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第79話 代弁者と語る奴にろくな奴はいない

今日のツェンタリアさん

「そうですね、この10年間の密度で言えばご主人様と私が負けるわけありませんよね!」


「神に等しい竜……私も嫌々やらされていたとは言え奉られていた身です。負けませんよ」

●依頼内容「アップルグンド国王シュタルゼを殺せ」

●依頼主「パラディノス国王ヴァリスハルト・エアルレーザー国王エアフォルク・フェイグファイア国王ノイ」

●報酬「3000万W」


 小島の前での戦いは続いている。


「ハァアアアッ!」


 ツェンタリアの気合とともに放たれた炎は大量の水分を含む分厚いアロエに防がれた。


 俺はそれを後ろから「がんばれー」と眺めている。なぜそんな事をしているのかと言えば、海竜王ボリテンヌンツォを倒した後、ツェンタリアが「一対一で樹師ナトゥーアと戦いたい」と言ってきたためである。俺としては特に反対する理由も無いので承諾し、危なくなったら口、手の順で出すという取り決めを行った。


 そして、俺は早速口を出した。


「ツェンタリア、気付いているかぁ?」


「な、何でしょうか?」


「あたりにほんのりと甘い香りが漂ってるだろ?」


 俺の言葉を受けてツェンタリアは周囲の香りを確認する。


「本当ですね。なんだか気分が落ち着くような……」


「あんまり吸うなよそれ猛毒だから」


 ツェンタリアは咳込んだ後、すぐさま胸の谷間からハンカチを取り出して口に当てた。そして無言のままサムズ・アップ。たぶんあのポーズは喋る代わりに「ご主人様、ありがとうございます!」という気持ちでもあらわしているのだろう。俺は気にするなと手を降った。


「それにしても思った以上に強いな……いや、強くさせられたのか?」


 俺も樹師ナトゥーアと戦うのは初めてだ。一応世界図書館ヴェンタルブーボで樹師ナトゥーアに関するを文献を読んだのだが、今までの戦いを見るに書いてあることはあてにはならないようである。もしも樹師ナトゥーアが文献に書いてあったとおりの実力ならば、先ほどのツェンタリアの炎で決着していたはずだ。


「海竜王ボリテンヌンツォがいなくなったから、樹師ナトゥーアに強化を集中したか。まったくどこが一対一なんだかねぇ?」


 俺は樹師ナトゥーアの後ろにある小島に問いかけるように呟いた。


◆◆◆◆◆◆


「今度から気をつけろよ。『樹師』とか言ってるがコイツ海藻も操るからな?」


「は、はい」


 俺は今度は手を出した。ツェンタリアの背後からワカメがドリルのように回転しながら襲ってきたのだ。完全に意識の外からの攻撃だったので避けられないと判断した俺はすぐさま動いてワカメを細切れにしたというわけだ。


「シュウッ!」


 樹師ナトゥーアは俺がツェンタリアを助けたことにご立腹だ。


「……何キレてんだテメェ?」


 俺は樹師ナトゥーアを睨みつける。


「何を勘違いしているのかは知らねぇが、俺がツェンタリアを1人で戦わせているのはこちらの事情でお前と約束したわけじゃねぇ。むしろ今まで自分が生き延びてることに感謝しやがれ唐変木」


「シュウウウウウウウッ!!!!」


 今の一言で俺を標的に加えたのか樹師ナトゥーアがイバラを伸ばしてくる。


「やれやれ、文献じゃ『樹師ナトゥーアは植物たちの穏やかな代弁者で非常に穏健な性格』って書いてあったはずなんだがな……どうやら『竜の中では』という枕詞が付くらしい」


 俺は火傘ジルムをかざして笑う。だがその横でツェンタリアが「無茶です!」と叫んだ。まあ気持ちはわからんでもない。なにしろ火傘ジルムの出力はツェンタリアの白炎に大分劣っている。いくらアロエよりは細いイバラでも到底勝てるシロモノではない……っと判断するのが戦の玄人だ。


「残念だが俺は火力で勝負するつもりなんてサラサラねぇよ」


 そう言って俺は火傘ジルムから炎を一筋発射した。ただし、いつもと違うのはその炎を俺が操るという点だ。それによって炎は自由自在に曲がってイバラを避けて進んでいく。


「さ、流石ですご主人様……」


「とは言えこれだけじゃ燃やしきれないんだよな。あーあ、樹師ナトゥーアが魔王シュタルゼの力を借りてるように、俺にも誰か力を貸してくれねぇかなー」


 横で呆然としていたツェンタリアに俺は下手くそなウィンクをしてみせる。……ツェンタリアが笑顔で頷いた。どうやら俺の意図が正しく伝わったらしい。俺の傍に寄り添い火傘ジルムに手を重ねる。


「到達したら教えて下さい。一気に白炎を送り込んで爆発させます」


「頼りにしてるぜぇ」


「ところでどうやってイバラの奥の見えないところで操作をしているのですか?」


「そりゃあもう見学してるフリしながらありとあらゆる枝や葉っぱにベイルムをかけたからな。樹師ナトゥーアの植物の中はもう自分の家のようなもんだ」


 俺の解答を聞いてツェンタリアが苦笑を浮かべた。それとほぼ同タイミングで炎が樹師ナトゥーアの体に到達した。


「行きます!」


 ツェンタリアが火傘ジルムから伸びた炎の筋に白炎を送り込む。すると樹師ナトゥーアの前で炎が一気に白く膨れ上がり大爆発を起こす。勝負は一瞬で決まった。


 空に登っていく煙を見上げながら俺は「あの世で神様と仲良く喧嘩でもしろよ」と呟く。 こうして神に等しい三匹の竜は全て地上から姿を消し、俺達の前には魔王のいる小島が残った。


■依頼内容「アップルグンド国王シュタルゼを殺せ」

■経過「ついに魔王シュタルゼの待つ小島に上陸することができた」

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