷静なツェンタリアの分析に俺はハッハッハと笑う。


「本当に俺のパートナーがツェンタリアで良かったわ。これで『やっぱり一人で戦いたいです』とか言い出したらどうしようかと思ったぜ」


 褒められて上機嫌になったツェンタリアがエッヘンと大きな胸を張る。


「私が愛しているのは戦いではなくご主人様ですからね」


「っとそうこう言ってる内にあちらさんも準備が完了したみたいだな?」


『ビガアアアアアアック!』


 見るとジーンバーンが変態を終えていた。その姿は敵を殺すことのみに特化した黒い獣のようである。その以上に膨れ上がった殺気にツェンタリアがゴクリと喉を鳴らす。


「勝てます……よね?」


「ツェンタリアにいい事を教えてやるよ」


 俺は右手をスナップして死剣アーレを構えた。


「最後に勝つのは愛が大きい方さ」


■依頼内容「2国の裏切り者を殺せ」

■経過「独りよがりな愛と2人分の愛」

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