第84話 休みだけど休んではいない
今日のツェンタリアさん
「うふふふふふ寝ているご主人様KAWAII!」
「……ふぅ」
●休業中
「ご、ご主人様早すぎます」
「おいおいツェンタリア、色々と誤解を招く発言をすんなよ……あれ?」
俺が苦笑しながら振り返ると坂のずっと下にツェンタリアの姿を発見した。どうやら道を急ぎすぎていたらしい。仕方がないので立ち止まって空を見上げる。蒼く住んだ空だ。説明しておくとここは霊峰ゾンネ、フェイグファイアという国を象徴するような大きく険しい山である。
「いやースマンスマン」
追いついてきたツェンタリアに俺は頭を掻きながら謝った。ツェンタリアが息を整えた後、気合を入れるかのように背筋を伸ばす。
「いえ、私の方こそ、この程度の移動でヘバッてしまって申し訳ございません。それにしても午前中に世界図書館ヴェンタルブーボで調べ物をしていたかと思えば、その後は立て続けにアップルグンドのヴルカン鉱山、エアルレーザー首都、そしてフェイグファイアの霊峰ゾンネと走り回りましたが、そろそろ理由を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「あ、そうか。そういえばまだ言ってなかったな」
俺はツェンタリアと並んで歩き、五合目の分かれ道を曲がった。それを見てツェンタリアが首を傾げる。
「おや、そちらはザンゲリウム雪原の方角ですよ?」
「ああ、こっちで合ってる。ところでツェンタリア、俺達が今まで行った場所と今から行く場所に共通点があることに気付いてるか?」
俺の質問にツェンタリアが間髪入れずにポンと手を叩く。
「ご主人様と私が愛しあった場所ですね」
「ドヤ顔で自分に都合のいい過去捏造してんじゃねぇよ」
ツェンタリアが鳴らない口笛を吹きながら金髪をクルクルと弄る。これはつまり全然わからないということなのだろう。俺はため息をついたあとツェンタリアに『共通点』とやらを説明をした。
「いいか、まず東のアップルグンドのヴルカン鉱山ではオルデンがインストールされたゴレームと戦った。西のエアルレーザーの首都ではカーカラックを大量に倒した」
ツェンタリアはたまにアホな事は言うが基本的には賢い。ここまで聞いて俺が次に言うことは理解できたようだ。
「そして南のフェイグファイアの霊峰ゾンネではフリーレンを倒したというわけですね?」
ツェンタリアの百点満点の解答に俺は満足気に頷いた。
◆◆◆◆◆◆
「その3箇所ご主人様が敵を倒していることはわかりました。それで、行く先々で地面を調べているのはどういった理由からなのでしょうか?」
俺はザンゲリウム雪原にしゃがみこんで地面に手を当てて集中している。
「魔力の残滓を調べているのさ」
「……ご主人様は3つの事件は全て同一人物が仕組んだ犯行だと睨んでいるわけですね?」
「さすがツェンタリア、理解が早くて助かるぜ」
集中を解いて立ち上がった俺はツェンタリアに笑いかける。するとツェンタリアも「フフッ」と笑った。
「あそこまでヒントをいただいたら解りますよ。ですがヴルカン鉱山に設置されていたゴーレムと霊峰ゾンネに移動させられていたフリーレンはともかく、エアルレーザーの首都を襲ったカーカラックは少し毛色が違うのではないでしょうか?」
俺は「へぇ」と感心した。いい所に気付くもんだ。
「そのとおり、カーカラックはパラディノスの持ち物で『あの』ヴァリスハルトが管理しているため『暴走もヴァリスハルトの意思で起こされているものだ』と思っていた」
「ま、まさか、違うのですか?」
目を丸くしているツェンタリアに俺は神妙な顔で頷いた。
「……全部が全部とは言わないが少なくともエアルレーザーの王都を襲ったカーカラックは何者かの意志だと思うぜ」
俺は今まで地面に触れていた手をじっと見つめる。間違いない。先ほどエアルレーザーの王都に僅かに残っていた魔力と同じだ。
◆◆◆◆◆◆
「ですがよくお気づきになられましたね」
「個々の案件については前々から引っかかっていたんだが『とある中心点』が出現することによって全てが繋がったんだよ」
「中心点……ですか?」
「いいか、この地図を見てくれ」
下山の最中に俺は地図を広げて3箇所にポンポンポンと点を突ける。その場所はヴルカン鉱山、エアルレーザー王都、そして霊峰ゾンネだ。その位置を見たツェンタリアがゴクリと唾を飲み込む。
「綺麗に逆さ二等辺三角形になっていますね」
ツェンタリアの言うとおり東のヴルカン鉱山と西のエアルレーザー王都は大陸を綺麗に二分しており、南の霊峰ゾンネはその丁度真中からまっすぐ下に線を引いた場所にあった。
「だがそれだけじゃない」
「え?」
「この3点から予測される4点目の場所を推測するとココになる」
俺がトントンと北のパラディノスの領内を指差す。その場所を見てツェンタリアが口を開く。
「これは……ベルテンリヒトがあった場所ですね?」
「あぁ、新興国だったアップルグンドを除く3国全ての主要な場所にこの点がつくんだ。そしてさっき言ってた中心点は……ここだな」
「ええっと……」
俺は北のベルテンリヒトと南の霊峰ゾンネを結び、できた十字の真ん中をトントンと叩いた。しかし、今までとは違いツェンタリアの反応が薄い。必死にその場所にある建物などを思い出しているのだろうが、今回重要なのは地上ではない。地下だ。
俺は地図にサラサラと文字を書き込んでいく。
「ここにあるのはベアタイル……かつてこの世界を支配していたバンデルテーアの首都だ」
俺の言葉と同時に遠くで爆発音が鳴り響いた。その方角を確認したツェンタリアの頬を汗が一筋滑り落ちていった。
「今のはまさか!?」
「パラディノスの方角、もっと言えば北の点の場所。前にベルテンリヒトがあった場所だな」
俺とツェンタリアは駈け出した。
■休業から復帰
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