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第73話 大 勝 利

今日のツェンタリアさん

「ご主人様一人に激戦区ばかり押し付けておいて給料も最低限しか出さずにしっかり口、しかも陰口を叩くなど言語道断です。きっとそのような人物の剣は性格のようにひん曲がっていて自分の身すら守れないのでしょう。まだまだ言い足りないのですがご主人様は『整理がついたことだ』とおっしゃっているのでこれで最後にします。 バーカ!」


「本当に私にカイザール様のとどめを刺させていただけるのでしょうか。もちろんそれが自分の力だと過信することはございませんが、ちょっとドキドキしますね」

●依頼内容①「アップルグンド軍を止めてください!」

●依頼主「エアルレーザー国王エアフォルク」

●報酬「200万W」

●依頼内容②「死霊騎士団ベンジョブと空帝カイザールを倒してください!」

●依頼主「エアルレーザー国王エアフォルク」

●報酬「500万W」


「ツェンタリア、さっき攻撃した感じ、どうだった?」


 俺の唐突な質問にツェンタリアは少し考えたあとで口を開く。


「……読まれていましたね」


「やっぱり……ってことは」


 俺はやおら死剣アーレを1振りする。


「ッッッ!?」


 カイザールは倒れこむように体を傾ける。すると今までカイザールの首があった箇所に一瞬遅れて黒い裂け目が現れる。


「……避けられたか」


 特段の感情もなく俺はつぶやく。まあここまでは予想していたことだ。先ほどのツェンタリアと同じく死角からの一撃、ただしスピードは俺の方がかなり早い。それすらカイザールは避けてみせた。


「まだですっ!」


 体を傾けているカイザールに向かって氷杖リエレンを構えるツェンタリア。次の瞬間、カイザールに向かって氷の波が押し寄せた。


「ゥッゥッゥ」


 しかしカイザールは飛び上がってこれも回避。ついでとばかりに翼を狙って繰り出した俺の追撃も避けた。ふーむ、どうやらカイザールはベンジョブの骨を纏ったことによって視野が広がり死角が無くなったみたいだな。


「スゥ……ッ!」


 カイザールは空中に浮かんだまま『我には効かんぞ小動物』とでも言いたげにニヤリと笑ったあと、大きく息を吸い込んだ。


「やべぇっ!」


 それを見て俺は珍しく戦闘で焦った。黒炎をジュラム平原全体にばらまく気だあの野郎! 俺自身はくらっても何とも無いのだが他の人間ではエアフォルクでも耐え切れる保証はない。俺はカイザールの口めがけて跳躍する。


「ッゥゥゥッ!!!!」


「敵だけじゃなくて味方も燃やす気か馬鹿野郎!」


 俺はカイザールの口の前で死剣アーレを回転させた。そして口から出てきた黒炎を次々と切り払っていく。


「す、凄すぎる……」


 俺の後ろで戦いの手を止め状況を見呆けているエアフォルクの一言が心地よい。ふっふっふそうだろうそうだろう。俺は得意気にカイザールの口先零距離で死剣アーレを回転させ続け、ついには出てきた黒炎を全て切り払った。


「ッッッ!!!???」


 カイザールにしてみたら悪い夢以外の何物でもないだろう。何しろ自分の最大火力の攻撃が草の1本すら燃やすことなく無効化されたのだ。その隙を逃さず俺は攻撃に移る。


「さぁて、次はこっちの番だ」


 俺は再び死剣アーレを振り下ろす。今までのようなただの攻撃ではない。シュタルゼを葬ったれっきとした技だ。


「技名は言わねぇ、てめぇで勝手に想像しやがれ!」


「ゥゥゥッ!」


 しかし、これもカイザールの巧みな動きで避けられた。でかい図体の割には的確かつ迅速に俺の死角に潜り込んできやがって……


「これも避けるか。俺の太刀筋に夢でうなされたのかしれねぇが、よく研究してやがるな」


「ゥッゥッゥ」


 俺とカイザールは互いの顔を見てニヤリと笑った。しかし、俺の次の一手でカイザールの表情が凍りつくことになる。


「おや、ご主人様、死剣アーレをしまってどうしたのですか?」


 左手をスナップした俺を見てツェンタリアが首を傾げている。


「いやなに、別に俺の武器は死剣アーレだけじゃねぇしな」


 俺は右手をスナップしながら答える。俺が出したのはトンカチだ。そしてツェンタリアの氷杖リエレンから氷を借りて大きなハンマーを作った。


「バンデルテーアの札付きゴーレムを倒した武器だ。おとなしくしてりゃ天国を見せてやるぜぇ?」


「ッ!?」


「ん、どうしたカイザール?」


 明らかに動揺し始めたカイザールを見て俺は「ははぁーん」と笑みを浮かべる。


「お前もしかして死角を消して俺の死剣アーレの太刀筋を十分に研究したが……それしかしてないな?」


「ッ!」


 カイザールはわかりやすくギクリとする。正直なところ竜族は根が素直なので表情が読みやすい。


「……よーしツェンタリアちょっとそこで力を貯めとけ」


「ッッッゥゥゥッゥゥゥガアアアアアア!?」


 俺が氷の槌を構えたのを見て、あまりの恐怖に阿呆のような声を上げながらカイザールが飛び立とうとする。


「残念、暴れたから地獄行きだな」


 だが、それを黙って見逃す俺ではない。『敵』は熱い内に『討つ』もんだ。一瞬で上をとって思い切りカイザールの頭を殴りつけた。


「ガアアァァァァァ!!!!!?」


 真っ逆さまに落ちていくカイザール、その下に待っているのは白炎と氷を空槍ルフトに巻きつけたツェンタリアだ。


「あとはお姫様の仰せのままに、ってやつだな」


「ッッゥゥゥグアアアアア!!!」


 しかしカイザールも流石に空の帝王と呼ばれるだけはある。落ちながらも体勢を立てなおしてツェンタリアに向かって黒炎を放った。


「……」


 ツェンタリアは避けない。静かに黒炎の先のカイザールを見据えている。


 ……これはまあツェンタリアが勝つだろう。カイザールの体力が落ちているのもそうだが、ツェンタリアのあの技はかなり厄介なものだ。強いのではなく厄介なのだ。なにしろ炎と氷と風の全てに一気に対応しなければ残ったものが通り抜けて……


「ゥゥガアァァァアアアアッ!!!!?」


 相手の身を引き裂き続け……


「ガッガッガアアアァァァ!」


「……うっせえんだよさっさとくたばりやがれボケェ!」


 俺はそのまま落下して氷と風に身を裂かれているカイザールにおもいっきり蹴りを食らわせた。ぐったりとするカイザール。俺は着地してジーパンのホコリを払ったあと口角を上げる。


「まったく静かに去ったベンジョブを見習えってんだ………………て、しまった! ツェンタリアにとどめを譲ること忘れてた!」


 恐る恐る振り返ると、呆然とこちらを見ているツェンタリアと目があった。


◆◆◆◆◆◆


「あのーツェンタリアさん?」


「なんでしょうか?」


「そろそろどこに連れて行かれるのか教えてほしいんだけども」


 エアフォルクから報酬を得た俺はツェンタリアの背に乗せられて走っていた。あのあと俺はツェンタリアに平謝りをして最終的には『なんでもお願いを1つだけ聞く』という約束で許してもらったのだ。


「……わかりましたお教えしましょう」


 ツェンタリアも随分と時間が経って怒りが薄れてきたのか、やっとこさ口を開いてくれた。


「いま私達が向かっているのはアップルグンドの首都です」


「なんでまた、エアルレーザー軍は撤退したんだぜ?」


「いえ、アップルグンドを攻めに行くのではございません。以前のエアルレーザーの王都と同じです」


 俺は少し考えこむ。ツェンタリアは『エアルレーザーの王都と同じ』と言った。最近エアルレーザーの王都で起きた出来事といえば……


「……まさか!?」


 今まで俺はツェンタリアが怒っているのかと思っていたがそれは勘違いだったようだ。


「はい、さっちゃんからの依頼です『アップルグンドの王都を守るのを手伝って』ください」


 ツェンタリアが思いつめた表情で頷いた。


■依頼内容①「アップルグンド軍を止めてください!」

■結果「エアフォルクが来るまでしっかりと止めておいた」

■報酬「200万W」

■依頼内容②「死霊騎士団ベンジョブと空帝カイザールを倒してください!」

■結果「全ての空を自由にした」

■報酬「500万W」

ブックマークありがとうございます。不死身になりま……励みになります。

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