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第75話 捨てられる人物は強い

今日のツェンタリアさん

「良かったです。さっちゃんは私の初めての友達なので」


「え、さっちゃんと一緒にいろと?……分かりました。気丈に振る舞ってはいますがきっとさっちゃんも怖かったでしょうしね。ご主人様は? はい、原因を探るのですね」

●依頼内容「カーカラックの発生源を探せ」

●依頼主「俺」

●報酬「……嫌な予感はよく当たるんだよなぁ」


「それではご主人様、お気をつけて」


「おう、ツェンタリアもしっかりな」


 俺はツェンタリアと分かれてアップルグンドの王都を歩きはじめた。建物に損傷は少ないが道には露店の商品がバラ撒かれている。つまり、それだけ急にカーカラックが現れたということなのだろう。


「さて、それでカーカラック大量出現マジックの種はどこにあるのかねぇ?」


 俺は辺りを見渡しながら歩く。さっちゃんからのコウモリ便には『急に湧き出た』と書かれていた。降ってきたでも襲ってきたでもなく『湧き出た』である。しかし、手がかりもなく歩いたところで何かが見えてくるわけでもない。俺が「参ったな」と頭を掻いていると、気になる話が耳に入ってきた。


『おいおい、ここもダ』


『マジかよ……うわ本当だこりゃひでェ』


『全く何で王都中のマンホールが壊されてるんだカ』


『さぁな、ま、俺達としては仕事をこなすのみダ』


 俺が振り向くと、そこでは工作部隊マヴルフがマンホールの交換をしていた。なにか予感がした俺は「……それ本当か?」とマヴルフの言語で尋ねる。するとマヴルフ達はコチラを見て少し沈黙、やがて俺が誰だかわかると目を丸くした。


『うわ、勇者ジーガーダ!?』


『すっげー本物!?』


「そりゃ本物に決まってんだろ。俺みたいなイケメンが世界に2人もいてたまるか」


『そのナルシーな物言い……間違いないネ!』


『そうだネ!』


「それでさっきの話なんだが……王都中のマンホールが壊されていたってのは本当なのか?」


 マヴルフ達はお手上げのポーズをとる。


『そうさ、ホント嫌になっちゃうヨ』


『特に入口付近なんて酷かったよナ』


『うんうん、全部壊されてるんだもんナ』


「そうか……なるほど……そういうことだったのか! ありがとさん!」


 俺は話を頷きながら聞いた後、マヴルフ達にお礼を言って駆けだした。突然『湧き出た』カーカラック、壊された王都中のマンホール、ここまで解れば答えは簡単だ。


◆◆◆◆◆◆


「よし、到着。それじゃあちょっと疲れるがやってみますかね……」


 俺は王都の入り口、カーカラック達が大量に発生していた場所に到着した。マヴルフ達が修理したのかマンホールの蓋は綺麗に元通りになっている。俺はその付近を集中して凝視する。すると……マンホールの中身が見えてきた。普段は疲れるからあまりやらない透視だ。


「下に垂直に伸びて……大きな流れに合流して……あとは川まで……ん?」


 俺はマンホールから繋がる水道を辿っていく中でおかしな場所を見つけた。川に合流する手前の場所に不自然な横穴が開いていたのだ。俺は指をパチンと鳴らしながら「……ビンゴ!」と呟いた。これがカーカラックの侵入経路とみて間違いはないだろう。


「さて、問題はコレがどこに繋がっているかだが?」


 俺は、足にグッと力を込めて思いっきり跳躍した。前に霊峰ゾンネの頂上からザンゲリウム雪原まで飛んだことはあるが、今回はそれ以上に高く飛んでいる。


「ここまで来りゃかなりの距離を見渡せるな」


 アップルグンド特有の暗い色をした雲の真下まで跳躍した俺は、風を操りその場に留まる。そしてそこから先ほどと同じように世界の地面を透視した。


「……………………」


 しばらく透視をした後、俺は着地した。そしてその体勢のまま、額の冷や汗を拭った。


「…………マジかよ」


 長い沈黙の後、俺はなんとか言葉を絞り出す。なぜなら先ほど俺の眼前に広がっていた景色は『異常』という形容詞しか思いつかないような代物だったためである。


「あの野郎……世界中にトンネル掘ってやがった」


 そう、少なくとも先ほど俺が見た範囲全てにトンネルが張り巡らされていたのである。その中にはアップルグンドの王都に繋がるトンネルも複数あった。この様子だとフェイグファイア、エアルレーザーにも同様にトンネルが続いていると考えたほうが良いだろう。つまり、ヴァリスハルトはいつでも相手国の王都に兵を出現させられるようになっていたのである。


 しかし、驚くべきはそれだけではない……


「ヴァリスハルトの奴……そこまでしてこの戦争に勝ちたいのかよ」


 俺はそう言いながらマンホールの蓋を外して中に入り込んだ。


◆◆◆◆◆◆


 数十分後、俺は松明を頼りに暗闇の中を歩いていた。ここは先ほどの透視で見つけた横穴に入ってかなり奥まで進んだところである。迷路のようなトンネルを先ほど見た透視の映像を頼りに右折左折直進して進んで来ている。


「もうそろそろ着く頃なんだが……」


 そう呟いた俺の視線の先に灯りが見えた。


「……」


 俺が無言で進んでいくと「誰だ!?」と光の方から声がかかった。


「誰だとはご挨拶だな?」


 俺が目を細めながら相手を見返す。すると相手……俺の正体に気づいた天使兵が道を開ける。


「貴様、ジーガーか。よし、通れ。ヴァリスハルト様がお待ちだ」


 ……どうやらヴァリスハルトは俺が来ることを読んでいたらしい。全く大した信頼だぜ。マヴルフの会話が聞こえてこなかったら迷宮入り確実だったってのによ。だがそんなことを言うのも癪なので、俺は「そりゃどうも」と言いながら天使兵の横を通り抜けた。


 少し歩くと開けた場所に出た。いや、開けたというレベルではない。高さは400メートル、広さは4キロ平方はあるだろう大空間だ。そこに広がる光景を見て俺は苦笑した。


「どおりで簡単にベルテンリヒトを使い捨てるはずだぜ……こんなもんを地下に作ってやがったんだからな」


 そこにはベルテンリヒトと全く同じ……いやそれ以上の要砦都市が形成されていた。


■依頼内容「カーカラックの発生源を探せ」

■経過「場所は突き止めたが……ちょっと信じられないものを見つけちまったな」

ブックマークありがとうございます。与一の弓になりま……励みになります。


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