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第88話 いくら集めても雑魚は雑魚

今日のツェンタリアさん

「おや? ご主人様から手紙が、ラブレターでしょうか……え、今からフェイグファイアへ? これは霊峰ゾンネフラグでしょうか!?」


「王都についたらノイ様が演説してらっしゃいました。まさかトレイランツ様がお亡くなりになっていたなんて……あ、ご主人様、今から会議ですか?」

●依頼内容「裏切り者に死を」

●依頼主「フェイグファイア国王ノイ」

●報酬「200万W」


「まあこういう事だよな」


 俺とツェンタリアはデンケの森の中で敵の集団に囲まれていた。あのあと城にツェンタリアを呼び寄せて作戦会議をした結果、エアルレーザー・パラディノスと同盟を組んでジーンバーン達に対抗しようということになった。そのメッセンジャーが俺である。


「相手はよほどご主人様が邪魔なのでしょうね」


「勘弁して欲しいもんだぜ。綺麗なデンケの森が地獄絵図になってんじゃねぇか」


 俺はざっと100人はいる敵の集団を見たあと、深いため息をついた。


「ジーガー!」「魔手鈎ヴィンデンが疼く!」「今日こそがお前の最後だ!」「なぜなら!」「ここで死ね!」「あのトレイランツのように串刺しにしてくれる!」「美学だ!」


 そう、俺達の前にいる100人の敵はすべて元アップルグンド機動部隊隊長ジーンバーンなのだ。言葉通り全員が魔手鈎ヴィンデンを付けている。どこで調達したのやら……


「わかったわかった。お前らにチームワークがないってことはよーく分かった」


 爆笑している俺の横でツェンタリアが首を傾げる。


「ベアンヅでしょうか?」


「いや違うな。ベアンヅは俺がふざけて作った術だが難易度はバカ高い。そのまんまバカのコイツラに使いこなせる代物じゃねぇよ」


『ふざけるなよジーガァー!』


「……こういう時は揃うんだな」


 まあどういう方法で増えたかは知らないが、分身全員が同じ考えをしてくれた方が俺としてはありがたい。殺しやすいからな。俺は右手をスナップして錆びた剣を取り出しながら挑発的な笑みを浮かべる。


「ガーガーうるせえアヒル共だな。さっさと来いよ。残らずペキンダックにして不法投棄してやるぜ」


『っ!?』


 この一言で戦闘は始まった。


 とりあえず先ほど「あのトレイランツのように串刺しにしてくれる!」と言っていたジーンバーンは真っ先に殺した。


◆◆◆◆◆◆


「危ねぇなボケ」


「グゥアッ!?」


「あ、ありがとうございますご主人様」


 俺はツェンタリアの後ろに音もなく忍び寄っていたジーンバーンを空の彼方へ蹴り飛ばす。お礼を言うツェンタリアに対して手をヒラヒラさせて答えながら俺は状況を分析する。今ので20体は倒しただろうか。


「残りは約80体……気が滅入るな」


「ええ、黒く素早く数も多く、ゴキブリを相手にしている感覚に近いですね」


「なるほど、確かにそうだな」


 ハッハッハと笑いながら今度は火傘ジルムを放つ俺を見て、ジーンバーン共が騒ぎ出す。


「ふざけるな!」「ジーガー!」「タイミングを合わせろと言っただろうが!」「この爪にかすれば貴様はお陀仏だ!」「俺が指揮をとる!」「誰が害虫だ!」「美学だ!」


「……チッ」


 無言で舌打ちをした俺は先ほどから『美学だ!』としか言っていないジーンバーンを蹴り飛ばし、振り向きざまに『ふざけるな!』と言ったジーンバーンを宝帯ファイデンでくるんで窒息させた。ジーンバーンたちが黙ったのを確認したあと、武器を死剣アーレに持ち替える。


「これ以上デンケの森で暴れたらツェンタリアの友人が五月蝿いんでな、さっさと終わらさせてもらうぜ?」


 そう言って死剣アーレを構えた。ジーンバーンの1人が笑う。


「その友達とやらはコイツか?」


 そう言って木の影から引っ張りだしたのは猿ぐつわをされた森の守り主の少女ルールフだ。


「ルールフちゃん!?」


 取り乱すツェンタリアの横で俺はケラケラと笑う。


「おお、そいつだそいつ。『それじゃあ行くぞ』」


 俺の言葉から迷いのない殺意を感じ取ったジーンバーン達が慌てる。


「ば、馬鹿な!?」「構えを解けジーガー!」「人質がいるんだぞ!?」


 ジーンバーン達の言葉を遮るかのように俺は死剣アーレを振り下ろした。


「10年間戦ってきて人質を取られたのは今日で27戦目、さてここで問題だ『幾度と無く人質を取られてきたにもかかわらず、俺は人質を取られた時の対処法を編み出していない……○か✕か?』答えは1秒後」


 1秒後、無斬によって正確に縦に割られたジーンバーン達の悲鳴がデンケの森に響き渡った。


◆◆◆◆◆◆


「ルールフちゃん大丈夫でしたか!?」


「姉ちゃん! 大丈夫だ! この通りピンピンしてるぞ!」


 ひしと抱き合い互いの無事を喜んでいるツェンタリアとルールフを横に、俺はジーンバーン達の死体を調べはじめた。打撃、斬撃、焼き、窒息と色々な方法で倒したのには理由がある。ジーンバーン達の正体を確かめるためた。


「……やっぱりか」


「ご主人様どうかしましたか……こ、これは!?」


 俺の側によってきたツェンタリアが言葉を詰まらせる。それはそうだろう。ジーンバーン達の心臓は黒ずみ、胃は縮小しきってしまっている。俺とツェンタリアはこういう死体を幾度と無く見たことがある。


「ああ、予想通り、これはジーンバーンをコピーした亡者だ」


「っということはバンドゥンデンも敵の陣営にいるってことですか!?」


 ツェンタリアの言葉に俺は頷く。


「まあそうなるな。そしてそれを援助、場合によっては糸を引いているのは十中八九クオーレだ」


「……なるほど、魔手鈎ヴィンデンですね?」


 ツェンタリアは俺の考えを即座に読み取ったようだ。


「そのとおり、運用には国家レベルのバックアップが必要な万能炉テアトルを扱えて、魔手鈎ヴィンデンの仕組みを把握しているのはこの世界にはクオーレしかいないからな」


 シッグ爺さんも金持ちなのだが、魔手鈎ヴィンデンについてはクオーレの方が詳しい。なにしろ俺から買って実物を持ってた時期があったからな。


 俺は「さてと」と言って立ち上がった。もしかしたら本物が混じっているかもと思っていたが、亡者でいくらでも分身が作れるのならジーンバーンの本物がこんなタイミングで出てくるはずが無い。


「こりゃさっさとフェイグファイアとエアルレーザーとパラディノスの同盟を組ませる必要があるな」


■依頼内容「裏切り者に死を」

■結果「手を下した奴は殺した」

■報酬「200万W」

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