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第77話 待たず海路を進みゆく

今日のツェンタリアさん

「帰ってきてからご主人様の様子がおかしいですね……もしかして『ツェンタリアに結婚指輪を買おうと思っているのだけれどサイズがわからないどうしよう!』という悩みが!? あ、笑顔になりました。やっぱりご主人様はそっちの方がかっこいいですよ」


「ご主人様は一日経って吹っ切れたようです。元気に「依頼をこなすぞー!」とおっしゃっています」

●依頼内容「アップルグンド国王シュタルゼを殺せ」

●依頼主「パラディノス国王ヴァリスハルト・エアルレーザー国王エアフォルク・フェイグファイア国王ノイ」

●報酬「3000万W」


 俺とツェンタリアは道を歩いていた。その道は海に続いている。ツェンタリアには依頼の内容をまだ話していない。


「それでご主人様、今日はどのような依頼なのですか?」


「なぁに他愛の無い依頼さ、魔王シュタルゼってのがいるだろ?」


「はい、アップルグンドの国王にして以前ご主人様がおっしゃっていた格付けでは2位の実力者ですよね?」


「そいつを殺す」


「へ?」


 鳩が豆鉄砲を食らったような、という形容詞があるがまさにそれを体現したかのような表情をするツェンタリア。それを見て俺は内心で苦笑しつつ念を押すようにもう一言。


「魔王シュタルゼを殺す」


「……ま、マジですか?」


「マジです」


◆◆◆◆◆◆


「三国の王様達が3000万Wという大金を積んだのも驚きですが、内容も驚きですね」


「三国の軍隊を動かすとどの国が激戦区を担当するかで揉めるからな……前の魔王城襲撃の時と何も変わっちゃいねぇのさ」


 俺とツェンタリアは2人で浜辺に立っている。ザザーンザザーンと寄せては返す波を見て俺は少しカッコつけながら答えた。


「つまり、以前のご主人様は全くのタダ働きであったと言うわけですね」


「ハッハッハ、言うねぇ! 確かにそうだ!」


 笑いながら俺は荷物の中から士突ドンナーと火傘ジルムを取り出した。


「だから俺は傭兵になったんだよ」


 広大な海には見渡すかぎりの敵敵敵敵。魔王シュタルゼが復活させた海竜王と海戦部隊ヴェレイグが待ち構えている。数はざっと数えて666体、対してこちらは俺と氷杖リエレンを構えるツェンタリアの2人である……まったく……まったくもって十分すぎる。


「どけよ、お前らには1Wの価値もねぇ」


 俺は開戦の合図とばかりに火傘ジルムを最大出力でぶっ放した。


「私は常にご主人様に寄り添うのみです」


 続いてツェンタリアも氷杖リエレンを最大出力で放った。


 世界一の職人シッグ爺さんの作った武器の共演だ。海面にいた敵は例外なく焼きつくされ、海中にいた敵は例外なく凍った。


「……これで敵の数は333体、小悪魔くらいにはなったかな?」


 敵の陣形が乱れたことを確認して俺はいくつもの水柱を作り出した。それに乗り移って海へと打って出る。手に握られているのは士突ドンナーだ。


「小悪魔……いい響きですね。私も小悪魔系女子になってご主人様を虜にしたいです」


 一方でツェンタリアは海面を凍らせて走っている。


「何かあっちの方がかっこ良くないか?」


 水柱をピョンピョン跳ねている俺と比較して、氷面にヒビを入れながら走るツェンタリアの方が強キャラ感が溢れている気がしてならない。


「ま、まあその分戦果を上げればいいか」


 気を取り直した俺はおもいっきり跳躍する。


「むこうの世界じゃ違法だが、こっちの世界じゃ法はねぇ。悪いが使わせてもらうぜ!」


 俺は士突ドンナーに魔力を込めて思いっきり海中に向けて投げ込んだ。その瞬間、士突ドンナーは雷を遥かに超える電力を発生させ、四方八方へと拡散する。数秒待つと、敵が水面にプカーと浮いてきた。


「ご、ご主人様!? 私も感電」


「氷は電気ほとんど通さねぇよ」


 ツェンタリアに科学を教えながら俺は水柱に着地する。すると着地した隙を狙って大きなイカやシャチが襲ってきた。狙いは良い……だが遅い。俺にとっては伸びてくる触手も迫ってくる鋭い歯もスローモーションに等しい速度だ。俺は襲ってきた敵を数えていく。


「10体か……ガタイの良いのが残ったな」


 俺に迫りつつあるのは海戦部隊ヴェレイグ隊長と部下の精鋭達である。俺が「さぁて、何で倒そうか……」と考えていると「キュオオオオオン!」という甲高い咆哮が海にこだまする。声のした方を見るとツェンタリアが海竜王に空槍ルフトを構えていた。


「チッ、相変わらず不気味な声だぜ……可愛らしくニャーニャーとでも鳴けばいいものを……」


 俺は舌打ちをしながら水柱を飛び移って海戦部隊ヴェレイグの攻撃を避ける。そして火傘ジルムを背負って今度は腹から新たな武器を取り出す……こらツェンタリア、人のお腹を見ようとヨソ見するんじゃない。


「一体一体じっくり相手をしてやりたかったんだが予定変更だ」


 そう言って俺は武器を1振りした。


「これでしまいだ……悪いが一気に潰滅してくれ!」


 一拍遅れて強風が巻き起こり海戦部隊ヴェレイグが吹き飛んだ。


◆◆◆◆◆◆


「さて、ツェンタリアの方はっと……あれ?」


 戦部隊ヴェレイグの全滅を確認してツェンタリアの方に目を向ける。するとそこにはツェンタリアがぽつねんと立っているだけだった


「海竜王はどうしたんだ?」


「ええっと、ご主人様が王扇ブァンを使ったのを見て退却していきました」


「へぇ……」


 意外な展開である。竜はプライドが高く逃げるなんてことはしないのだが……どうやらそこまでしても俺に勝ちたいらしい。そして、撤退をしたということは勝機があると判断しての事だ。つまり、まだまだ奥の手があるらしい。


「それじゃあ虎穴、いや竜穴に入るとするかね」


 俺とツェンタリアは魔王シュタルゼがいるという小島に向かって進軍を再開した。


■依頼内容「アップルグンド国王シュタルゼを殺せ」

■経過「竜の待つ場所へ」

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